勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

シューン・ブライドより先に

2009-04-20 | 映画のお喋り
まだ小さかった頃、ディズニーのシンデレラが怖かった。
日本のアニメに慣れ過ぎていたから、あの顔が意地悪オバさんにしか見えなかった。
お陰で私は、シンデレラ・コンプレックスを免れることに…。

その後もいつか王子様が現れるより、もっといいことがあると思う人間に育って行った。
誰かに縛られて生きるより、自分一人の方が気楽だと、ついつい思ってしまってきた。
ま、その話は置いておいて。

幸せな花嫁になれると言う「ジューン・ブライド」の語源は、ローマ神話から来ている。
ジュピターの正妻ジュノーは結婚・出産の神で、英語の6月の元になっているからだ。
その女神の名をもらった一人の少女。
彼女の魅力に、すっかりやられた。

JUNO/ジュノ
2007年 アメリカ
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン

ちょうど「奇跡のシンフォニー」のサントラを聞きまくっている時、またしても音楽が素敵な映画に出会ってしまった。
もうサントラを買う余裕はないので、しばらくお預けか…。

16歳で妊娠してしまったジュノ。
ドラッグストアの店員にからかわれ、言い返すあっけらかんとした態度に惚れる。
こんなテーマなのに重くならず、かと言って無責任でもないジュノは魅力的だが、さらに台詞が全部魅力的。

アメリカでは未成年が産んだ子供を養子に出すことは、かなり当たり前の選択らしい。
子供を養子に欲しい夫婦は行列を作って待っているし、この映画でももらう側の妻が、家中をきれいに掃除してジュノの訪れを待つシーンがある。
気に入ってもらいたい一心、子供が欲しい一心なのだ。
需要が多くて、供給がおっつかないってすごい。
(さすがに薬中や犯罪者の産んだ子供は貰いたくないから、普通の家の娘の子なら養子先は選び放題なんだろうな)

ジュノもいったんは中絶を考えるが、結局生んで養子に出す決断を下す。
その時の周りの反応もビックリ。
さすがに父親と、義理の母の理解ありすぎには?だが、学校だって退学になるでもないし、極力内緒で中絶オンリーの日本人にはある意味羨ましい。

赤ん坊の父親は同級生で、いかにも普通でまじめな男の子。
この子の反応は、そんなもんなんだろうなって感じ。
実感わかないから、君の好きにすればいいよ、なんて言ってしまう。

養子をもらう側の夫婦は、いかにもセレブだが、どこか危うい感じが付きまとう。
TVドラマシリーズ「エイリアス」のシーズン5で、夫ベン・アフレックの子を妊娠しながら、妊婦のスパイ役を演じていたジェニファー・ガーナーが、生真面目で面白みに欠ける妻を演じる。
逆に夫は、ロックバンドで売れる夢を諦めて、CMソングで稼いでいることに不満を待つ大人になりきれないガキ。
こんな夫婦がうまくいくわけないじゃん、と思っていたら案の定…。

ストーリーの進み具合から、想像できる結末がいくつかある。
ジュノが最後に自分で育てる決意をする自立した女への成長物語になる。
養子先の夫婦がうまくいかず、家族ぐるみの子育てをするファミリーものになる。
頼りない彼氏が奮起して、彼女の結論に異議を唱えるラブストーリーになる。

この予想が当たっていないところが、脚本の素晴らしさだ。

さらに、ジュノが選択した結果への伏線がちゃんとできてる。
赤ちゃんを渡す人への手紙。
自分の産んだ子供に対する責任を、感情でなく理性で考えた結果だ。

そして彼氏へのキャンディーの山。
さすがにアメリカの学校でも、ジュノは周りから冷たい視線を浴び続ける。
バカな男なら、彼女とは何の関係もないふりで知らん顔になるだろう。
だけど、彼の彼女に対する態度に変化がない。

変化がないと言うのはある意味凄いことだ。
16歳で、一度だけやっちゃった彼女から、子供出来たって言われたら、変わらないでいられる自信のある男ってどれほどいるだろう。
まず、逃げちゃうね、たぶん。

ジュノもブレーカーも、自分たちの若さを、そして何より無力であることを知っている。
だから大切な命を、ちゃんと面倒を見られる人に託すのだ。
そして二度と同じ過ちを繰り返さないことを自分たちの唯一の贖罪にする。

