なかなかに立ち回りの場面が多い、この蛮幽鬼。
斬って斬られ、斬られては斬る。
血がね。見えるんですよ
。
役者さん達の衣装にどうやら仕掛けがあるみたいですね。
お芝居の初めの方で土門の親友が殺された時も、ちゃんと流血します。
痛そうです
。
あと、「シャキーン、シャキーン!」って言う、刀のぶつかり合う音がします。
それと拍子木の音。「チョンチョンっ!」と音がして、見せたい場面を強調して観客に見せたり。
漫画っぽい感じが少しします。
蛮幽鬼クライマックスは、土門の体に毒がまわり、大変な局面をむかえてしまいました。
サジを相手するのは、美古都のためになら命すら投げ出してもかまわない刀衣です。
この刀衣とサジは実は同じ「狼蘭族」と言う部族の出なのです。剣術に長けた者達。その技量は主に暗殺などに使われると言う・・・。
感情を覚えた殺し屋など、もう死んだも同然と言う考えのサジ。
「誰かのために死ねる気持ち良さなどお前には分かるまい」と、そんなサジにむかってゆく刀衣。
殺し屋
殺し屋の激しい戦いが幕を開けます。
蔵人は美古都に逃げるよう促しますが、体の震えが止まらぬ土門を見捨てる事が出来ずにためらって居ます。
刀衣が土門のそばまで来て「逃げて!」と言い、土門の肩のあたりを刺しました。
すぅーっと両の黒目が真ん中に寄って行く土門。そのまま横たわり動かなくなりました。
この蛮幽鬼のセットは回転する大掛かりな物で、回転して場面転換を成していました。
建物の中と外を瞬時に観客に見せてくれたりして、とても面白かったです。
サジと刀衣の戦いのさなかも、確か一度セットが回転しました。
そして姿を現した美古都。
逃げてはいませんでした。土門も死んではおらず。
刀衣が土門にはトドメを刺したのではなく、毒消しを刺したんだと言います。
狼蘭族には薬を使う者もおり、どうやら刀衣はそうらしい。
全ては美古都のため。
いや、もしもサジと言う男を自分が仕留められなかったのならば、後は土門に託すつもりだったのでしょうか。
複雑な心境を乗り越えて戦った刀衣ですが、残念ながらサジを仕留められませんでした。
サジと土門の一騎打ちの始まりです。
サジから戦い方を伝授された土門。
監獄島を脱出する手助けをしたのはサジであり、今、自分がここにあるのは彼の力があってこそなのを感じながら戦っているのか。
お互い退きません。
サジは自分の戦法と戦います。自分と戦っているのと同じです。
土門は存分に斬られます。気付けば、胸といい、足といい、服もろとも斬られ赤い血が見えています。
しかし、倒れても何度も立ち上がるのでした。
サジが不思議に思っていると、「痛くないんだよ・・・」と土門。
毒のせいなのか毒消しのせいなのか、ここへ来て土門の体はなんの痛みも感じなくなってしまったのです。
それは何だか「心も体も」と思えてしまい、悲しい事の様に思えました。
監獄島へ投獄されて、充分に傷ついた土門の心は、もはや疲れ果てているはずです。
でも、大量に出血すれば死ぬじゃんねー
、みたいな事を言って嬉々として殺しにかかるサジ。
おめーってヤツはよぉ・・・・。
そんな二人の足元から白い靄が立ち込めて来ます。
「なんだ・・・ここはまだ監獄島じゃないか・・・。」
遠くを見て土門が言います。何を言っているんだ?と言う感じのサジ。
そろそろ二人共、戦いを終結させたい頃合です。
土門はサジに、いつかお前の本当の名前を教えて欲しいと言います(今度出逢ったら、みたいな感じだったかな?)サジとは本当の名ではないんです。
そんな土門にサジが、君には本当の名前なんてあるのか?と言う様な事を聞きます。
土門は力なく少し笑って「それもそうだな。」と言い、サジを殺します。
クライマックスの土門は現実と幻影を行ったり来たりしています。
土門は己の中から生まれた、己の復讐のために己を支え続けた、「サジ」と言う自らの憎しみを葬り去ったのです。
事態は収拾がつかなくなっています。美古都はどうにか土門が救われる方法は無いかと考えていたはずですが、どうにもなりません。
衛兵達が騒ぎを聞きつけてここへやって来るのも時間の問題です。
「土門!」
美古都は、かつて愛した男をかつて愛した男の名を呼ぶように叫びますが、土門は「オレは飛頭蛮だ!!」とさえぎります。
この国の王、美古都として逆賊、飛頭蛮を殺せと土門は刃を彼女に持たせて刃先を自分に向けさせます。
そして、「この監獄島から救ってくれ」と。
美古都の手に持った刀をグッと引き寄せ、土門は自らの体を貫きました。
何かを掴むように手を伸ばし、宙を泳ぐ視線で「外の光がっ・・・」と言いかけ、土門は死にました。
復讐を遂げても監獄島から開放されずにいた土門の魂は、美古都の胸の中でついに自由になったのかもしれません。
しかし、土門は何も救われてはいないのです。
美古都の胸の中に帰る事と引き換えに、傷だらけになって命を失ったのです。
気付けば、観客女子達の鼻をすする音が映画館の客席のあちこちから聞こえて来ました。
暗がりでハンカチを握る手。
悲しくも美しい最期の場面に酔っているかのような客席。
で、ございました。
これは新宿バルト9にあったポスター。
暗く、救われる者の無い物語なために、あんなに爆笑シーンがあるのかすら。
せめて、ここは笑って、と。
ま、そう言うわけじゃないんでしょうけども。
土門の魂が救われたかどうかは、きっと土門自身にしか分からないんだろうなぁと思う帰り道でございました。
ゲキシネ上映は日本のあちこちでまだ続くみたいですね。
間に休憩15分を挟んで3時間半。
あなたの街で「蛮幽鬼」。
いかがでしょうか。