大栗川遊歩道“番場橋”付近で見掛けた枯れ花。花弁の様子からサザンカのようにも思えたが、どうやら「オトメツバキ(乙女椿)」のようだ。花弁が多く花芯は無い。花は落ちにくく枝に付いたまま枯れる。同じ日にヒマラヤスギのシダーローズを見たところだったので、同じような姿のこの枯れ花も撮っておいた。オトメツバキはツバキ科ツバキ属の常緑低木。
我が家から松が谷の大塚公園までは、大栗川遊歩道を下りそこから急坂を登る約3.5キロの道のり。この日は急坂の途中からいつもと違う道を登り、初めて公園北側入口から入った。するとそこに大きな「ヒマラヤスギ(喜馬拉耶杉)」が聳えており樹の下一面に果実の破片が散らばっている。『それなら』ということで樹の下を探してみると予想通り、松ぼっくりを2つ見つけた。ヒマラヤスギの花期は夏で果実は翌年の晩秋に稔る。果実は球果で、熟すと下部の翼状の種子の鱗片が開きバラバラに崩壊して散布する。球果の先端部は形が崩れずそのままの形で落下するが、そのバラのような形から“シダーローズ(Cedar Rose)”と呼ばれている。原産地はヒマラヤ山脈西部でスギの名が付くがスギ科ではなくマツ科ヒマラヤスギ属。「ヒマラヤシダー」とも呼ばれるが、このシダーは、英語の “Cedar wood”で、針葉樹全般の樹木を意味する。しかし日本語に翻訳する際に“杉”とされたため混乱を招いてしまった。
高尾山“6号路”で見掛けた「アイアスカイノデ(合飛鳥猪手)」。オシダ科イノデ属の常緑性シダ植物で大きな株を作る。イノデ類の特徴は中軸にイノシシの手ようなモジャモジャの鱗片が密に付くが、アイアスカイノデの鱗片は栗色で細長く中央に黒褐色の筋が入るツートンカラーになる。アイアスカイノデはイノデよりやや小型であり、ソーラス(胞子嚢群)は端寄りに付くので、中肋寄りに付くアスカイノデと異なる。
シダに詳しい当地の専門家に『イノデ類は複数の種類があり、互いに雑種も良く作るため、見分けるには、葉柄基部の鱗片と中軸の鱗片のそれぞれの色、形、葉形、葉身の色艶と形、ソーラスの付く位置と大きさなどのポイントを丹念にチェックして総合的に判断する必要がある』と教えていただいた。このアイアスカイノデの葉表は濃緑色で光沢があり、葉柄基部の鱗片は狭披針形で黒褐色が混ざり、中軸鱗片は線形~狭披針形で褐色。ソーラスは辺縁寄りに付いている。ちなみに“アイ”の名は、東北南部から東海地方の太平洋側に生育するアスカイノデとイノデの“合いの子”という意味。“アスカ”の名は東京都北区の飛鳥山で採集されたことによる。ネット検索ではいくつか“明日香猪手”の表記を見るが、生育地を考えれば、奈良の明日香ではないだろう。