170529 人と物の後始末 <そこが聞きたい 空き家問題 東洋大教授・野澤千絵氏>を読みながら
昨夜は深夜に首の痛みで目覚め、しばらく寝られませんでした。起きてもなかなか痛みがとれず、頸椎症が再発したかと思っていたら、少しずつ痛みが軽くなり、痛み止めでだいたい収まりました。高齢者の一人になり、あちこち不調が生じるのはやむを得ないので、うまくつきあうよう心したいと思う次第です。
今日はその痛みばかりが気になって、仕事はさほど忙しくなかったのですが、来客対応が終わったらもう7時30分になっていて、帰宅時間です。ブログのために1時間延長して頑張るしかありません。
で、とっさに目についたのが<風知草国連特別報告者って?=山田孝男>の記事です。山田氏にしてはめずらしく論調がわかりにくく思い、それはなぜかを整理しようと思ったのです。ケナタッチの報告と海渡弁護士の意見陳述との関連性を整理したいと思ったのですが、それぞれの原文を見つけるのに時間がかかりそうなので、やめにしました。海渡さんは昔からの知り合いですが、論理的で雄弁であり攻撃的に見える部分もありますが、どちらかというと人好きのする面白くて柔軟な考え方もできる有能な弁護士の一人でしょう。いつか共謀罪や原発について彼の議論を整理したいとは思いますが、いつになるか。
さて、今日のお題として選んだ<そこが聞きたい空き家問題 東洋大教授・野澤千絵氏>は、どちらかというと、前口上的な部分になるかもしれません。とはいえ野澤氏が指摘している空き家の数字は驚異的なものであり、本論とも関わってきます。
記事によると<全国に約820万戸の空き家があり、街中に広がるスポンジの穴のように空き家が増える「都市のスポンジ化」が進んでいる。野村総合研究所の予測=1=によると、2033年には3戸に1戸が空き家になる計算だ。>
野澤氏は<住宅に65歳以上の高齢者だけが住んでいる場合を「空き家予備軍」と定義して、持ち家の割合が高い戸建て住宅を対象に全国の状況を調べてみると、空き家予備軍は約720万戸もあります。将来、予備軍の住宅が相続された際、適切な管理や賃貸への変更、中古住宅としての売却などがきちんと実施されないと、大半が空き家になるのではないかと懸念しています。>と指摘します。
高齢者だけの住宅は「空き家予備軍」ということのようです。たしかに相続で継承するケースはどんどん少なくなっているかもしれません。以前は、自宅敷地が広くて宅地分割して相続することで、一応の相続継承がなされたこともあったでしょうが、それだけの不動産を所有している人も少なくなったでしょう。宅地分割自体は、わが国特有の制度ですが、近隣との間で景観・環境問題となり、それが少なくなることは住環境保全の面では悪いことではないのですが。
ただ、相続を契機に空き家問題が現実化するのは、子供が自分の住処を所有あるいは賃借でも、別の場所に置いていることも要因ではないかと思うのです。新たな働き場所、学校などがあると、それが両親の住む実家と離れていれば、簡単に実家に住むということにはならないでしょう。
野澤氏は<予備軍の住宅が相続された際、適切な管理や賃貸への変更、中古住宅としての売却などがきちんと実施されないと、大半が空き家になるのではないかと懸念しています。>と述べ、結局、<中古住宅の市場流通>の改善を求めているようです。
たしかにわが国の中古住宅については売却・賃貸いずれも整備されていないと思います。ただ、それにはいくつかの理由が複合的になっているのではないでしょうか。そもそも住宅所有者が所有者として適切なメンテナンスを行っていないケースが多いと思います。私はカナダなど海外で暮らしましたが、多くの人が中古住宅を大事に利用し、さらに売却して、よりいい中古住宅に移ることを意識しているように思えるのです。その一例が住宅には名前の書いた表札がなく、ナンバープレートだけですね。終の棲家とは考えないのです。その代わり、毎日家の外、中の手入れを欠かさない人が多いと思うのです。
中古市場にとって重要な役割を果たすリフォーム事業については、最近はかなり品質の安定やバラエティーさなども含め強化されてきたと思いますが、それでも全国的な普及という面ではもっと頑張ってほしいですし、それが価格に反映するような工夫も必要かと思います。住宅は個性的です。とはいえ自分勝手な個性がまかり通るばかりでは、中古市場の格付けも合理的な評価が生まれにくくなるでしょう。
都市経営の観点からの対策について、都市計画法の改正に触れて、線引きの緩和運用を問題にしていますが、それはある意味では鶏か卵の問題かもしれません。北米では各自治体が独自のゾーニング制をしいて、一定の区画された地域以外での開発を禁止し、またゾーニングの種類は日本のように12種類といた大ざっぱ仕分けではなく(ないに等しい)、100とか場合によって数百、それを優に超える詳細ゾーニングを市民が支持しています。自由勝手に低層住宅街に高層マンション(地下室型)が立地するようなことは絶対に不可能なのです。
