高尚はこの人についての消息も書いています。本名は荒木田久老ですが、宇治五十槻としか記してはいません。
「外宮の社家麻口大夫。此先生は橋本肥後守が師なり。肥後守書状を以参り候て万葉の事など承候。賀茂真淵の弟子にて本居翁と同門たり。真淵の門人も今は多、本居の門に入人御座候へ共此人は一見識にて宣長は神道くさしとて被嫌申候。面白説御座候。万葉集中の事は折ふし以書中相談いたし候約をなし帰り申候」
とあります。此の荒木田と云う人は本居宣長を「神道くさし」だといって嫌っていたと云う事がよく分かります。高尚が直接この人にあって教えを請うたことはなかったのだろうと思われますが、最初に、井上博士が高尚の消息として取り上げている橋本経亮からでしょうが間接的に万葉集などの話を聞いているのです。