橋本経亮について、もう一つ、そのエピソードについて高尚は書いております。
「此男和琴をひきけけり」と。その琴を聞きて、高尚は次のような歌を詠んで送っています。
“かきならす 君がたなれの ことのねは げにうえもなき ものとこそきけ”
と。そのかへしに経亮は、
”かきなせど いまだたなれぬ ことの音に 君が言ばの そふもやさしき”
この「やさしき」と云う言葉について、高尚は、註として「はづかしい」というこころの古語也と記しております。この人について最後に「有職の事をば書通にて相談いたし候約をなし申候」とあります。