映画「ベストキッド」で日本でもお馴染みのパットモリタさんが亡くなった。死因は老衰。73歳だった。
老衰で亡くなるには、まだ若いような気がします。
ベストキッドシリーズは一応全て見ています。
いじめられっこで、根性なしのダニエルは母親と二人暮らし。母の仕事の都合で引っ越すことに。しかし、同級生のいじめに合います。通信教育で空手は習っていたものの、本格的に習ったわけではなく、悪いことにいじめっ子がトーナメントで優勝するような空手の猛者だったから、さぁ大変。しかし、空手の師匠ミスターミヤギと偶然出会い、修行を重ね、トーナメントで優勝すると言う何とも日本人が好みそうな映画です。
修行開始当初、ミスターミヤギもペンキ塗りや車のワックスがけなど雑用としか思えないようなことばかり押し付けています。我慢強い日本人でも疑問に思うようなメニューです。ミスターミヤギといえば1日釣り三昧。根性なしの割にはがんばったダニエルもさすがに嫌気が差して「もう、や~めた」をした瞬間。
ミスターミヤギが繰り出す、突きや蹴りをワックスがけやペンキ塗りの動作で見事にディフェンスしていたのです。これには当の本人もびっくり。すっかり、信頼と言う絆で結ばれた師弟コンビは、修行を通して心の交流を深めていきます。湖にボートを浮かべて、その上でバランスを取りながらや打ち寄せる高波に向かって突きや蹴りの練習をするシーンが登場します。ミスターミヤギの鶴の技。いずれも背景が美しく、胸がぎゅっとなります。チンピラに囲まれて、ミスターミヤギが手刀でコーラのビンを割るシーンなどは大変圧巻です。
学園生活と空手の修行、アリとの恋。全てが順調に進みはじめ、いよいよクライマックスのトーナメント当日を迎えます。順調に勝ち進み、いよいよ準決勝。ダニエルの相手はライバルと同じ空手スクールの仲間です。そしてコーチは彼に耳打ちをします。おそらく「反則しろ、足を狙え」と言ったのでしょう。
「はじめ」の掛け声で両者が技を仕掛けます。その瞬間、会場からは悲鳴とどよめき。そしてダニエルは傷めた膝を押さえたまま倒れこみ、痛みと悔しさから嗚咽をもらしています。タンカーで控え室に運ばれたダニエルに、母、アリ、ミスターミヤギが声をかけます。
ミスターミヤギと二人きりになるシーン。「よくやった」と声をかけるミヤギ。「これじゃ、バランスが取れないよ!恋も学校も空手も。ミヤギはバランスが大事だと言った。これではバランスが僕の中で取れないんだ。」ダニエル悔しさを訴えます。
一呼吸置いてミヤギは手を胸の前で合わせて数秒間、こすり合わせます。そしてその手をダニエルの負傷した膝に当てます。一瞬、熱さを感じ、痛みがひいていく不思議な感覚。
驚きの表情を浮かべた後、再び力を取り戻した精気に満ちた表情に変わるのです。
画面は決戦の会場に。レフェリーがダニエルの不戦敗を告げようとした瞬間。ダニエルが足を引きずりながらも登場し、会場には再び熱気がよみがえります。
試合ははじまり、一進一退の攻防を繰り広げます。足を引きずりながらの戦いであったがポイントはダニエルがわずかにリードします。そして、例の鬼コーチがまたまた耳打ち。「足だ、足を狙え」 「でも、コーチ・・・」
どよめき。膝を抱えてもんどりうつダニエル。絶体絶命のピンチ。もう、立つ事がやっと。崖っぷち。どうする、ダニエル!
そしてシーンはクライマックス。レフェリーを挟んで二人が対峙します。肩で呼吸する二人。お互いの視線が交差します。
ダニエルが突然、両手を広げ、片足を振り上げタイミングを取り始めました。
「はじめ」の声の一瞬後、鶴が飛び立つ瞬間のように羽を翻し、飛び上がりながらきれい蹴りが相手の顔面を捉えます。
極限まで張り詰めた緊張が、一気に解き放たれ、開放感と感動の気持ちに包まれます。
感動を言葉で伝えるのは難しいものです。
師匠ミスターミヤギ。パットモリタさん、いつまでもあなたのことは忘れません。