171217 防衛と報道 <防衛装備 米の「言い値」・・>と<社説 MXテレビにBPO意見書・・>などを読んで
北朝鮮の挑発行動に対する米政権の陽動対応を日本政府の頭越しで続く状況は一向に収まる気配がありませんね。
この間、安倍政権に対する20代、30代の支持は高まる一方のようですね。その理由は、アベノミクスに対するものでしょうか、あるいは防衛力強化やトランプ政権に追随する姿勢でしょうか。少なくとも若い世代への人気を勝ち得ていることは確かなようです。
その理由を詮索するのも意味があるかもしれませんが、今朝の毎日記事は第2次安倍政権になって防衛関係費がうなぎ登りに上昇していることをグラフで示しています。
しかも費用はアメリカの言い値通りといった驚くべき内容です。岸達也、前谷宏両記者による<防衛装備米の「言い値」 第2次安倍政権で急増>と文字通りのタイトルです。
トランプ大統領は、何よりも「アメリカファースト」一点張りですね。当然、北朝鮮の脅威が大変と言えば言うほど、自国の軍備予算を増強するだけでなく、わが国にはアメリカの防衛装備の購入をプッシュするのは当然の流れですね。
<「大統領は米朝の緊張関係を利用して自国の軍需産業を後押ししている」>という<英国の軍事雑誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー」東京特派員の高橋浩祐さん>の話しは当然の指摘でしょう。
北朝鮮の脅威は、日本のアメリカ軍需産業からの防衛装備購入を増大することになり、マスコミの取材では、北朝鮮への不安からこれを支持する若い世代が多いように思えます。
そして<米軍需関連大手4社の株価も上昇基調だ。>軒並み30%前後の上昇で、とりわけオスプレイの製造にかかわるボーイング社の株価は年初比87%上昇で、笑いが止まらないでしょうね。アメリカの驚異的な株高の一因もこのような軍事的緊張が煽られている結果ではないでしょうか。
その意味では、北朝鮮との対立激化は、トランプ政権はもとよりウォール街もうれしい悲鳴なのでしょうか?そこまではいえないとしても、現実の株式市場の史上最高値を続ける株高を引っ張っている原因は他にあるのでしょうかね。
わが国の防衛関係費について次のような傾向を記事は指摘しています。
<毎年度の防衛関係費の総額と装備の調達方法を調べると、第2次安倍政権以降に変化が起きている。それ以前の2008~12年度の防衛関係費は年4兆7000億円台で横ばいだった。安倍首相が政権を奪還した13年度以降は右肩上がりに転じ、毎年度0.8%(400億円)~2.8%(1310億円)の範囲で増え続ける。
調達方法の変化はもっと顕著だ。第2次安倍政権以降の5年間で米政府から装備を購入する「対外有償軍事援助(FMS)」を利用した総額が、それ以前の5年間の総額に比べ約4.5倍に膨らんでいる。>
このFMSは問題が多く指摘されていますね。
<FMSは米政府が武器輸出管理法に基づき、米企業の兵器を同盟国や友好国に売る事業で、日本は1956年度からFMS調達を実施している。最新鋭の装備を調達しやすい半面、米国に有利な条件を一方的にのまされ、価格設定も米政府主導で交渉の余地がないとされる。>
会計検査院もたびたび問題を指摘していますが、改善されていないように見えます。
そのような巨額の費用を投じるだけの効果についても疑問の声が上がっていますね。安倍首相は、<「(FMSは)普通の契約と違い、売り手が非常に有利との見方もできるが、安全保障環境が厳しい中、我が国の安全に必要だ」>と答えるものの、ほんとに費用に見合った効果があるのか、いやそのような必要性があるのかも十分検討されていないように思えるのですが。脅威論が先に立って、防衛とは、効果的な防衛とは何かについての議論が十分とは言えないように思えるのです。
とりわけアメリカ政権への依存性はいかがなものかです。それは防衛装備というアメリカ軍需産業だけの問題ではありません。米軍の最近の不祥事は目に余るように思います。
この点、直接関係はありませんが、本日社説<MXテレビにBPO意見書 放送業界の大きな汚点だ>に注目しています。
元々は「ニュース女子」という番組で放送された内容が問題となった事件です。「ニュース女子」といってもこの件で初めて知った番組ですが、若い世代がニュースを見ないという風潮の中でその世代向けに番組作りをしているのでしょうか。
さて社説は<沖縄の基地反対運動の番組を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)に、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が重大な放送倫理違反を指摘する意見書を公表した。
MXは、番組内容の問題を事前にチェック(考査)できなかったことを深刻に受け止める必要がある。>と厳しく同業?他社の報道のあり方を追求しています。
具体的な内容は<検証委は沖縄で現地調査し、基地反対派が救急車を妨害したとの放送は、事実が確認できないと述べた。反対派が活動の日当をもらっているのではないかとの放送も、裏付けられたとは言い難いと指摘した。
検証委が重視したのはMXが考査で問題を発見できなかったことだ。>
MXの対応は制作段階はもちろん、問題が発覚した後もとても自立的な放送主体とは思えない態度であったと非難されてもやむを得ないと思います。
<MXは抗議活動を行う側に取材しなかったことを問題とせず、番組の完成版をチェックしていなかった。多様な論点を示す以前に必要な事実確認を怠った責任は重大である。
今でこそ再発防止を打ち出しているが、MXは問題を指摘された当初「捏造(ねつぞう)、虚偽は認められない」と、問題視しない見解を出していた。
検証委は意見書の中で、考査を要の仕組みと位置づけ、それが崩れたことに危機感を募らせた。>
数日前の記事<BPO倫理委「東京MX、重大な違反」 ニュース女子、沖縄基地番組 裏付け確認せず>は、内容がより詳細に掲載されており、問題点がよくわかります。
屋代尚則記者は<対象となったのは1月2日放送の「ニュース女子」。沖縄県の米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設に対する抗議活動を「過激派デモの武闘派集団」と表現したほか、抗議活動で救急車が止められたなどと伝え、放送後に「事実関係が誤っている」と批判が出ていた。検証委は2月に審議入りを決めた。>としています。
このスポンサーと制作会社についても言及があります。<「ニュース女子」は、スポンサーの化粧品会社「DHC」が番組枠を買い取り、子会社の制作会社「DHCシアター」(現DHCテレビジョン)などが制作した番組を放送してもらう「持ち込み番組」。>
この制作会社の対応がまたすごいですね。<DHCテレビジョンは以前から、公式サイトで「数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を(取材で)聞く必要はないと考える」「今後も誹謗(ひぼう)中傷に屈すること無く、日本の自由な言論空間を守るため、良質な番組を製作していく」などの見解を公表。同社は14日の取材に「見解に変わりはない」と答えた。>これは偏見以外の何もでもないように思うのですが、表現の自由といっても、放送倫理に反するでしょう。
米軍の沖縄への基地配備や、その防衛体制を盲従するかのような態度ではないかと思うのですが、これは毎日記事によるので、同社の見解を聞かないと公平ではないですね。
しかし、バラエティ番組の中で放送するからといって、検証委が指摘するように、裏付けもなく一方的な見方で放送するような番組制作のあり方は、なにやら安倍政権の米軍への一方的依存性に同調するようで、気味が悪いくらいです。民放といえども事実を曲げるような放送は許されないですね。
直接関係のない、防衛装備の米の言い値の話しと、基地反対運動に対する偏見報道にはなにか通じるものを感じるのは、うがった見方になるのでしょうか、そうでないことを祈ります。
今日はこの辺でおしまい。また明日。