その決意がラストシーンに表れていた。
あのオールディーズみたいな、朴訥な、単調な、ロマンティックなデュエット。
16歳が本来経験すべき恋愛を、今から始めようとしている二人の歌だ。
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街中がシンフォニー

2009-04-17 | 映画のお喋り
映画の中で、えげつないホラーとミュージカルだけは好きになれない。
手術シーンで血が出るのは平気でも、むやみに人が殺されていくホラーはダメ。
シリアスシーンで突然歌い出すミュージカルはダメ。

だけど音楽が主役の映画は大好きだ。
面白くない映画でも、音楽がよかったら、それだけで合格になってしまう。
(原題「AUGUST RUSH」でも、ストーリーをちょっと読めば内容はわかるので、無理な邦題ってなんだろうね、まったく)
面白い映画で、音楽がよかったら、もちろん大絶賛だ。

奇跡のシンフォニー
2007年 アメリカ
監督:カーステン・シェリダン
出演:フレディ・ハイモア、ケリー・ラッセル、ジョナサン・リス・=マイヤーズ、ロビン・ウィリアムズ

好きな映画だ。
私の好きな映画には、もれなくロビン・ウィリアムズが出ている気がする。
彼の脚本選びの感性が私と似てるのだろうか。(エージェントかもしれないが)

「チャーリーとチョコレート工場」ではちっとも好きになれなかった(映画がダメ)フレディくん、今回は見事に可愛かった。
養護施設でいじめに遭っている時の、いじめっ子を見る目つきの鋭さにまずハッとさせられる。
気が強いのではなく、そこに彼の信念を感じるからだ。
この映画が信じることの奇跡を描いているのなら、フレディくんは冒頭の眼力だけで、テーマを表現してしまったことになる。

養護施設から、ストリート・ミュージシャン・キッズの巣窟へ。
その親方がウィザードことロビン・ウィリアムズ。
この辺は現代の「オリバー・ツィスト」か、と突っ込みたくなる。

ここで主人公エヴァン(芸名オーガスト・ラッシュ)は、初めて「楽器」に触れる。
音楽、にではない。
音楽は彼が生まれた時からそこにあった。
街の騒音の中にも音楽がある。
麦畑をそよぐ風の中にも音楽はある。
エヴァンには耳に入る音すべてが音楽なのだ。

彼が初めて触れる楽器はギブソンのギター。
真夜中に、ひとり、そっとギターに手を伸ばすエヴァン。
そして昼間街で聴いた音楽を表現し始める。
もう、このあたりが好きで堪らない。

ストーリーは11年前の両親の出会いと並行して進む。
チェロ奏者のライラ、ロックシンガーのルイス。
クラシックの中にロックが融合していくこのシーンも好きだ。

一夜にして恋に落ち、別れ、事故に遭ったライラはお腹の子供が死んだと聞かされる。
実は無事だったエヴァンは、娘のキャリアのことしか考えない父親(祖父)の手によって養護施設へ。
11年後、父の死の床でライラはこの事実を知る。

だが長いこと彼女を忘れられなかったくせに、ちょっと調べればすぐわかる彼女の居所を探そうとしなかったルイスの心情と共に、深く追求するのはやめておこう。
疑問点は音楽の素晴らしさから差っ引くとして。

やがてエヴァンは行くべきところ、ジュリアードに迎えられ、その才能を花開かせていく。
そして運命の日、演奏会でエヴァンが作曲したシンフォニーが流れる中、ミューズに導かれるように…。

予定調和の中での大円団だが、間違いなく充足感がある。
勢いで、サウンドトラック注文済み…です。
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こっそりワースト3

2009-04-13 | 映画のお喋り
前の家の近くにあったTSUTAYAが、ビルの取り壊しでなくなった。
ほぼ1年、映画から遠ざかってしまった。
(映画館へは数えるほどしか行っていない)

引っ越しをしてから、また近くにTSUTAYAがある生活に戻った。
それから1年ちょっとで、80本ほどレンタルしてきた。
(他に海外ドラマシリーズを山ほど見た)

