食べ物について。
これを机の前に貼ったのは先月のこと。
基本的に引きこもりの生活なので、大抵は家で食事する。
けれど独り身というのは極めて勝手な時間配分が可能であるため、食事時間というものは決められていない。
だいたい、食事は1日2回。
そのうち1回はパンやシリアルや焼きそばなので、料理といえるものをつくるのは残りの1回に限定される。
時間はだいたい、夜の7時~9時くらい。
ちょうどパソコンに疲れた時か、お腹が減ってどうしようもなくなった時、もしくは仕事中に行き詰まった時。
そういう時は、今すぐ食べたい。
何でもいいから腹に入れたい。
レシピなんかを読むエネルギーは残っていない。
…だけど、栄養はとりたい。
ということで、栄養のありそうな材料をとりあえず混ぜて焼けばいいだろう、という発想に行き着いた。
ひじきオムレツと納豆のぶっかけ丼
ジャガイモのお好み焼き納豆がけ
ジャガ芋とコンニャクの黒ニンニクハチミツ炒めゴマ和え
私的には“がんばって料理した”と思っているので、でき上がった時にはある種の感動がわき上がる。
焦げたら焦げたで、「すげー!」と感動する。
どんなにまずそうでも、「すげー!まずそう!」とうれしくなる。
それでfacebookに投稿すると、いろんな反応が返ってくる。
たとえば「出たっ!」「かなこらしい…」というコメント。
これをどう受け止めたらいいのか。
今度は少し戸惑う。
それで、“私らしい料理” というのは、多分、私以外の人間にはあまり受け入れられないだろうと(分かり切っていたことだが)思い直し、“まともな” 料理をつくれるようになろうと決意した。
あ、そうそう、その前に。
去年の晩秋にロシアを訪れた際、とっても恥ずかしい思いをしたんだった。
ホストとして私を受け入れてくれたルダママは、毎日驚くほど美味しいロシア料理をつくってくれた。
甘えてばかりだった私は大変恐縮して、最後の日には日本料理をつくるわね、と約束した。
そして意気勇んで買い物に行き、巻き寿司に必要そうな具材を買い込んで台所に立った。
巻き寿司だったら、マレーシアのホストファミリーもつくっていた。
あれを思い出してつくれば簡単にできるはず。(日本で実の母親がつくっていたのも少しは覚えているし)
そう思って、まずは卵焼きを薄く焼いて細切りにし、ハムやキュウリも同じ太さに切って並べた。
皿がカラフルに彩られていくと、ルダママも「へえ!」と感心してくれる。
ちょっと鼻高々。
あとは白米に酢をたらして混ぜて…すのこがないから、手巻き寿司にしちゃお…と思っていた矢先、私の耳元に意外な情報が入ってきた。
「今日は最終日のパーティだから、参加人数が増えて10人以上になるわよ」
ええっ! そんなの聞いてないし!
動揺した私は、急遽メニューをちらし寿司に変えることにした。
手巻きにするには海苔が足りない。
そのくせ材料とご飯は多すぎるから、絶対にあまる。
それで大きな皿にご飯を盛って、具材を放射線状に並べて海苔を散らした。
その完成写真がこちら。
…なんだこれは? と、海苔を散らしている途中から私は投げやりになっていた。
海苔が大きすぎる。
これではただの海苔飯じゃないか…。
とても「寿司」とはいえない…。しかも日本人がつくった寿司とは…。
ダイニングには続々と人が集まり、テーブルには黄金の湯気が立ち上る美味しそうなロシア料理が並んだ。
その中に、でかい海苔飯。
パーティの冒頭、ルダママが皆に私を紹介してくれ、一言スピーチをすることになった。
「あの…、まず押さえておきたいことは…、そこにある料理は日本料理ではありません。なんというか…、日本風寿司のような、私のオリジナル作品です」
皆さん、恐らく意味が分からなかったのでしょう、失笑することも苦笑することも、ましてや温かい拍手をくれることもなく、「はい」という感じで終わりました。
そして誰もが非常に手を出しにくいその海苔飯は、ルダママの妹さんの手によって強制的に各人の皿に取り分けられ、少々気まずい雰囲気の中、醤油をかけて食べられました。
妹さん、ありがとう…あのまま空気のように取り残されたらどうしようかと思いました。
そんなこんなで、いつ何時、私たち女子は料理をすることになるか分からないわけで、やはり「できない」よりは「できる」方が便利であることを痛感した次第。
その後(数ヶ月たって)、まずは自己トレーニングだと思い立ち、冒頭の張り紙を書いたのでした。
その成果を最後に。
きんぴらチャーハン梅干し付き
肉キャベツのオイスターソース炒めと卵チャーハンセット
オクラとワカメの豆腐のせ
3色ラーメン
今夜は何をつくろう…。
そうだ、キャベツが余ってるからお好み焼きをつくろうと思って豚肉を買ったんだった。
小麦粉を入れすぎないようにしなければ…(また生焼けになってしまう)。
今や教訓ならいくらでもありますからね。
一歩ずつ、一歩ずつ、そのうち非女子卒業なるか?