ノルウェーの国立公園で、300頭を超えるトナカイが落雷によって命を落とした。

 ノルウェー環境省はその衝撃的な写真を公開している。現場は北欧最大の高原であるハダンゲルビッダ高原で、70頭の子トナカイを含む死んだトナカイたちは、その場でふいにバタリと倒れてしまったように見える。

 ハダンゲルビッダ国立公園はノルウェーで最大の面積をもつ国立公園で、1万〜1万1000頭の野生のトナカイが暮らしている。

 今回の落雷について詳しいことはわかっていないが、おそらくトナカイたちは、8月26日に一帯を襲った激しい雷雨をやり過ごすために身を寄せあっていたものと見られる。

 落雷による動物の大量死はこれが初めてではない。1990年には、米バージニア州オレンジ郡の農場で、激しい嵐の中で30頭の牛が死に、現場にはゴロゴロと転がる死骸が残された。2005年にはオーストラリア、ニューサウスウェールズ州の酪農場で、落雷によって68頭の牛が命を落とした。さらに2008年には、ウルグアイ、モンテビデオ郊外で放牧場を囲う鉄条網を雷が直撃し、囲いの内側で草を食んでいた52頭の牛が死んだ。

「地面に雷が落ちて牛の群れが死んだという事例は複数あります」と、米海洋大気局の科学者、スティーブ・グッドマン氏は言う。「雷の影響は大きく広がることもあるのです」

 ノルウェー環境省のキャルタン・クヌッツェン広報担当官は、AP通信の取材に対し、今回のような規模の野生動物の大量死は国内では前例がないと述べている。

 グッドマン氏によると、ノルウェーが特別雷の被害を受けやすいわけではないという。NASAの地球水文学研究センターが提供する衛星データを見ると、ノルウェー南部で起こる落雷は、年間平均で1平方キロあたり1回以下だ。

 一方、世界で最も多く雷が発生するベネズエラのマラカイボ湖では、年間平均で1平方キロあたり232回を超える落雷があり、また夜間に嵐が発生する日数は年間297日にのぼる。