ジェーンが処刑されると舞台にはロジャーとブラックバードの居るスペースを残して、大きな黒い幕が降りて来ました。
ロジャーはブラックバードの存在を認めると、独白の様に話しかけます。
もうジェーンは居なくなってしまったから、彼女の形見を燃やして来た、と。
ロジャーは大切な友人を失いましたが、絶望に打ちひしがれる事なく、彼女の死の意味を彼なりにつむぎだし観客に話してくれます。
ジェーンの死からメアリー、エリザベスと英国は女王が納めてゆく国になります。
「彼女の死は無駄ではなかった。この国の大きな土台となり得た。」とロジャーは言いました。
大英帝国の基礎となったのは、たった9日間女王の座についた16歳の女の子だったのです。
いつの間にか黒い幕があき、舞台にはキャサリンやエドワード、ジェーン、メアリー、エリザベスが姿を現します。
そしてそこへロジャーも加わり、あの、二人が初めて言葉を交わした時の場面が再現されます。
何だか本当にテレビなどで観る回想シーンの様に、その場面はもやががって見え、会話の声が響いているようにアタシには聞こえました。
くったくなく、汚れを知らない瞳で、興味のある話を夢中になって話すジェーン。
彼女がブラックバードの元へとゆきます。
ブラックバードが奏でる音は浮遊感のあるメロディーが多く、漂っては舞台と観客を包む感じがしていました。
でも、最後のこの場面では少し違っていました。
「わたしの声が聞こえる?」
ジェーンがブラックバードにこう、話しかけます。
一幕の場面の再現ではありますが、彼女が舞台上で発する一番最後の台詞です。
次の瞬間、ブラックバードがその問いかけに答えるように、今までとは違う現実味を帯びた旋律を奏で始めました。
”9days queen”のラストテーマ。
そしてそれは、全てをそばに居て見守り続けて来た”魂の友人”との最期の会話です。
優しく揺れて、それでいて迷う者の手を引いて導いてくれる様なメロディーの中に、ジェーンが居ました。
強く強く心に響く旋律に、遠く時空を超えてジェーン・グレイの声が聞こえるようで涙が出ました。
彼女の生きた証は、紛れもなく今ここにあるんだと感じます。
ブラックバードの歌う声で「灯火のしらゆり」と言う歌詞が耳に飛び込んで来ました。
ああ、しらゆりだったんだなぁと気付きました。
彼は、白いゆりの花をその腕に抱いていたんだなぁと。
例えば吹く風にその体を倒されそうになっても、しなやかに立っている川辺のススキや麦の穂の様に強い芯のあるジェーンの魂。
十代の女の子らしく若々しくキラキラと輝いて、その「魂」が全ての客席へと舞い降りて来ました。
悲劇であるがゆえ悲しい気持ちで終わるのではなく、観客には元気になって帰ってもらいたいと言う堀北さんの言う通りに、アタシはそのキラキラした”魂”を手にする事が出来ました。
ラストテーマが流れる中、ジェーンが立ち上がってブラックバードと観客の元を去ります。
また読書をしに自分の部屋へでも戻ってゆくように、背を向けて歩いて行く白いドレスの女の子の姿が忘れられません。
彼女はあまりにも正直に生きた人だったんですね。
「助かる道があったのにも関わらず、死を選んだ彼女の行動を安易には理解出来ない。演ずるためには理解していなければ舞台には立てない。」と仰っていた堀北さん。
十分に理解せず客前に出たとしてそれはまったくもって説得力に欠けるものであり、そんな姿を観客には見せられないと言う強いプロ意識を感じる彼女の言葉でした。
共演者の方達が口々に「物語に真摯に向き合っている」「揺るがない」と言わせしめた堀北さんの姿勢は、そのままジェーン・グレイの生き様と重なって行ったんだなぁと思います。
多くの人々がレディ・ジェーン・グレイの最期は立派であったと伝えていて、9日間だけ女王様だった女の子の話は今でも生き残り、本やお芝居になって沢山の観客を魅了します。
物語の強さは何物にも変えがたい。
しかし、それ以上にジェーンの強い「魂」が今もなお生き続け、アタシ達観客の元へとこの演者の皆さんを介して届いた事に感謝したいです。
いつかのカーテンコールで、青葉市子さんが床に落ちた黒い羽を拾いあげて堀北さんに渡しました。
全員ではける時、今度はその羽を堀北さんが上川さんに渡しました。ニッコリと優しい笑顔を見せながらそれを受け取った上川さん。
いつか共演したテレビドラマでも上川さんは堀北さんにとって”先生”であり、秘密を共有する特別な相手同士でしたね。
良いチームワークで駆け抜けた”9days queen”の公演の日々、本当にお疲れ様でした。
9日間女王だった16歳の女の子の魂の物語を教えてくださり、ありがとうございました。
この物語に出会えて良かった。
ちなみにイギリスへ行った事のあるアタシですが、ロンドン塔へは行っていません。
血生臭い場所だし、なんとなく行く気にはなれなくて。
でも、今度訪れる機会があったら、是非ロンドン塔へ行きたいです。
