たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

太陽光発電と環境保全 <橋本市の太陽光発電条例成立、来月施行へ>などを読みながら

2018-12-18 | 原子力・エネルギー・地球環境

181218 太陽光発電と環境保全 <橋本市の太陽光発電条例成立、来月施行へ>などを読みながら

 

週末は時折、山間部を一時間くらいドライブすることがあります。また和歌山にもたまに車で出かけます。そんなとき普段は山岳景観や河川景観を楽しむのですが、違和感を感じるものが少し増えてきたと思っていました。太陽光発電設備です。といっても大がかりなのは滅多に見たことがないので、小規模なものがほとんどです。たいていはあっという間に通り過ごしますので、さほどの感慨もわきませんが、日常的に接している近所の人だと違うかもしれません。

 

昨日の毎日ウェブ記事<和歌る?紀になる!橋本市の太陽光発電条例成立、来月施行へ 住民説明と届け出義務化 /和歌山>で、橋本市にも新条例ができ来月から施行される見込みとのことです。

 

新条例の背景や今後の動向について、<発電設備の普及に伴って周辺の生活環境や景観への影響、災害発生が懸念されることから、一定規模の設備の設置について事業者に近隣住民への説明や市への届け出を義務付けた。条例化による今後の設置動向が注目される。【松野和生】>とのこと。

 

橋本市条例<橋本市太陽光発電設備設置条例は、和歌山県条例でカバーされない小規模なものを対象としています。<今年6月に施行された太陽光発電設備の設置に関する県条例は発電出力50キロワット以上が対象で、市条例は50キロワット未満。>

 

和歌山県条例<和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例>だと、事業計画の認定制度となっていて、認定基準を定めているなど規制的手法に近い内容となっています。これに対し、橋本市条例<橋本市太陽光発電設備設置条例>だと、届出制ですので、行政指導手法でしょうか。といいながら、県の認定基準も、基本的に森林法や宅造法などの規制を根拠としており、まあそれ以上に特別な規制をかけるということではないように思えます。

 

それでも手続として、県条例では、自治体との協議、関係自治会への説明、事業計画の公表、その上で県へ認定申請して一連の手続を経て、県が認定か不認定かを決定し、認定されて初めて工事着手できるということで、事業者にとっては相当手続負担が大きくなるでしょう。

 

よく問題になる一つとして、32項で、事業廃止後の廃棄物処理の適正さの確保について、県条例では事業計画の中に次の事項を定めることとされています。

<太陽光発電事業の廃止の方法に関し次に掲げる事項

ア 廃止予定日

イ 太陽光発電設備の解体及び撤去に関する工事の内容

ウ イの工事に伴い生じる廃棄物の処理方法

エ 太陽光発電設備の撤去後の土地の整備方針

オ イの工事、ウの処理及びエの整備に要する費用の見積り

カ オの費用を確保するために講ずる措置>

 

むろん元の環境の改変自体がどのような影響を及ぼすかが重要ですが、環境アセスメントの義務づけまでは求めてなく、簡易な環境調査を求める程度で終わっているようです。その内容に問題があったときにどう対応するのか気になるところです。私の記憶ではカナダの環境アセスメント制度では、すべての環境影響行為について簡易なアセス報告をさせ、問題があれば本来的な環境アセスメント手続に入るといった、2段階制に近かったように思うのですが、わが国では環境アセスメント制度も十分なものとはいえない中、それすら実施されない事業がほとんどですね。

 

ところで、記事では住民の懸念を取り上げて、<市内では南向きで日照条件の良い急斜面の高台で立木が多数伐採された例がある。近くには発電パネルが一部設置され、拡張の意図がうかがえる。住民によると今年6月中ごろに突然作業が始まり、伐採した木も搬出された。立木は住宅地を囲む形で強風を防ぐ役割も果たしており、台風の際は周辺の住宅に屋根瓦が飛ぶなどの被害が発生した。現在、工事は行われていないが、住民の一人は「山肌が崩れ落ちる恐れもある。パネルが完成すれば強風で飛ばされないか」と懸念する。>

 

しかし、このような住民の懸念に対し、現行法はもちろん、県条例、橋本市条例も適切に対応できる内容となっていません。伐採規制も森林法の規制対象地でしかも規制対象行為で初めて可能になりますから、条例でなんらかの規制を加えると、それこそ法令違反とか、財産権侵害と言った批判に晒されますから、自治体行政の法令担当者は二の足を踏みます。

 

むろん災害発生のおそれが認められれば、県条例で認定に当たって厳しい対応ができる可能性がありますが、現行の森林法や宅造法などの土地利用規制基準以上に、新たな規制となるような指導、勧告も難しいでしょうね。

 

条例によって、必要性と合理性があれば、法律にない規制が可能という立場に立てば別ですが、厚い壁ですね。それでも各地の自治体は地域の特殊性や法律の隙間をついて、頑張ってきたと思います。和歌山県、橋本市にもそういう運用を期待したいところです。

 

他方で、太陽光発電の普及は再生エネルギー普及の重要な柱ですので、さらなる促進を期待したいところです。しかし、これまであまりに無軌道に計画され、開発されてきた面も否定できないところですので、このような自治体行政の動きに的確に対応してもらいたいものです。

 

ところで、自治体の太陽光発電対応を見ていたら、和歌山市の<太陽光発電設備等の設置に関する景観ガイドライン>というのがありました。しかも和歌山市は市全域が景観計画区域になっていて、太陽光発電設備については、<高さ13mを超える場合又は築造面積が1,000㎡を超える>ものが届出対象となっています。

 

<景観形成基準>は基準としては抽象的すぎますが、図で明示されている内容だと、これは具体的で、配置では北斜面がダメとか、地域の景観資源に近接してはダメとか、形態意匠・色彩も低反射性のものとか、緑化など、相当使えるものかと思います。英国やドイツなど西欧の具体的な景観基準に少し近づいた印象ですし、わが国の環境アセスメントの景観アセスメント指針を彷彿させる内容で、この基準は是非普及してもらいたいと思うのです。

 

太陽光パネルの規模が合計面積で10ha以上(景観重点地区だと1ha以上)だと、さらに配置規模など厳しくなっています。

 

橋本市議会は<太陽光発電事業の規制に関する意見書>を衆参両院議長、内閣総理大臣、経済産業大臣に提出していますが、これは橋本市だけでなく、少なくない市町村や都道府県(東京都は?)が賛同しているのではないかと思われます。

なお、<地方公共団体の太陽光発電施設に係る対応状況環境省>では、各自治体のおおまかな動きがわかります。


 

こういった姿勢で新たな太陽光発電事業、既存の事業に対処してもらいたいものです。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。

 


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