その80本の中から、こっそりワースト3を選んでみる。
一生懸命作った人と、その映画が好きな人、ごめんなさい。
あくまで主観。

1本目。
パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド
最初のパイレーツは面白かったのに。
続編になるほどつまらなくなっていく。
この類の映画は、ヒーローと悪役がはっきりしていなければいけない。
そこにジョニデの、いわゆるジョーカー的存在があるから面白い。
オーランドくんはバカ正直なヒーローのままでいるべきだった。
その辺の役割が曖昧になったり、さらに逆転するにいたっては…。

2本目。
バタフライ・エフェクト2
これもナンバーなしがものすごく面白かったから、騙されて借りたクチ。
まるっきり違う映画なのに、2をつけるなんてほとんど詐欺だ。
見ても得になるものは何もないです。

3本目。
マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋
これはどうしようか迷った映画。
だけどダスティン・ホフマンとナタリー・ポートマンを使って、これはないでしょうっていうストーリーがね。
孫より他人を可愛がってるおじいちゃんもちょっとね。

論外。
ファウンテン 永遠につづく愛
映像だけの映画。
ストーリーはゼロです。
営々ときれいな写真を見せられているだけ。
映画じゃないので、ワーストにカウントするより論外へ。
私も母も、途中で寝ました。

最後に一言。
論外は別として、作り手の為に、とにかく最後まできちんと見た。
投げ出したりはしていません。
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勝負なんかついてるじゃない

2009-04-12 | 映画のお喋り
そう言えば、この人がいた。
ラブコメと言うカテゴリーからはややはみ出してるものの、この手の映画はお手の物の彼女が。
女から見ても、うっとりするほどチャーミングなキャメロンさんが。

お相手のアシュトン・カッチャーって、若手だと思っていたらもう30なのね。
それでもキャメロン様を相手にするには、まだまだ若造と言う感じだ。
出来ればもう少しさえない、だけどなんか魅力的なおじさんの方がよかった気がする。
美男美女は普通のラブストーリーの方がお似合いだ。

ベガスの恋に勝つルール
2008年 アメリカ
監督:トム・ヴォーン
出演:キャメロン・ディアス、アシュトン・カッチャー

嫌なことがあったら、たとえば失恋、たとえば失業、そんな時はベガスに行こう!
と言うノリでベガスに遊びにきたジョイとジャック。

ホテルのダブルブッキングによる出会い。
雰囲気で酔っぱらい、泥酔状態で結婚。
ジャックポットの大当たり、大金巡って大ゲンカ。

うう…。
これまでこのシチュエーションを何度見てきたことか。
この先の楽しみは、二人の会話のオシャレ度で決まる。

と思ったのだが、キャメロンがきれいすぎて、勝負はすでについているとしか思えない。
幾ら大金が絡んでも、こんな女性と半年も一緒に暮らして落ちない男はいないじゃないの。
あんたの負けだよ、ジャック。

キモは、ジョイの性格付け。
誰にでもいい顔をしてしまう。
好かれたいと言う気持ちだけで行動してしまう。
相手の喜ぶ顔だけを見たがって、自分の気持ちなんか二の次。
それが原因で、フィアンセにもふられてしまう。

だけどジャックは敵。
いい顔しなくてもいい。
好かれなくたってかまわない。
喜ばせる気なんか毛頭ない。

自分の好き勝手に暮した半年間で、ジョイは初めて本当の自分を見つける。
何がしたいのか、何が嫌だったのか、何が幸せなのか。
相手の気持ちを思いやらずに済んだ分だけ、自分の気持ちを素直に見つめられた。
そして気付く。
今までの自分はしたいことを何もしてこなかったと。

最後に彼女は、恋人とお金を手に入れる。
だけど何より欲しかったのは、本当の自分。
恋もお金もおまけにすぎない。

自分が自分らしくふるまっている時、好きになってくれた人が本物。
気取らなくても、欠点見せまくっても、気がつくと側にいる人が本物。

好きな人の前で自分をさらけ出す勇気を持てるか。
その自分との闘いの中にだけ、勝ち負けがある。
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時は流れて

2009-04-11 | 映画のお喋り
1993年「めぐり逢えたら」、1998年「ユーガットメイル」
トム・ハンクスとメグ・ライアンのゴールデンコンビ全盛期のラブコメだ。
内容はともかく、トムもメグも光り輝いていて、心地よい映画だった。

