渡辺松男研究2の10(2018年4月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
【邑】P50~
参加者:泉真帆、K・O、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取未放
71 もぎたてのなまあたたかきトマト吸いみんな子どもは火山の噴火
(レポート)
「もぎたてのなまあたたかい」というのだから、太陽の照りつける畑で、子たちが手づからトマトをもいで食べているのだろう。子どもという生き物は火山の噴火のように元気を発するのだなあ、という作者の驚きがあるのだろうか。(真帆)
(当日発言)
★「なまあたたかき」がものすごくリアル。たとえば下校途中、自分の家のとか友人の家のとか畑
の傍を通っていて、まっ赤なトマトがなっていたらみんなでもいで食べるんですよ、私は田舎の
子だからこういうのよく分かります。だからトマトを吸っているのは「子ども」、そこにはきっ
と自分の子ども時代の経験も入っているんでしょうね。そして、「子ども」っていうものは「火
山の噴火」みたいにダイナミックだって感嘆している。(鹿取)
★「なまあたたかき」というところにすごく体感がある。ずーとひらがなで続けて、考え抜かれた
歌だと思いました。「吸い」で惑わされるのですが、自分の過去の体験と目の前の子どもとのク
ロスオーバー感を出すための重層的な表現かなあと思いました。「火山の噴火」はかわいらしい
気もするし怖ろしい気もする。子どもの口が赤くて噴火口みたいなんですよね。そこに野生も感
じさせます。また「火」を二つ据えたところも、「子ども」だけじゃなく「みんな」を付けたと
ころも計算された「技」を感じます。(K・O)