わが国では、まともに都市計画が住民みずからの意思決定で成立していると思っている人は何人くらいいるのでしょうか。官僚を別にすれば、都市計画法の手続きを踏んだ程度で、住民参加がなされ、住民の意思が反映してできあがっているとは思わないでしょう。自分たちが住んでいる住宅に、どのような建物がどのような配置で立つかわかっている人が何人いるでしょうか。まして都市計画図を見ている人が何人いるか、ましてその内容を正確にわかっている人がどのくらいいるでしょうか。そのうえで、線引きを緩和して調整区域に住宅開発をといった問題に切り込むことは結構なことだとは思います。
分譲マンショの建て替えについては、規制緩和策を講じていますが、これまでの建築方式からすると、都市計画の規制強化もあり、現実的な建て替えは超えがたいほどの壁になるでしょうね。それでも業者の広告宣伝、さまざまなリスクをかかえているにもかかわらず、高層マンションなどマンションの増加は税の優遇策もあり、止まらないでしょう。
<国は郊外に無秩序に市街地が広がることを抑制し、公共施設や病院などの都市機能や居住機能を拠点に集約させる「コンパクトシティー」=2=の構想>や<「規制緩和によって市街化調整区域で宅地開発が可能となる新築分」について、各自治体が住宅の総量抑制を行う}ことが有効な策のように指摘されていますが、ほんとにそうでしょうか。
コンパクトシティ構想は遅くとも2000年代には政府が主張していましたが、ほとんどまともな成果を得られていないのではないでしょうか。総量規制策が、実際に制度化して実現できるのでしょうか。貸し金規制のようにうまくいかない理由はなにかそこにメスを入れる必要があると思います。
空き家が、そして空き家予備軍が、膨大な数になっていくという潜在的な脅威は、かれらマンションを求める住民・業者には自分の問題として映りにくいのかもしれません。
空き家問題については、次の解説がわかりやすいと思います。
空き家対策特別措置法(空き家法)を分かりやすく解説
http://www.tochikatsuyou.net/column/akiya-hou/
家の解体費用の相場と見積もりの事例(木造・軽量鉄骨他)
http://www.tochikatsuyou.net/vacant/kaitai-hiyou/
空き家を手にしたらどうするか?そのリスク・費用・方法について
http://www.tochikatsuyou.net/vacant/dousuru/
で、これまでが前口上で、本論は<自分らしく、老後の整理 作家・群ようこさんに聞く>の記事を思い出し、老後の整理で、一番大事なものは、残された人への配慮だと思いますが、次にものとして考えておくべき重要なのはまさに不動産ではないでしょうか。
群ようこ氏のものの断捨離についての指摘は老後とはいわず、日々心すべき事柄ではないかと思います。人は生まれた瞬間、確実に避けられないのは死です。常に死を意識して生きる必要がありませんが、ものの整理は美しく生きるためには欠かせないことではないかと思うのです。なにが美しいか、それが問題ですね。それはまた別の機会に。
で、ものの後始末で一番重要なのは自宅や不動産の処理です。どうするか、それは誰かに相続させるといった不動産所有権の帰属といった形ではありません。むろんこれは基本的に重要ですから、このことに悩み続ける人を何人も見てきました。中には公正証書遺言を3回わずかの間に書き換えした人もいました。しかし、私がいま問題にするのは、その自宅なり、不動産をどのように活用するのがよいのか、適切なのか、その担い手は誰か、そういったことを真剣に考えていくことこそ、所有者としての最後のつとめではないかと思うのです。
相続人の誰かに相続させればよいとかではありません。不動産は個人の私有財産の場合、自分が自由に処分できますが、その存在は社会的な関係において成立しています。まずは社会的な意味ある存在として適切な管理を行うことが求められているのではないでしょうか。
私が居住する分譲地では、ほとんどの住宅では塀などに花を植えたり、飾っています。ガーデン住宅とまでいうといいすぎですが、通りを歩いていて気分よく過ごせることを皆さんが努力して行っているように思うのです。それは住宅ではもちろんのこと、田畑や山林でも同じです。そういうことに老後の後始末として心をさいて欲しいと思うのです。
私はどうしたらいいか悩んでいる人がいたら、それこそ私も一緒に考えてあげたいと思っています。絶対の正解はないと思います。
一時間を過ぎました。そろそろ終わりにしたいと思います。
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