あれから時は流れた。
トム・ハンクスは渋い演技派に転身。
メグ・ライアンは…そう言えば最近、あまりお目にかかっていない。
ラブコメの女王の地位は、とっくにドリュー・バリモアに譲ってしまったし。

久しぶりにメグ・ライアンの名前を見掛けた。
主演はアントニオ・バンデラス。
え?ラブコメじゃないの?
いや、ストーリーを読むと、完全なラブコメだ。

しかも共演者の名前に「コリン・ハンクス」
トムの息子じゃん。
アントニオ・バンデラス初のコメディ。
メグ・ライアンとトムの息子の初共演。
話題になってもいいはずなのに、劇場未公開だった。
どんな大人の事情なんだろう。

あいつはママのボーイフレンド
2008年 アメリカ・ドイツ
監督:ジョージ・ギャロ
出演:アントニオ・バンデラス、メグ・ライアン、コリン・ハンクス

いきなりファットなメグ・ライアン。
思いっきりの特殊メイクでご登場だ。
夫を亡くし、息子を溺愛し、食べることだけが楽しみのマーティー。
だけどFBI捜査官の息子ヘンリーが長期出張でいなくなる。
そしてふと考えた。
私、このままでいいの?

と言うプロローグ。
当然サービスの特殊メイクはここまでで、すぐにスレンダーに変身。
そして高校生の彼氏と遊びまくるぶっとんだ女性に。
3年ぶりに戻ってきた息子はビックリ。

その後、強盗団の一味であるトミーとマーティーが恋に落ち、捜査チームのリーダーに指名されたヘンリーがやきもき。
ママの寝室にまで盗聴器を仕掛け、複雑な心境のヘンリーをよそに、トミーとマーティーの恋はますます燃え上って行き…。

ま、そんな内容だ。
笑わせたい部分は、正直に言うとかなりすべってる。
トミー役にバンデラス起用だから、彼が悪いやつでないこともすぐネタばれする。
あとは見どころと言うと…。
平和な映画です。

映画はのどかだが、時の流れはのどかどころではない。
残酷だ。
「セックスアンドザシティ」のキャリーが、メイクを取ったら老婆みたいで、もうどうしていいのか分からなくなった。
見てはいけないものを見てしまった気がした。
(あれは確信犯なんだろうが)

今回もメグ・ライアンのアップを見るたびに、悲しい気持ちになってしまった。
もしも年相応の賢い母親役だったら、そうは思わなかったんだろうが、ぶっとんだ、だけど無邪気な女性と言う設定だったから…。

出来れば若さはつらつの息子ではなく、渋く歳取った父親の方と、大人のラブストーリーを作ってほしかった気がする。
ハリウッド女優がどれほどお金をかけても手に入らないもの。
それと喧嘩してはいけない。
手を携えて、素敵な女性にならなくては。

時の流れは優しくもなり、残酷にもなる。
どう泳ぐか。
それが問題だ。
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J&J

2009-04-04 | 映画のお喋り
カンフー映画はジャッキー・チェンしか知らない。
ジェット・リーは名前だけしか知らない。
だけどハリウッドで中国人(いくら有名でも)二人の映画が作られたのは、やはりすごいことだと思う。
タイトルクレジットでは同じ「J」を絡ませて、横にジャッキー、縦にジェット。
完全に二人が主役だ。

ドラゴン・キングダム
2008年 アメリカ
監督:ロブ・ミンコフ
出演:ジェット・リー、マイケル・アンガラノ、ジェッキー・チェン

上の出演順は、一応エンドクレジットを参考に。
ストーリーとしての主役はジェイソンと言うアメリカ人青年。
ジャッキーはあくまでゲスト出演と言う立場なんだろうか。

二人の「J」は共に二役。
(いつものごとく、完全にネタばれだが)
一応ストーリー展開は、ロードオブザリングっぽいファンタジー。
だけど本当の主役は「カンフー」
ファンタジーとカンフーの2本立ての映画のようだ。

