日本軍と交戦した空母、水深3千mで発見
76年前にオーストラリア沖で沈没した米空母レキシントン
第2次世界大戦中に沈没し、海底に70年以上眠っていた米国の航空母艦「レキシントン」が、オーストラリア東海岸から800キロ沖合の珊瑚海で発見された。(参考記事:「珊瑚海、現在は海洋保護区に」)
米マイクロソフト社の共同創業者で大富豪のポール・アレン氏が所有する調査船「ペトレル号」が、水深3000メートルの海底で確認した。レキシントンは、米国で初めて建造された航空母艦のひとつで、1942年、乗組員216人と35機の艦載機を乗せたまま沈没した。
珊瑚海海戦
第2次世界大戦で従軍した父を持つアレン氏とペトレル号のチームは、レキシントンが眠っているおおまかな海域を調べると、半年かけて沈没場所を探し当てた。そのために全長76メートルのペトレル号を改良し、水深6000メートルまで潜ることのできる水中探査機器を備え付けた。船の最初のミッションは、2017年のフィリピン海での調査だった。
海底調査を指揮したロバート・クラフト氏は、メディアに対し次のように語っていた。「きわめて厳しい環境です。海中を何千メートルも潜り、何が起こるか全く予想がつきません。本来なら行くはずもない深海へ、高電圧の電子機器を山ほど積んで送り込むわけですから、常に困難をともなう挑戦です」
レキシントンは当初、巡洋戦艦として建造されていたが、1925年に航空母艦に改造され、1942年5月4日、珊瑚海海戦で空母「ヨークタウン」とともに日本の空母3隻と交戦した。史上初の、空母対空母の戦いである。レキシントンは、爆撃や魚雷の攻撃を何度も受け、5月8日に航行不能に陥った。船内で起こった2度目の爆発で火災が船全体に広がり、制御が利かなくなったことから、船を放棄する決定が下された。そこで同じ米海軍の駆逐艦「フェルプス」による魚雷を受け、レキシントンはついに海の底へと消えていった。
近くにいた他の米軍の船により、レキシントンの乗組員と将校2770人が救助された。この海戦では、レキシントンの他に米国側は駆逐艦「シムズ」、油槽船「ネオショー」が沈没、ヨークタウンが損傷を受け、日本側は空母「祥鳳」が沈没し、「翔鶴」が大破した。
日本軍の進攻を阻止した珊瑚海海戦は、敵同士が互いに相手を視野に入れない位置にいながら戦った初めての海戦である。(参考記事:「強欲企業が生んだタイタニックの悲劇」)
戦闘機や対空砲も
アレン氏が発見した沈没船は、これだけではない。2017年11月には駆逐艦「ワード」、同年8月には重巡洋艦「インディアナポリス」、さらに2015年2月には重巡洋艦「アストリア」の発見に貢献している。その他にも、日本の戦艦「武蔵」(2015年3月)やイタリアの駆逐艦「アルティリエーレ」(2017年3月)を発見した。(参考記事:「米軍艦インディアナポリスを発見、第二次大戦で日本が撃沈」)
水中カメラの映像を見ると、レキシントンの誇る大型銃や排気遮蔽板のほか、戦闘機が海底に散乱していることがわかる。70年以上海水にさらされて劣化しているものの、貴重な歴史的・考古学的発見であることに間違いはない。
今回の調査に携わったポール・マイヤー氏は言う。「これまでの努力が全て報われたように感じ、私自身ほっとしています。次の段階は、実際に残骸を調べることです。とても楽しみです。そして、それが終わったらすぐにでも次の探査に出たいと思います」
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