そして、ゆっくりと汚れ無き命でこの世を去ったジェーン・グレイの事を考えてみたいと思います。
完。
ロジャーはブラックバードの存在を認めると、独白の様に話しかけます。
もうジェーンは居なくなってしまったから、彼女の形見を燃やして来た、と。
ロジャーは大切な友人を失いましたが、絶望に打ちひしがれる事なく、彼女の死の意味を彼なりにつむぎだし観客に話してくれます。
ジェーンの死からメアリー、エリザベスと英国は女王が納めてゆく国になります。
「彼女の死は無駄ではなかった。この国の大きな土台となり得た。」とロジャーは言いました。
大英帝国の基礎となったのは、たった9日間女王の座についた16歳の女の子だったのです。
いつの間にか黒い幕があき、舞台にはキャサリンやエドワード、ジェーン、メアリー、エリザベスが姿を現します。
そしてそこへロジャーも加わり、あの、二人が初めて言葉を交わした時の場面が再現されます。
何だか本当にテレビなどで観る回想シーンの様に、その場面はもやががって見え、会話の声が響いているようにアタシには聞こえました。
くったくなく、汚れを知らない瞳で、興味のある話を夢中になって話すジェーン。
彼女がブラックバードの元へとゆきます。
ブラックバードが奏でる音は浮遊感のあるメロディーが多く、漂っては舞台と観客を包む感じがしていました。
でも、最後のこの場面では少し違っていました。
「わたしの声が聞こえる?」
ジェーンがブラックバードにこう、話しかけます。
一幕の場面の再現ではありますが、彼女が舞台上で発する一番最後の台詞です。
次の瞬間、ブラックバードがその問いかけに答えるように、今までとは違う現実味を帯びた旋律を奏で始めました。
”9days queen”のラストテーマ。
そしてそれは、全てをそばに居て見守り続けて来た”魂の友人”との最期の会話です。
優しく揺れて、それでいて迷う者の手を引いて導いてくれる様なメロディーの中に、ジェーンが居ました。
強く強く心に響く旋律に、遠く時空を超えてジェーン・グレイの声が聞こえるようで涙が出ました。
彼女の生きた証は、紛れもなく今ここにあるんだと感じます。
ブラックバードの歌う声で「灯火のしらゆり」と言う歌詞が耳に飛び込んで来ました。
ああ、しらゆりだったんだなぁと気付きました。
彼は、白いゆりの花をその腕に抱いていたんだなぁと。
例えば吹く風にその体を倒されそうになっても、しなやかに立っている川辺のススキや麦の穂の様に強い芯のあるジェーンの魂。
十代の女の子らしく若々しくキラキラと輝いて、その「魂」が全ての客席へと舞い降りて来ました。
悲劇であるがゆえ悲しい気持ちで終わるのではなく、観客には元気になって帰ってもらいたいと言う堀北さんの言う通りに、アタシはそのキラキラした”魂”を手にする事が出来ました。
ラストテーマが流れる中、ジェーンが立ち上がってブラックバードと観客の元を去ります。
また読書をしに自分の部屋へでも戻ってゆくように、背を向けて歩いて行く白いドレスの女の子の姿が忘れられません。
彼女はあまりにも正直に生きた人だったんですね。
「助かる道があったのにも関わらず、死を選んだ彼女の行動を安易には理解出来ない。演ずるためには理解していなければ舞台には立てない。」と仰っていた堀北さん。
十分に理解せず客前に出たとしてそれはまったくもって説得力に欠けるものであり、そんな姿を観客には見せられないと言う強いプロ意識を感じる彼女の言葉でした。
共演者の方達が口々に「物語に真摯に向き合っている」「揺るがない」と言わせしめた堀北さんの姿勢は、そのままジェーン・グレイの生き様と重なって行ったんだなぁと思います。
多くの人々がレディ・ジェーン・グレイの最期は立派であったと伝えていて、9日間だけ女王様だった女の子の話は今でも生き残り、本やお芝居になって沢山の観客を魅了します。
物語の強さは何物にも変えがたい。
しかし、それ以上にジェーンの強い「魂」が今もなお生き続け、アタシ達観客の元へとこの演者の皆さんを介して届いた事に感謝したいです。
いつかのカーテンコールで、青葉市子さんが床に落ちた黒い羽を拾いあげて堀北さんに渡しました。
全員ではける時、今度はその羽を堀北さんが上川さんに渡しました。ニッコリと優しい笑顔を見せながらそれを受け取った上川さん。
いつか共演したテレビドラマでも上川さんは堀北さんにとって”先生”であり、秘密を共有する特別な相手同士でしたね。
良いチームワークで駆け抜けた”9days queen”の公演の日々、本当にお疲れ様でした。
9日間女王だった16歳の女の子の魂の物語を教えてくださり、ありがとうございました。
この物語に出会えて良かった。
ちなみにイギリスへ行った事のあるアタシですが、ロンドン塔へは行っていません。
血生臭い場所だし、なんとなく行く気にはなれなくて。
でも、今度訪れる機会があったら、是非ロンドン塔へ行きたいです。
そして、ゆっくりと汚れ無き命でこの世を去ったジェーン・グレイの事を考えてみたいと思います。
完。