CAAD10で1シーズン走り、TCRとじっくり比較した結果が同じアルミフレームでもここまで違うのかというものでした。TCRだけに乗っていた時には気にならなかったことがCAAD10に乗り慣れると気になり始めます。
その最たるものが振動吸収性でした。TCRはそもそもがレース指向のバイクで剛性も高いのですがALUXX SLはかなり堅いフレームです。まあ、大径肉薄のアルミフレームなので堅くて当たり前なのですが、CAAD10とのフレーム構造の違いが明確に出ているといえるでしょう。
TCRもシートステイを細くして振動を逃がす工夫はされていますが、肝心のシートステイがシートチューブに接合されている為に下からの突き上げが緩和されることなくサドルを襲います。一方CAAD10のシートステイはトップチューブに接合されている為、下からの突き上げはある程度トップチューブへ逃げてくれるのです。
CAAD10の振動吸収のメカニズムは以下の通りです。まず、横方向に大きく扁平したチェーンステイが下方からの衝撃を吸収し、細くしなりのあるシートステイで緩和された振動は太いトップチューブへ逃げ、残りがシートポストを経由してサドルへと伝わることになります。CAAD10が6000系の大径肉薄アルミフレームでありながら振動吸収性が高いと云われるのはここに起因しているのです。
唯一の欠点を挙げるなら、リアに比べフロントの衝撃があまり緩和されないことでしょうか?オフセットされたカーボンフォークを使用しているとはいえ、アルミ製のハンドルだと結構手が痺れることは避けられない状況です。ステムは兎も角としてハンドルバーはカーボン製にするのがBESTかもしれません。
勿論、カーボンフレームに比べれば素材そのものが持つ振動吸収性は劣ることは明らかですが、この剛性でこれだけの振動吸収性の高いフレームはそうそうないと思っています。乗り心地だけを求めるのなら廉価版カーボンフレームでもいいのかもしれませんが、ロードバイクにとって剛性は不可欠な要素ですから、ただ柔らかいだけのバイクでは満足の行く走りはできないと思っています。
カーボンという素材の特性から引張弾性率(30t、50t、60t)が高いものほど剛性が高く価格も高くなります。従って剛性が高く振動吸収性も高いカーボンフレームは当然のことながら価格も高くなる訳です。ここでいう引張弾性率はカーボン糸レベルの話しですから、糸の編み方や編んだシートの重ね方によっても強度や剛性は大きく異なります。ジャンボジェット等に使用されている炭素糸でさえ引張弾性率は30tクラスなので、50tや60tといった高強度の炭素繊維が自転車に使用されていること自体が驚きなのです。
個人的にはカーボン繊維の引張弾性率は30tクラスで十分だと考えています。理由は高弾性繊維には脆性があるためです。高弾性繊維は諸刃の剣で、乗り心地が良く剛性も高い反面、想定外の衝撃には非常に脆いという特性があるのです。財団法人 自転車産業振興会の調査報告書 によると、カーボンフレームの自転車で「ユーザーが使用続行不可能と感じた損傷に至るまでの平均使用期間は2年5ヶ月、平均走行距離で約8,900kmで、衝突や転倒、使用時のトラブルによる衝撃付与による損傷がほとんどであった」ということです。
この報告書によると損傷が生じるまでの使用期間が「1年未満」が33%と最も高く、価格帯も「40万円未満」が何と全体の81%を占めているのです。つまり、初心者が40万円未満のミドルグレードのカーボンバイクを購入し転ぶかぶつけるかしてフレームを破断させるケースが目立つという結論になるのではないでしょうか?
こうした報告書のデータからも初心者がいきなりカーボンロードを手にするのは結構リスキーだと感じます。かといってアルミロードでは堅くてしんどいと思われる方は是非CAAD10をお試し戴ければと思います。
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