ジェイソンは昔のジャッキーの役を演じている。
何も知らない青年が事件に巻き込まれ、老師にカンフーを習い、次第に強くなって悪を倒す。
(倒したのはジェット・リーだが)
この強くなり方が早すぎて、ちょっと笑う。
ジャッキーが教える側の老師を演じてるのも、ちょっと笑う。
ジェットの孫悟空のコメディ演技も、板につかなくてちょっと笑う。
カンフーシーンもワイヤーが多すぎて、ちょっと笑う。

だけどこの「笑」、狙いじゃないので微笑ましい。
お決まりのストーリー展開も悪びれず、かえって好感が持てる。
良いお姉さんと悪いお姉さんも、きれいだし適役。
そして「本物」のふたりの「J」の対決シーンは、ものすごくかっこいい。

つまり、楽しい映画だ。

ストーリーを考えると、最後のオチで、タイムパラドックスにつきあたるんだけど。
あのボストンのチャイナタウンのおじいさんは、少なくとも千年はあそこ(かどこかは知らないが)で、如意棒を持って、ジェイソンがやってくるのを待ってたのだろうか。
幾ら不死でも気の長い話だ。
サイレントモンクが「毛」だったオチは、納得いくけどね。

それでも、楽しい映画だ。
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ナルニアに戻れましたか?

2009-04-02 | 映画のお喋り
2006年11月にエントリーした記事ーナルニアには行きましたか?
あれからもう2年半が経ってしまったのか。
残念ながら映画の印象も薄れかけてしまった。

無論原作の大ファンで、小さい頃から何度も読み返しているから、どれだけ時が経とうとストーリーについていけないと言う心配はない。
ただ第2章と銘打ったこの話は、ナルニア国物語の原作シリーズの中で一番つまらないエピソードなので、そっちの方が心配だった。
(ちなみに一番好きなのは4作目の「銀のイス」)

ナルニア国物語・第2章ーカスピアン王子の角笛
2008年 アメリカ
監督:アンドリュー・アダムソン
出演:リーアム・ニーソン(アスランの声)、ベン・バーンズ
   ウィリアム・モーズリー、アナ・ポップルウェル、スキャンダー・ケインズ、ジョージー・ヘンリー

この話で一番好きなエピソードは、ナルニアの王城がかつて存在していた「ケア=パラペル」に戻ったペペンシー兄弟と、ドアーフのトランプキンが遭遇する場面だ。
角笛を吹いたら現れると言われる古代の王たちを迎えに行ったトランプキンは、そこでなんの変哲もない子供たちと出会ってがっかりする。

彼は婉曲に彼らには用がないと告げ、「お小さい方」と彼らを呼ぶ。
そこでピーターは弟エドモンドをトランプキンと戦わせる。
繰り返すが、彼らの剣や弓には魔法が込められているので、子供に戻ってしまっても、ひとたび剣を持てばかつての勇者に戻れる。

次にスーザンが弓でトランプキンと対決する。
彼らに完敗したトランプキンはやっと兄弟を古代の王=救援者として認める。
その時に、スーザンがちょっとした皮肉でトランプキンを「お小さい方」と呼び返すのだ。
このトランプキンは後にカスピアンの摂政になるのだが、親しいものからは「お小さい方」を略して「オチカ」と呼ばれ、その意味を知る者はほとんどいない。

この辺のエピソードがうまく消化されてない気がした。
第1章でアスランを縄目から救った功績により、ネズミも「もの言う動物」に加えられ、後に人気者のリーピチープが誕生するエピソードがきちんと描かれていないのと同じだ。
シリーズもの独特の、「あとに続く」感が足りない。

初めに書いたが、この巻はシリーズものの中でももっとも内容が薄い。
そのせいで、脚色が自在にできる利点も生まれた。
テルマール人である人間の「王位」をめぐる策略や戦いに重点を置いた脚色を選んだようだ。
映画的には正しい選択だったかもしれない。

だがこの話で原作者であり神学者であるルイスが言いたかったのは、神は信じる者の中にしか存在しないと言うことだと思う。
だから現実問題に心を奪われたトランプキンやピーターには見えないアスランが、彼に会いたいと念じ続けていルーシーにだけ見えたのだ。

