狐のレリーフが闇から浮かびあがり、その大きな扉が開くとそこには針の山の様な玉座に座った我らが二人の女王の姿があった。
一切の姿を消し、封印してきた年月を私たちは耐えて待った。
世の中はこの数年で変わった。変わってしまった。
抑圧され、様々な考えがぶつかり合い、陰惨で残酷な言葉が飛び交い、痛みも苛立ちもまき散らしあい、目には見えない暴力で攻撃し合った。
目も当てられない。
自分が自分でいられるためには?
そもそも自分とは一体どんな人間だった?
はたして、自分は本当に「まとも」であったのか?
皆、一様に毎日こんな事の連続で疲れていた。
待ち焦がれたこの日、この瞬間。
壮大で荘厳な玉座。
針の山の様に見えたのは、剣を持ち空に掲げた無数の腕だった。
女王の出現に絞り出す様な、低い地鳴りの様な声を上げる人々。
顔色一つ変えず、その声に耳を傾け透き通る様な眼差しでまっすぐ前を見据えているMOAMETALを見た時、心が震え涙が流れた。
玉座に座ったままSU-METALが静かに、しかし確実に歌い出した時も私は泣いた。
その歌声は天空から優しく降る浄化の雨の様でいて、体中に染み渡る。
そして私達は自分で思うよりもずっと傷つき疲れて、自分が思うよりもずっと長い間この瞬間を待っていた事に気付かされた。
玉座の無数の腕は剣を持ち、勝鬨を上げている腕の様にも見えて、私はSU-METALとMOAMETAL、いや関わる全ての人々が「新たな旅立ちのために闘いの準備をせよ。」と言っている様に思えた。
我らが二人の女王が帰還した。
もはや疲れてはいられない日々の始まりだ。