たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

漁業の担い手像 <森健の現代をみる 被災地の漁業の現状>を読みながら

2019-02-23 | 海・魚介類・漁業

190223 漁業の担い手像 <森健の現代をみる 被災地の漁業の現状>を読みながら

 

たまたまBBCのウェブサイトを見ていたら、REELという項目で?<How to get more time in your day>という動画が配信されていました。リスニング力の劣る私としては、ほどほどのスピードで話すのと、英文字幕(これはTVソフトの関係かもしれません)があるためフォローしやすく、これはなかなかいいとつい紹介することにしました。

 

上記テーマもなかなかウィットに富んだ内容で、現代人を不思議の国のアリスにでてくる忙しく駆け回るウサギのようとまず出だしから興味深いです。終日、ネットやSNSなどの通信手段を駆使し、電話で話す時間も惜し多忙で悩むことも忘れる状況を揶揄しながら?ぼっとして何も考えないでいる時間をもつことを提案しています。UKEU離脱を目前にしてカオス的状態ですが、その中で国民個々もそれどころではない状態なのでしょうか。成熟した社会であり、個人とも言われてきたように思うのですが、どんなもんでしょう。

 

それは別の見方もあるでしょうから、ここでは議論しませんが、このREELではさまざまなたくさんのテーマを無料配信していて、これはなかなかいいですね。さすがBBCと思う次第です。

 

さて本日のテーマは、漁業の担い手、漁業者、漁協を考えてみようかと思うのです。第一次産業といわれる、いずれも(協同)組合が法律でつくられています(農業協同組合法、水産業協同組合法、森林組合法)。漁業では漁協ですが、農業だと農協、林業だと森林組合です。しかしながら、名前は似通っていて、法律上の組織や構成員も大筋同様の仕立てに見えますが、いずれも似て非なるものかなと思うほど違っているように感じています。

 

ざくっといえば、漁協は漁業者だけを構成員に絞り、主に漁業管理に集中し、農協は農業者に限らずむしろ多くの一般人を受け入れ信用・共済事業を含む綜合事業体となっていて、他方で森林組合は森林所有者者等を組合員としていますが、実際に林業を担う組合員比率がかなり低い状態で、森林管理を担う権限もなければ担うだけの力量があるところは希でしょうか。

 

余談が長くなりました。毎日の朝刊記事<森健の現代をみる被災地の漁業の現状 今回のゲスト 濱田武士さん>では、<日本の漁業は高齢化と資源減少などで危機に直面してきた。さらに東日本大震災により被災地の漁業は大きな被害を受けた。どこまで復興したのか。課題は何か。震災直後から被災者を取材している森健さんが、被災地の漁業に精通する濱田武士・北海学園大(札幌市)教授と議論した。【構成・栗原俊雄、撮影・宮本明登】>と大災害に襲われた地域での漁業の復興如何を取り上げています。

 

<国は、基本的には農林漁業を税金がとれる産業に育てたい。だから漁業の近代化政策を進めるとともに、漁業経営を従来の個人事業型から企業型に転換するよう誘導してきました。>

 

そこでは、国の姿勢が問われています。震災前から始まり、震災後は顕著になった漁業の生産性向上という名の企業経営化です。これは昨今の法改正や新法で見られる経営管理の強化策と一次産業共通のテーマかもしれません。

 

原発被害のあった福島の漁場では今なお厳しい状態であることはよく指摘されているところですが、それ以外の地域について、国のハード面での施策が紹介されています。

 

<ハード面、漁港などはそうですね。漁業も、水産加工も、港と市場が使えなければ事業が成り立ちません。水産都市経済の拠点です。復興で第一にやるべきはそこの再開でした。特に水産加工業者は、再開が遅れるだけ売り先を失いますから。岩手県は「市場を核に復興」を方針とし、順当に市場と漁港区の復旧をまず進めました>と。

 

他方で、<宮城県は水産業復興特区や漁港集約化を復興の目玉にしたため復旧の出足が遅く、混乱しました。><漁協と宮城県知事の対立になり、メディアのネタになりました。その中で漁業権が漁協に優先的に付与されていること、それが企業の参入障壁になっていることなどが批判的に報じられました。「みんなの海を漁協が占拠している」といったように。>

 

この記事を読んで、あの場面が思い出されました。当時、復興担当相に就任したばかりの松本 龍氏が岩手県知事、宮城県知事と続けて会談したときの発言が問題になり、彼は辞任しましたね。そのときのとくに宮城県知事に対する発言が放映されたのを見て驚きました。とくに<「お客さんが来る時は、自分が入ってからお客さんを呼べ。」>とか。そのときはひどいと思いつつ、漁協との対立、その声を無視したような知事の対応を問題にした発言はなぜかあまり問題にされなかったように思うのです。

 

上記と同じウィキペディアの<松本龍>では<「県でコンセンサスを得ろよ。そうしないと、我々は何もしないぞ。ちゃんとやれ。」(被災した漁港を集約するという県独自の計画に対して)>という点は、松本氏がきちんと地元漁業の聞き取りをしていて県の対応に問題があること、それに強い憤怒の気持ちがあったのではないかとも思われるのです。

 

松本氏は、全国を率いた祖父の意思を継いで差別された人たちへの強い気持ちがあって政治家として活動してきたように思えますし、前年の環境大臣の時は名古屋市で開催された第10回生物多様性条約締約国会議では、議長として見事に立ち回り、名古屋議定書の採択を成し遂げており、当時TVでの発言などなかなかと思っていましたので、被災知事に対する発言には違和感を抱きつつも、漁業者への熱い思いの表れであったようにも思った記憶です

 

特区構想に反対する漁協について、性悪説が広がったのですかね、松本氏もその仲間とみられたのでしょうか。

 

この点、ゲストの濱田武士氏は、<漁協は漁民が出資し、運営する法人組織です。漁民と別物と認識されて、漁協が中間搾取団体であるかのような誤解があります。他の業界同様の問題を抱える組合もありますが、全体としては漁村が健全に維持、発展するための組織です。>と漁協が担ってきた役割を高く評価しています。

 

私は以前、いくつかの漁協を相手に交渉したことがありますが(実際は漁協の代理人弁護士ですけど)、すべての漁協が適切な漁業管理を行っているとは限らないとの思いがあります。といって、濱田氏の見解に一般論としては異論ありません。私の友人というか昔の勉強仲間で長く漁業権問題に携わってきたある教授は国との関係ではとくに濱田氏と同じような考えをしっかりもっていますね。

 

漁業も構成員である漁民がしっかりすれば、いい組織になれると思うのです。その意味で、濱田氏が最後に<エネルギッシュな若い人たちがにょきにょき出てきました。全国の過疎地で新しい人たちのうねりが出てきた気がします。それは大震災がきっかけになったのかな、とも思います。ただそういう人たちだって万事うまくいかない。ぜひ、そのエネルギーを我々の社会が吸収し、また政策的に支える仕組みが必要ですね。>というのは、期待できますし、どのような制度設計を考えているのか聞いてみたいですね。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。


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