ハングル;教え、そして学ぶ

日々ハングル(韓国、朝鮮語)を教えながら感じること、韓国ドラマでみる名言。

韓国の小説「赤い実」2

2025-02-11 15:21:27 | 韓国文学 読書

翻訳作品を読んでいただき、ありがとうございます。
パソコンに眠っていた自作の翻訳が読めていただけるようになり、
とってもうれしいです。
物語をお楽しみくださいね。



骨壷を見つけたのは、それから季節が二度も変わったあとのことだった。食器棚の奥の方にしまっていたそれを、はったい粉と勘違いしてスプーンに山盛りすくい、クンクン匂いまで嗅いだのだ。もともと保存食を入れるための普通の食器棚なのだが、いったい、なぜそこに入っていたのかは分からなかったけれど、食べなくてよかった、とほっとして蓋をしたあと、流し台の上に置いておいた。ところがそこは場所が良くなかった。というのも、ガスレンジの換気扇の下に立ってタバコを吸うたびに、その骨壷が目に障ったからだ。ゆったりとしたある朝、たばこを吸いながらじっくり見ているうちに、磁器だと思っていたその壷が、本当は加工されたプラスチックだったことに気づいた。同時に、なぜか、とんでもなかった父の頼みが思い出され、だったら叶えてあげようか、難しいことでもあるまいし、と思った。
生前、父は荒唐無形なことをたびたび言う人だったが、病気になってからは時に、ただ私を苦しめるためにわざと言っているに違いない、と思えるほど、一層ひどくなっていった。
急にアシハラガニの炒め物が食べたいと、私を西海岸まで行って来させたり、「朝(アチ)の(ム)広場(マダン)」にどうしてイ グミアナウンサーが出ていないのだ。KBS に行って聞いてこい、と言ったりした。また、テレビで、旧日本式の建物をそのまま真似て作った居酒屋を見たときは、こっそり夜中に火をつけてこいと言ったこともあった。私が捕まったら、誰が父さんの面倒を見るの? ひとりでトイレにも行けないのに、とつっけんどんに口答えすると、父はくるりと背を向けて寝たまま、半日近くひと言もしゃべらず、夕方になってやっと、ところでだな、パプリカのことだが、赤いのと黄色いのとでは、何が違うのかと訊いてきた。私は皿を洗う手を止め、洗剤のついた手でスマホ検索をして教えてあげた。赤は骨粗鬆症に、黄色は高血圧に良いということを。
もちろん私も毎日いい顔ばかりはできず、時には癇癪を起こすこともあった。ある日、金魚を十匹だけ買ってこい、と布団の下からしわくちゃに折った二万ウォンを取り出して握らせるので、文句を言いたくもなく、黙って二千ウォンで金魚を十匹飼ってきたことがあった。すると、それを抱えて洗面所に連れて行ってくれと言い、そのあといつまで経っても出てこない。何をしているのだろうとそっと入ってみると、バスタブに水を溜めて金魚を放ち、一匹ずつ手のひらに載せては、なでたりいじったりしながら覗き込んでいるではないか。「父さん、何してるの。おかしいんじゃない!」 カッとなって声を上げると、父は素気無く振り向いて言った。「魚は人の手が触れると火傷するというが、本当か、気になって試してるんだ」。私は手洗い場に立ちつくし、もう一度叫んだ。「ほんとに、いろいろやらかすね。まったく!」 


おまけ
畑でできた、小さな、小さな大根です。




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