ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

劇作家協会関西支部ドラマリーディングを見て

2016-08-27 | 演劇
日本劇作家協会が企画するドラマリーディングを初めて鑑賞しました。これは戯曲作家の作品のブラッシュアップや技量を伸ばすための企画で、まず、役者さんが朗読した後、意見を交わすというものです。正直、もう何年も演劇をきちんと見たことなくて…。ここ、数年はフェスティバルホール・アドバイザーの西尾智子さんのおかげで、人間国宝の梅若玄祥先生のお能をみる機会には恵まれていますが、小劇場に関しては奈良の若手のみ…。大阪の現在の役者さんもみたくて久々に関西の演劇シーンに触れるので楽しみに参加しました。
本日の採用戯曲は、横山拓也・作『車窓から、世界の』(どこかで聞いたような?!)劇作家協会の新人戯曲賞を受けられている実力派です。力があるなと思いました。きちんと破綻のない芝居になっているし、人物の書き分けや役割も的確。ただ…なんというか…だから何なんだろう、とまあ、そういう結論になってしまうのです。これは私が子育てをする普通の親?としての時間がそうさせるのかもしれませんが。
劇の内容はかなりシビアな話で、女子中学生三人が鉄道に飛び込み自殺をし、そこに関わる教師、PTA役員、中学生の所属していた団体のスタッフが、お別れの会にその現場のの鉄道の駅で電車を待っている間のお話です。それぞれの立場から、生徒が亡くなったことに関して、あれこれ話をしますが、テンポもよく、深刻な話の中にも、笑える部分もうまく仕込んで、飽きさせません。話も半ば過ぎて、中学生達が夢中になっていたマンガの同人誌の作者が登場、中学生の自殺の原因は、自分の書いたマンガのせいで、そのマンガの中には、まさに死んだ状態と同じシーンがあり…。とまあ、あらすじだけ書くと、ものすごく重くて暗いですが、それを具体的に登場人物にそれぞれの立場から互いの意見をはっきりと言わせるので、話の進行にも無理はなく、きちんとした芝居を見た、という感じにはなります。
…が、この内容によって、だから何?という感覚になるのです。私には、かなりハテナ?なのです。それは、身の回りの中学生や親や教師を目の当たりにしてきたので、ほんとにピンとこないのです。芝居の登場人物は、いわゆる「パターン」であり、「教師のパターン」「PTA役員」のパターン、とかで、人の姿が見えないのです。(このあたりの問題に関しては、終演後のディスカッションのゲストの劇作家の中津留章仁さんや岩崎正裕さんから、良いアドバイスがありました。)
ドラマはウソだけれども、人物に役割だけ背負わせてしまうと、まさにウソになってしまう気がします。人物を類型化しているというのともちょっと違って…なんというか、話を進めるためのツールに、登場人物が見えてしまった感じがあります。
だいたい、本当に中学生が「神」とあがめるような同人誌ってどんな?死ぬほどの何物か?ならば、その同人誌こその内容をもっと語らなければ、死んだ中学生のことが、何もわからないのではないの?死んだ中学生のことは最後まで見えなかった…。これは意図してなのかはわかりませんが…。
私は演劇を役に立つとか、何かの目的のためにとかばかりでは、つまらないと思いますが、やはりこういった内容をあえて書くというのなら、単に考えるきっかけになれば、でなくて、ある程度の覚悟ある視点がいると思いました。
後、「詩」をあまり感じなかったのも残念。劇中に「干し柿」が出てきて、それが物語をつなぐ大事なものの象徴にはなっているのですが…少し弱いんです。日常会話の中にいかにも「詩的」なものを仕込むというのでなく、一言、すごく印象に残る言葉があればなあ、と思いました。
役者さんは皆、好感が持てました。この稽古は、なんと当日のみだとのこと。皆さん、すごいです。
私は奈良で一般の方と劇をする時…稽古はとても時間がかかりますから、それはもう羨ましい…。けれど、おそらくその時間のかけ方が、子育てにかかる時間?のかけ方に似ているのかも?!暮らしの中で生まれるリアル…それがどう芝居のリアルに飛躍していくのか…なんとかそれを体温をもって書いていけたらと思っています。