飼育員も気づかず…水族館で長年飼育のエイが実は「新種」だった! 発見の経緯を聞いた
ずっと展示されていたエイが「まさかの新種」
拾った“子犬”がどんどんモコモコの姿に育ち、実はタヌキだったことが判明!などなど、意外に“勘違い”される動物たちの話は多い。 【画像】プロも見抜けなかったそっくりな姿がこちら 編集部でも、北海道で“子犬”を保護したはずが「キツネ」だったという出来事を過去に紹介した。 そんな“勘違い”にまつわる驚きの報告が、新たに飛び込んできた。 鹿児島市にある「いおワールドかごしま水族館」で飼育されていた「トンガリサカタザメ」。 名前には「サメ」とついているがエイの一種で、館内で最も大きな「黒潮大水槽」にて展示されてきた。 1997年の開館以来、入れ替えがありつつも実に23年もの間展示されてきたというこの「トンガリサカタザメ」が、同水族館・鹿児島大学総合研究博物館・公益財団法人黒潮生物研究所などのグループによる調査によってこのほど、なんと新種であることが判明したのだ。 新種と判明したエイは頭部が「おばけのように見える」ということで、“モノノケ”の名前を足した「モノノケトンガリサカタザメ」と命名されることとなった。 長く親しまれてきた水族館目玉の水槽に、新種の生物がいた…という驚きの発見。ベテランの飼育員すら見抜けなかったその姿について、モノノケトンガリサカタザメの研究に携わっている、公益財団法人鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)の山田守彦氏にお話を聞いた。
「わき役のような存在」から一転、大注目!
――「トンガリサカタザメ」が実は新種だった…発見の経緯は? 高知県の黒潮生物研究所の小枝圭太研究員が鹿児島県の薩摩川内市で入手した標本を調べていたところ、日本でトンガリサカタザメ科の種として唯一知られていたトンガリサカタザメとは違うことに気づきました。 そこからトンガリサカタザメについて調べていたところ、当館で20年以上トンガリサカタザメとして飼育している種も薩摩川内市の標本の種と同種でトンガリサカタザメではないとわかり、研究を進めた結果、新種であると判明しました。 ――新種と判明した時の感想は… 魚では、よく知られていたものが実は新種だったという話はたまにあるのですが、今回のような大型のエイで、しかも20年以上飼育していたものが新種だったというのはさすがに驚きました。 また、今までは当館の黒潮大水槽ではわき役のような存在で、ほとんど注目してもらえなかったモノノケトンガリサカタザメが、今回の件で多くのお客様によく観察してもらえるようになり嬉しいです。 山田氏によると、今回新種と判明し、現在も飼育されているモノノケトンガリサカタザメは2匹。 水槽内の魚は定期的に入れ替えが行われるため、開館当時から飼育されているものではないというが、「どちらも少なくとも10年以上は展示している」という。 そんなモノノケトンガリサカタザメだが、数年前に黒潮生物研究所の研究員が「トンガリサカタザメのもの」として入手した標本が、トンガリサカタザメの特徴と違うことを発見。そこから、トンガリサカタザメとしてかごしま水族館で飼育されていた2匹の調査につながり、今回、新種と断定されたのだという。 少なくとも10年、ベテランの飼育員も新種と気付かなかったモノノケトンガリサカタザメ。水族館の人気スポットに住んでいたものの、水槽の底で動かないことが多く、あまり注目されていなかったというが、「トンガリサカタザメ」の姿と比べてみても確かにそっくりだ。 気になる違いだが、「頭部のとがり方がモノノケトンガリサカタザメのほうが緩やか」「モノノケトンガリサカタザメは背びれの先が丸い」などだそうだが、どちらも微妙な差とのこと。 ――では、モノノケトンガリサカタザメとはどんな生き物? 頭部は平たく名前の通り尖がっていて、体の後半はサメのように太い特徴的な体形をしています。海底付近にすむエイの仲間です。 水槽内では魚の切り身などを食べていますが、海では海底の小魚や甲殻類などを食べている思われます。大型のエイで飼育個体は全長210cmあります。 現在は長崎県と鹿児島県でのみ確認されています(千葉県の館山産の標本が海外の博物館にあるらしいのですが、小枝氏によるとはっきりと確認できていないとのことです)。鹿児島県では稀に漁獲されるものの、個体数は少なく、生態などあまりわかっていません。 ――この反響への感想は… 正直なところ、想像以上の反響にただただ驚いています。 現在、水族館にも問い合わせが多く寄せられているということで、さっそくの「モノノケトンガリサカタザメブーム」が巻き起こっているようだ。
身近な水族館という空間で起こった、意外な発見劇。にわかに話題となったその姿を見に、足を運んでみてはいかがだろうか。
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