leka

この世界のどこかに居る似た者達へ。

「クロードと一緒に」 稲葉 友編 3。

2014-10-30 22:07:28 | お芝居・テレビ
また間が開いてしまいました。申し訳ないです。

こんなに時間が経ってもその時の空気が激しい感情を持ってまざまざとよみがえって来る、この「クロードと一緒に」と言う舞台。

なんと

再演が決定しました!!!!!!!


2015年4月17日~4月23日、「シアタートラム」と言う劇場での再演です

いやぁ~~、凄い嬉しいですね


初演と同じ俳優の方々が出演なさるのかはまだ分かりませんが、アタシはこのニュースを聞いて本当に嬉しかったですよ

舞台のお芝居を観始めてまだ日の浅いアタシですが、この「クロードと一緒に」と言う舞台を観てから人生観の様なものが変わったかもしれないと感じているんです。

何故か分からない、終演時に流れる涙と、震える心。

フィクションの世界を傍観しているに過ぎないのに、制御できない感情。

ずっとそれがどこから来る感情なのか考えているけど明確には分かりません。

そして、この舞台を観てから、何だか前よりもずっと涙もろくなった気がするんです。映画を観て泣くことの多くなったこと・・・。年齢のせいもあるのかも知れないけれど、以前はあまり泣くことは無かったのです。


若い役者さんが体当たりで演ずることに対して素直に感動したと言うのも事実ですが、何か、あの空間には今まで経験した事のない空気が流れていました。


演ずる役者さんによってお芝居の雰囲気は変わって来ますので、同じ方が配役されても違う方になっても、どんな「クロードと一緒に」が拝見出来るのか正直少し怖くもありますが、楽しみに待っていたいと思います。



さて、稲葉 友さん演じるイーブ、伊達 暁さん演じる刑事”ロバート”のこの舞台。アタシが観に行った回が、このコンビの千秋楽でした。千秋楽と言う事もあってか、ラトレイユ役の鈴木ハルニさんの”笑い”のぶち込み方が凄まじかった


取調べの途中で刑事が扉の向こう側に立つ警備官”ラトレイユ”を大きな声で呼びます。ハルニさん演ずるラトレイユが部屋へ入って来ると、イーブの方を見て「トイレだ。」と刑事。

ラトレイユに連れて行けと言う指示なのですが、当のイーブはトイレに行きたいなんて言っていません。不満そうな表情を見せるイーブですが、ここでハルニさんが


「大でしょうか?小でしょうか??」


と、ぶち込んで来ます


まさかここでそんな空気の読めない台詞がぶち込まれるとは思わずに、観客席が戸惑いまくります


舞台上の刑事も「お前、なに?」と言う顔でじっとラトレイユを見ています。

しかし、彼はめげません。


「ビッグ オア スモール?」


と、今度は英語でしかもちょっと得意げに

思わずブッと吹き出す観客達

「何で英語やねんっ!英語で言うとしてもビッグオアスモールとはちゃうやろっっ!!!!!」

と心の中で突っ込むことしきり

この場面は相馬さんチームの時にもありましたが、英語で聞いてくることまではしませんでした。

千秋楽であったため、ハルニさんなりの稲葉・伊達コンビへのサプライズだったんでしょうか。


でも、流石プロです。伊達さんも稲葉さんも表情は崩さず、決して笑いませんでした。

凄い。

知ってたのかなぁ?




ラトレイユに連れられて渋々部屋を出てゆくイーブ。

部屋に残った刑事は判事の机の上にある電話をかけます。

相手は彼の奥さん。

電話がつながってすぐに、開口一番だるそうな声で


「死にそー。」


イーブがトイレに行きたいとは申し出ていないのにラトレイユに連れて行かせたのは、彼も一息入れたかったからなんだなぁと思ったのでした。




つづく。


























































「クロードと一緒に」 稲葉 友編 2。

2014-10-07 14:27:11 | お芝居・テレビ
この「クロードと一緒に」と言うお芝居の主人公”イーブ”には一切女性的なアプローチはありませんが、中性的と言うか何と言うか「男の子でもなく女の子でもない」と言う雰囲気が二人のイーブからは感じられました。

いや、勿論外見は男の子です。かもし出す空気が独特でした。

それは本当に不思議な感覚で、この二人の俳優さんがそこまで「男娼イーブ」の雰囲気を身にまとった事に驚きます。

きっと演出家の方や共演者の方々、関わった人たち総てに「引き出された」と言う事もあるかと思いますが、表現者として「イーブ」と言う青年に取り込まれる位寄り添わないと出来ない役であったと感じます。


イーブは女性の気持ちを持つ男の子では決してないのだし、女の子の容姿に憧れる男の子でもありません。

男性であり、男性が恋愛対象である男の子の複雑な佇まいを安っぽくならず身にまとう事はとても難しい事だったのではと思うのです。

観客にも伝わりづらく、表現する方にしても伝えづらい難しさがあったにも関わらず、最後にはお互いが涙を流す程何か強い物を共有する驚くべき結果となりました。



稲葉さんの演じるイーブは相馬さんのどこかとんがった雰囲気を持つイーブとは違い、物静かで大人しい感じがしました。

もうホントにうんざりなんだって表情で刑事役の伊達暁さんと向き合います。

伊達さんはとってもかっこ良かったです。男っぽい色気がありましたねぇ。

何をしでかすか分からない危うい瞳の相馬イーブと対峙していた伊藤さんが、「やるんならお前、かかって来いよ」的な感じであったのに対し、パッと見殺人など出来そうにない稲葉イーブ相手の伊達さんは36時間取調べに何の進展も無い事に苛立っては居るものの、「まぁ、お前は話すよ、最後には。俺は本気なんだし。」ぐらいの大人っぽい余裕があったような。

おもしろかったのは、相馬イーブとは立ち位置が反対側だったりした事です。相馬イーブがギィや刑事の居る舞台中央の大きなテーブルの方で喋るところで、稲葉イーブは判事のデスクの方で喋っていたり。

左利きや右利きだったりして?