「アスランは何故カスピアンを、あるいはナルニア人(魔法的な生きもの)を助けないのか?」
この疑問に対する答えは簡単だ。
テルマール人のカスピアンはアスランを信じていない。
ナルニア人も長年の迫害でアスランを忘れかけている。
心からアスランを信頼しているもの=ルーシーの呼びかけにしか、応えることが出来ない。
アスランにしても実に歯がゆい状況だったのだ。

カスピアンはこの先の2作にも登場する(4作目は老人になってる)し、それらしいキャストだと思う。
でも私のお気に入りはエドモンド役のスキャンダーくん。
アメリカ映画の鉄則で、いい役にはそこそこの、悪役には可愛い子を持ってくると言うのがある。
第1章で裏切り者を演じたエドモンドには当然ピーターより可愛い子が割り振られる。
今回はあまり活躍していないが、3作目では問題児のユースチスを抱えながら、いいところを見せてくれる…はず。

ただしナルニア国物語の主役はアスランであり、ナルニア人だ。
3作目で一番活躍するのは、もちろんねずみのリーピチープ。
あ、ここで不満をもうひとつ思い出した。
ナルニアのルールで、もの言う動物たちは、こちらの世界より大きいものは小さく、小さいものは大きくなる。
リーピチープもネズミではあるが、人間のひざ丈くらいの大きさのはず。
もっとも小さな存在ゆえに、もっとも誇り高いリーピチープを表現するには、映画の大きさでいいのかもしれないけど。
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嫌われたヒーロー

2009-04-01 | 映画のお喋り
ウィル・スミス率が高い。
すごく好き、と言うわけではないが、自然と手が彼の映画に伸びている。
コメディが主流だけど、シリアスなウィルも悪くない。

だけどやっぱりコメディ。
思い切り笑えるコメディがあまり作られない昨今、貴重な1作に巡り合えた気がする。
嫌われ者のヒーローの設定がいい。
それも別にダーティーなつもりもないのに、不器用だから嫌われるなんて。

ハンコック
2008年 アメリカ
監督:ピーター・バーグ
出演:ウィル・スミス、シャリーズ・セロン、ジェイソン・ベイトマン

今日も大都会に凶悪犯罪が発生する。
だけどスーパーヒーローは無精ひげで酒びたり。
子供に悪態をつかれて、しかたなく現場まで空を飛んでいく。
何者か知らないけど、とてつもないパワーと不死の肉体を持つ彼が来たからにはもう大丈夫。
…にはならない。
とてつもないパワーで、ビルを破壊し、犯罪者より多額の被害を街に与えてしまう。
トホホなヒーロー・ハンコック。

だけど貧乏神みたいなヒーローにも、理解者が現れる。
踏切で死にかけているところをハンコックに助けられた(ひどい目に遭いながら)レイが、初めて彼に感謝の言葉を口にする。
助けても感謝されたことのないハンコックの表情が少しだけ変わる。

レイは世界を幸せにしたいと言う夢を持つ理想主義者だ。
理想が高すぎて、PRの仕事もうまくいかない。
彼は自分の仕事を生かして、ハンコックが愛されるヒーローになるようPR作戦を開始する。

初めは乗り気でなかったハンコックも、初めてできた友達で、心底お人よしのレイの熱意にほだされていく。
スーパーマンのようなスーツを着て、物を壊さず、現場の警官には礼儀を尽くし(グッジョブと言え)、誰にでも親切に。
レイの思惑通り、ハンコックのイメージは少しずつ変わっていく。

だけど、だけど…。
平和で幸せに見えたレイの家庭にも、実はとんでもない秘密があって…。
(以降、思いきりネタばれ)

ハンコックはかつて、病院で目覚めた時に記憶を失い、自分が何者かを知らない。
持っていたのは映画のチケット2枚。
誰かと映画に行ったはずだ。
だけどその誰かは名乗り出てくれない。
自分は誰からも愛されていないんだ。
その思いが、彼に投げやりな生き方をさせていた。

ハンコックの過去と正体がわかった時、彼は二つの事実を知る。
愛されていたことと、その愛が決して幸せをもたらさないこと。
ハンコックが感じたものはなんだろう。
喜び?哀しみ?

