「ここで待っててくださいね」
私たち応援部隊の手が空いてしまったので、上司に指示を仰ぎに行った黒シャツさんの
後姿を見送って私たちは顔を見合わせました。
2階が忙しくて応援に呼ばれるならいいのですが、3階が暇なので応援に出された日は、
こうしてぼんやり待たされることも少なくないのです。
「この補充応援っていつまで続くんだろうね」
応援の常連であるオハラさんがうんざりした口調で言いました。
みんなできることならお客さん扱いされずに、慣れ親しんだ自分の部署で仕事がしたいのです。
「5月の棚卸までらしいよ」
と情報通のカドタさん。
「ええ?5月?」
その時はまだ1月でした。
私が補充応援でMさんに対して親しげにふるまうのは、彼をピエロにしないためのいわば武士の情けなのです。
なにしろ私は彼より30歳も年上なのですから……。
本当は私は応援が嫌でした。
リストラ候補と思われるだけでもプライドが傷ついたし、このままではGASの練習ができません。
棚卸が終わるまで補充の応援を続けたら、その頃梱包に私の居場所はなくなっているでしょう。
そういう人はどうなるかというと、大体ピッキングか補充に異動を迫られます。
もしかしたらそれがMさんの狙いなのかもしれません。
私が正式に2階で働くようになれば、裏工作などしなくても毎日会えるのだから……。
いいえ、Mさんはそこまで頭が回らないでしょう。
そもそも社員ですらない彼には人事を采配する権限もありません。Mさんの周囲の社員さんの差し金でしょう。
正直言えば、私だってMさんには会いたい。だからって……私はMさんの機嫌を取る道具じゃないのです。
私が人妻だと知りながらみんなで煽り立てるようなマネをして、無責任にもほどがあります。
このままではMさんの悲恋を応援しているつもりの『いい人』たちに人生をメチャクチャにされてしまう。
2階には夫の知り合いもいるというのに、誰も私の立場は考えてくれないのです。
いや、それもこれも、私がMさんに言い寄られて喜んでいることがバレバレだからだろうけれど、
それが尚更恥ずかしく、私はMさんに必要以上に冷たく振る舞うようになっていきました。
彼には愛を伝えたくても、周囲の人には絶対に知られたくなかったのです。
私たち応援部隊の手が空いてしまったので、上司に指示を仰ぎに行った黒シャツさんの
後姿を見送って私たちは顔を見合わせました。
2階が忙しくて応援に呼ばれるならいいのですが、3階が暇なので応援に出された日は、
こうしてぼんやり待たされることも少なくないのです。
「この補充応援っていつまで続くんだろうね」
応援の常連であるオハラさんがうんざりした口調で言いました。
みんなできることならお客さん扱いされずに、慣れ親しんだ自分の部署で仕事がしたいのです。
「5月の棚卸までらしいよ」
と情報通のカドタさん。
「ええ?5月?」
その時はまだ1月でした。
私が補充応援でMさんに対して親しげにふるまうのは、彼をピエロにしないためのいわば武士の情けなのです。
なにしろ私は彼より30歳も年上なのですから……。
本当は私は応援が嫌でした。
リストラ候補と思われるだけでもプライドが傷ついたし、このままではGASの練習ができません。
棚卸が終わるまで補充の応援を続けたら、その頃梱包に私の居場所はなくなっているでしょう。
そういう人はどうなるかというと、大体ピッキングか補充に異動を迫られます。
もしかしたらそれがMさんの狙いなのかもしれません。
私が正式に2階で働くようになれば、裏工作などしなくても毎日会えるのだから……。
いいえ、Mさんはそこまで頭が回らないでしょう。
そもそも社員ですらない彼には人事を采配する権限もありません。Mさんの周囲の社員さんの差し金でしょう。
正直言えば、私だってMさんには会いたい。だからって……私はMさんの機嫌を取る道具じゃないのです。
私が人妻だと知りながらみんなで煽り立てるようなマネをして、無責任にもほどがあります。
このままではMさんの悲恋を応援しているつもりの『いい人』たちに人生をメチャクチャにされてしまう。
2階には夫の知り合いもいるというのに、誰も私の立場は考えてくれないのです。
いや、それもこれも、私がMさんに言い寄られて喜んでいることがバレバレだからだろうけれど、
それが尚更恥ずかしく、私はMさんに必要以上に冷たく振る舞うようになっていきました。
彼には愛を伝えたくても、周囲の人には絶対に知られたくなかったのです。
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