突然のお知らせでした。
ビックリしました。
柳下大さん。
アタシが舞台のお芝居を初めて観に行って、その魅力に夢中になった舞台「真田十勇士」で猿飛佐助を演じた役者さん。
本日、芸能界を引退されました。
上川隆也さんが真田幸村を演じ、八百屋舞台と言う特殊な舞台で柳下さんは忍びの役として大活躍しました。
舞台の面白さ、その大きな魅力をアタシはこのお芝居に教えられました。
何度も足を運んで、幸村公と真田の忍び達「真田十勇士」の物語を心に刻みました。
柳下さんはとても重要な役でした。
このお芝居は史実とは違って、フィクションが入っており、それが最後に大きな衝撃と感動を呼ぶお話しでした。
何と言っても、上川幸村と率いる十勇士達がかっこよくてかっこよくて、お芝居は最後のちょっと前の場面からずっと拍手が鳴りやまず、役者が台詞を言っているのにも関わらず、観客は思いを伝えたくて拍手をやめられないんです。
その拍手で台詞が聞こえない程なのです。
2013年。もう、7年も前なんですね・・・。
今でもその会場の雰囲気をまざまざと思い出します。
役者と観客との震える程の空間でした。
観客が求める舞台であったので、再演はすぐに決まりました。2年後2015年。
初演と同じに大きな下り坂の様な傾斜のある八百屋舞台で、再び上川さん演じる幸村公と十勇士達の物語が繰り広げられました。
しかし、この再演で彼らと観客は大きな試練にぶつかってしまいます。
それは本番中の出来事でした。
猿飛佐助役の柳下さんが、この特殊な舞台から落ちてしまったのです。
中央に大きな波の様な形状で坂道の舞台が設置されていました。一番上はかなりの高さがありました。
その横に新たなセットがくっついて道となり、役者さん達はそこから中央の舞台に姿を現したり消えたりしていたのですが、どうやら大人数で戦う場面の途中その横のセットから転落してしまったようでした。
観客の目の前で起きた事故で、その日のtwitterは柳下さんを心配する声で溢れました。
再演が始まったばかりで公演はまだあるし、地方公演もありました。
どうなるんだろう、中止だろうか。
でも、公演は中止にはなりませんでした。
代役を立てる事もしませんでした。
柳下さんが怪我をした後の公演を観に行きましたが、彼は猿飛佐助として舞台に立っていました。
でも、構成はところどころ変更していて、アイデアを凝らしシンプルな中にもユーモアと忍びらしさを失わずにいられる形で佐助は忍びとして生きていました。
心配するのは仕方のない事なのですが、そういう客席の悲壮感みたいなものを吹き飛ばしてしまう様な明るい空気を幸村公を演ずる上川さんを始め、舞台の全員が全力で創り上げてくれていたんです。
不思議でした。
この真田十勇士と言うお話は、この「猿飛佐助」を全員が全力で守り通す物語なんです。
チームの結束力が物を言う物語です。
実際に起きたこととまるで同じ現象が物語とリンクして起きていました。
柳下さんは悔しかったと思います。
公演も始まったばかりでケガをしてしまった事を、悔やんでいたと思います。
でも、アタシは何も心配していませんでした。
それは初演を観ていたからです。
このチームならば、きっと乗り越えると言う強い気持ちがあったんです。
絶対に大丈夫と言う自信の様な気持ちがあったんです。
再演、真田十勇士は幸村公と十勇士にとって終焉の地、大阪で無事に大千秋楽を迎えました。
柳下さんも最後まで佐助として公演を演じ切り舞台を降りませんでしたし、物語と全く同じで十勇士達は彼を命をかけて守り抜きました。
結果、この舞台の「負けて、勝つ。」と言う大きなテーマを実際に全員でやってのけたのです。
この舞台の運命と宿命を思い出すと心が震えます。今でも鳥肌が立ちます。
でもその後、柳下さんが長い期間リハビリをしなくてはならなくて、とても苦しい時間を過ごしたと聞きました。
辛い時間であったと。
なので柳下さんが「ケガから復帰」と聞いた時にはとても嬉しかったです。
柳下さんのお知らせにはご結婚されたともありました。
おめでとう。
あなたならきっと明るくて素敵な家庭が築けると思います。
お芝居が上手くて、お芝居に真摯に向き合ってくれる宝物の様な役者さんが一人去ってしまうのは寂しいけれど、「他の事にもチャレンジしたい」と言うあなたの気持ちを一番大切にしたいです。
「この足元にある道だけがたった一つの道であるはずがない。違う道は必ずある。必ず。」
きっとそれは自分が自分らしくあるために、自分を守るためのもの。
今度はご家族を守るために、あなたはあなたでいて下さい。
演者として素敵な時間をくださってありがとう。
何よりも幸せになる事を祈っています。
でも、最後に言ってもいいかなぁ。
佐助、生きろ!!!!