たとえ悲しい選択を迫られようとも、事実は知らないより知った方がいい。
自分が何者か知らない人間こそ、何よりの悲劇だからだ。
自分で選択して、結果が不幸でも、人はそれを受け入れられる。
何も知らない人間には、何一つ受け入れられない。

ま、そんなことはどうでもいいんだけどね。
バカじゃないのと言いながら笑って見る映画だから。

バカバカしいけど、ウィル=ハンコックの哀しげな表情にはちょっとやられちゃう。
また次のウィル映画も借りてきちゃうんだろうな。
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非日常的な日常

2009-02-28 | 映画のお喋り
人が信念を持つ。
そのことは素晴らしい。
そして、何を信じようとその人の自由だ。

国を守るために兵士になる。
国を守るために戦地に赴く。
その信念が間違ってると断言することはできない。

正しい戦争。
そんなものがないことを知っていても、国を守るためなら命を捨てる。
それが愛国心と言うものなのだろうか。

国を守るために命を捨てた母親。
軍隊の資格審査に落ちて生き残ってしまった父親。
自分では何も選択することもできず、悲劇に巻き込まれる娘たち。

現実はいつも悲しい。

さよなら。いつかわかること
 2007年 アメリカ
 監督:ジェームズ・C・ストラウス
 出演:ジョン・キューザック

身内が戦地に赴いて、残された家族がいつも見る悪夢。
それはある日公用車が止まり、中から軍服が降りてくる時。
愛する者を国旗(星条旗)と共に埋葬しなければならない現実への前触れ。

スーパーマーケットに勤める平凡な男スタンリーにも、ついにこの日がやってきた。
彼は現実を受け止めることが出来ない。
そして衝動的に娘たちを連れて旅に出る。
行き先はフロリダにあるテーマパーク。
幸せが待っているかのように、彼らは旅をする。

ジョン・キューザックの呆然とした表情と、娘たちに向ける父親の視線の使い分けがなかなかいい。
非日常の中の日常。
その日常がいつ壊れるのか。
映画はその瞬間を追い続ける。

スタンリーも妻のグレースも筋金入りの愛国者だ。
進んで入隊し、そのことを誇りにしている。
だけど今、スタンリーの心の中には一つの疑問が生まれている。
それは家族を犠牲にするほど大切な信念だったのだろうか。

夫がアフガニスタン、そしてイラクに赴くのを見送り、それでも二人の娘と必死に明るく生きようとしていたサカナ(HN)。
今どうしているだろう。
彼女のことを思い出し、やるせない気持ちになった映画だった。
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売れ残りのブルーベリーパイ

2009-02-17 | 映画のお喋り
久しぶりに映画のおしゃべりでもしてみよう。
最近は本当にこのジャンルばかり観ている。
そう、「ラブストーリー」

でもこの映画、ラブストーリーというジャンルからは少し離れている。
一つの恋が終わり、次の恋が生まれかけた。
この辺でワクワクするのに、なぜか映画は自分探しの「ロードムービー」へと化す。

マイ・ブルーベリー・ナイツ
 2007年 フランス・香港・中国制作
 監督:ウォン・カーウァイ
 出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン

ノラ・ジョーンズはシンガーだけど、相手役に恵まれて演技は問題なし。
そしてキュート。
レイチェルもナタリーもキュート。
可愛い女の子たちを見てるだけで、ある程度の得点は入る。

ジュード・ロウはもうこの手の映画には欠かせない俳優だ。
少し歳取って、妻に逃げられたバツイチ男の悲しさなんかも醸し出している。
若い女の子を包み込む優しさもあるし、文句なしです。

映像がきれい。
音楽が私好み。
もう悪いところなしみたいだけど、ストーリーが…。

PVのような映像をつなげて、ストーリーのないラブストーリーって言うのが最近目立っている。
正直、途中で寝そうになった。

エリザベスとジェレミーが出会ったきり、感情の軋轢もないまま離れ離れになり、旅先から送る「手紙」だけでつながれる。
こんなの恋じゃなく友情じゃないの?
旅立ったものも、残されたものも、それぞれ成長し、本当に大切なものに気付く的なストーリーなのかもしれないけど。

傷ついたところから始まり、傷を癒す旅に出る。
その後は傷つくことのないラブストーリー。
私には物足りなかった。

(タイトルは映画を見た人にならすぐ意味がわかる。
売れ残ったものでも、よく味わえば美味しいことに気付く、のかも)
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