甚大な被害を受けた東日本大震災から一年の昨日、日本各地や世界でも
様々な追悼行事が行われていました。
ParisのUNESCO本部で行われた追悼コンサートの最後で、文部省唱歌「故郷」を
合唱されている映像を拝見し今回のタイトルをLa patrie 故郷にしましたが、
La patrieは祖国の意味もあります。
「志(こころざし)をはたしていつの日にか帰らん 山は青き故郷 水は清き故郷」
という「故郷」の三番の歌詞は、今被災者の方達にどう響くのでしょう。
震災後の募金や逸品運動の支援、個人的ご縁ができた避難されていらした方との交流
などをして来ましたが、心身ともに傷つかれた被災者の方の気持ちは他者に容易に
理解できるものではないとも思っています。
「故郷」のメロディーを防災無線で流している自治体も多くあるそうですが、
被害をもっと縮小する術はなかったのかと悔しい気持ちが沸き起こります。
2011.3.29付日経BP社ECO JAPANに掲載された環境学者石弘之氏のコラム、
「原発事故を巡る国内と海外のあまりに大きな温度差」を拝見して、
一年間一番モヤモヤしていた霧が少し晴れる様な気がしました。
→ < Sorry ! ! 2016.3 現在リンク先の当時記事は閲覧できなくなっています>
2頁の米ワシントンポスト紙報道、「『唯一の被爆国』として世界に核廃絶を訴えて
きた日本が、狭い国土に55もの原発を林立させた核大国になっていた」という異常さを
指摘した。「自分たちが落とされた原爆の何千、何万発分にも相当する核物質を原子炉に
保有しているのに危機管理ができていなかった」「原発の周囲に平気で住民を
住まわせている」などと報じた、という箇所は、指摘されて愕然と認識する事実ですが
かなりグサッと来ます・・・・・。
一年前情報混乱の中、福島原発事故が本当にただ事ではないのではと最初に
思ったのは、原子力発電の危機管理をよく判っているフランスが、
希望する自国民を全て帰国させるという報道を目にした時でした。
前述コラム1頁にも記載されていますが、3/14に災害支援援助隊と支援物資を日本に
運んで来たエールフランス便の帰り便280席で、東北4県被災者や福島原発に近い
居住者、妊婦さん、15才以下の子供、子供の保護者を優先で搭乗させ、
後日のチャーター便でも西日本在住者も含め帰国希望のフランス人とご家族を
本国へ戻されました。
爆発した福島第一原発4号機が、定期点検中の工事不手際と仕切りの壁ずれという
二つの偶然で救われていたという新聞記事(2012/3/8朝日朝刊1面)や、
首都圏住民避難のケースも極秘に考えられていたという当時内閣総理大臣担補佐官
細野議員出演の最近のTV報道などから、更に深刻な事態に至る可能性もあったのだと
知り、自国民を守るフランスの行動はやり過ぎでも何でもなかったのですね。
3/15-16の降雨では拡散予測ができるSPEEDIがあったというのに当時は公表もされず、
首都圏にも放射性物質が拡散したと思われています。
雨具装着で通勤していたのですけれど、まさに後悔先に立たず。
3年の短い在仏期間中(よってもっと長く深く関わられている方の異論もあると思います)
感じたのは、個を確立して持っているFR人は一般的に依存する様な付き合いは
しないものの、他人が本当に困っている事態に接した時は、当たり前の事と
さっと手を差し伸べてくれるという印象です。
杖をついたご高齢の紳士が乗りこんでいらしたメトロがすぐ発車し転びそうになられた時、
近くの乗客全ての手で支えられにっこり笑顔でお礼を言われた場に遭遇したのですが、、
周りは何事もなかったかの様でしたが一人で感動していました。
私自身も、内側からしか開かない窓ガラスをベランダで不注意に閉めてしまい、
11月の寒さに震えていた時、管理人さん、住民の方、お隣の工事現場の人達の
連携で瞬く間に助けて頂いた経験があります。(既に披露しているエピソードですが)
「Mmeはベランダに閉め出された3番目の人だから気にしないで!」と、
ウィンクで温かい紅茶とクッキーを頂いた時は本当に泣きそうでした。
今朝の朝日新聞天声人語に福島生まれの詩人長田弘さんの詩から
「距離」について書かれていましたが、自分がFRで受けた様な心地よい距離感で
行動できればいいなという事はずっと思っています。
自分の祖国(La patrie)である日本にも、助かった命を虚しく感じるほどの苦しみを
抱えている方達に国として迅速に手を差し伸べて頂ける事を願わずにはいられません。
2004年の事ですがイラク日本人人質事件に関しJICA理事長の緒方貞子氏が、
「多様な人々が存在してはじめて良い社会となり、危険地域に行かない人もいて当然だし
行く人もいてよい、どんな状況下でも国には救出義務がある」(毎日新聞2004.5.25朝刊)
と答えられた言葉は、今あらためて聴いてもとても重いですね。
着物や茶道をはじめ、世界から尊重してもらえる沢山の文化を持っている日本が、
「故郷」の歌を曇りのない心で歌える日が早く来ます様に!
一年間の気持ちを整理するのに長文になってしまいました。読み飛ばして下さい。
添付写真は上ー日本では田の畦道などにも自生するスミレViolettes
中ーPaques復活祭(今年は4/8)の飾りで店正面ウィンドーに飾っています
下ーPaquesの頃に咲く代表的な花、ひな菊Paquerettes