いや、分かんないけれど(笑)。



少し子供っぽい雰囲気を残す稲葉イーブには、「どうしてこんな事に・・・?」と言ういたたまれない気持ちを覚えました。

彼が育って来た日々の中に、安らぎや温もりの代わりに混乱や孤独があった事を悲しく思いました。


主に刑事や速記係が居るテーブルの脚はまっすぐはなっておらず、猫脚の様に少し床に近い部分に曲線のあるデザインです。

稲葉さんがそのテーブルの方に腰掛けて話す時、自分の足の裏をぺたっとその曲線部分に乗っけて話していました。

そんな若い無邪気な仕草が可愛らしかったですね。


また、”クロード”に自分以外の女性の恋人が居て、彼女が事件の事を聞き絶叫したとの捜査報告を刑事が読み上げると、稲葉イーブは思わず刑事の持つファイルを掴んで引っ張ります。

「嘘だ、そんな事どこに書いてある!」と言わんばかりに。

伊達さん演ずる刑事は、イーブのその余裕のない瞳をじっと見据えながら触るな、と言う具合にイーブが掴みかけたファイルをその手から引き剥がします。


このお芝居は相馬さん・伊藤さんコンビには無かったと思います。


取り返しのつかないとんでもない事をしてしまったイーブはまだ考えの甘い子供で、刑事達は経験もあり術も知る大人。

結局のところはまったく勝ち目がない。


稲葉さんの若い外見も手伝って、そんな事が伝わって来る様なシーンだと感じました。




つづく。




























































「クロードと一緒に」 稲葉 友編。

2014-10-02 21:47:54 | お芝居・テレビ
10月に入りました。昔、母がよく「二桁になるともう年末まで速いわよね!!」などと言っていましたが、なんかやはりここから駆け足が始まる様な気がします。

アタシは5月に「クロードと一緒に」と言う舞台を観ました。このお芝居は元々カナダのお芝居で、初演は1985年、29年も前です。イギリスでも上演され、映画化もされた作品で日本では初演。

日本の舞台はダブルキャストで、主人公で若い男娼の”イーブ”を相馬圭祐さんと稲葉友さん、彼を取り調べる刑事を伊藤陽佑さんと伊達暁さんがそれぞれ演じ、各々のチームがイメージの異なるお芝居となっていました。

そして、本国カナダではカナダ人若手演出家による本作品がこの9月16日から10月11日まで上演中です。


相馬圭祐さんと伊藤陽佑さんコンビの事はこのブログに書きました。(記事はこちらからどうぞ

只今カナダで上演中なのだし、もう一人のイーブ、稲葉友さんのお芝居の事を書いて行こうと思います。



アタシは「相馬イーブ」から拝見したのですが、カーテンコールでの相馬さんは足元がフラつく程消耗していたのです。

そんな相馬さんの姿を見て、思わずアタシも涙が出ました。

他の観客も拍手をしながら泣いている人が多かった。

相馬さんのファンの方にとってはきっと衝撃の舞台であったと思うし、お芝居が始まった頃には正直こんな凄まじい演技を観るとは思っておらず「なめてた・・・。」と感じていた人も居ただろうし、内容が濃く、絶対的な説得力を以ってして表現しなければならない難しい役に挑戦した若い俳優さんに対して感動し涙を流した方も居ただろうと思います。


しかしながらアタシは、カーテンコールで体力も精神力も消耗し切り、どこかうつろな瞳でいる相馬さんを観て泣いてる自分の涙の意味がよく分かりませんでした。

お話は終わったと言うのに”イーブ”の居る世界から戻って来れない様な感覚でいて、目の前で観客に向かってお辞儀をしている演者の方々を見てさえ胸が苦しく、切ない様な気分のままでした。


この舞台を観た多くの観客の方々がそうであったように、アタシもこの日の帰り道は余韻をひきずりまくりました。
劇場を出て駅まで歩くあいだ、何度も泣きそうになってしまい焦りました。

「意味が分からない・・・」と思いつつ、もう一人の”イーブ”に会いに行かずには居られなくなってしまったのです。



そして翌日、アタシが観た稲葉友さんの回は、稲葉さん・伊達さんコンビの千秋楽でした。

お昼の回だったのですが、この舞台の夜公演が相馬さん・伊藤さんコンビの回で大千秋楽だったのです。


相馬イーブと稲葉イーブとでは当たり前の事ですが、まったくイメージの異なる「彼」でした。

観客と初対面する時、相馬イーブはデスクに後ろ手をついて刑事をまっすぐに見据えていましたが、稲葉イーブは観客の方を向き立っていました。

こんなのやってられない、と言う様な表情を浮かべてただ立っているのですが、この立ち姿がとても妖艶でそれがそのまま稲葉イーブの鮮烈なイメージとなりました。


相馬さんと同じく、稲葉さんの髪も金色。相馬さんがどこか怖さを感じる美しさであったのに対し、稲葉さんは凄く中性的な感じがしました。見た目は男の子なのですが、受ける感じが男の子でも女の子でもない、色っぽくて幼くて不思議な感じ。


稲葉さんはまだ21歳なんですねぇ!!

この若さでこんなに深く難しい役を演じたことに驚きます。

でも若いからこそ、稲葉さんのイーブは真っ直ぐでたやすく、不安定で爆発的なパワーを持っていました。

そして相馬さんと同じでどんなに乱れてぐちゃぐちゃになっても、とても綺麗でした。





つづく