2022年度版 2の17(2019年1月実施)
Ⅱ【膨らみて浮け】『泡宇宙の蛙』(1999年)P85~
参加者:泉真帆、M・I、K・O、岡東和子、A・K、T・S、
曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
133 サラリーマン膨らみて浮け行く雲はいまなおだれのものにもあらず
(当日意見)
★これが表題になっている歌ですね。126番歌(ひんやりとサラリーマンはひとを待つ雲
見ては雲にすこしほほえみ)に続いて雲の歌です。(鹿取)
★「膨らみて浮け」が面白いですね。アドバルーンとか風船とか飛行船とか、そんな感じが
ぱっとしたんですけど。そういうことをサラリーマンへのエールとしていうところが独特
だなと思います。この言葉に渡辺松男という人の価値観とかが全て表れていると思いま
す。それに対して下の句は要るのかなあ、まあ、上の句をここで補強しているのでしょ
うが。(A・K)
★「樹上会議」の発想ですね。膨らみて浮けって、アンパンマンとか想像するけど、ムクム
クと膨らんで軽くなって、空の雲に近づいてゆく、気持ち的には哀切だけど、図柄は漫画
チックで楽しいですね、(鹿取)
★抜群の上の句ですね。下の句は雲の描写だけで成立したかもしれませんね。この下の句は
感慨とか心象かもしれませんね。心をストレートに出しちゃったかなと言う気はします
が。でもこんな風に励まされたら嬉しいですよね。(K・O)
★「だれのものにもあらず」って解釈や説明は要らないから下の句は不要。(A・K)
★「いまなおだれのものにもあらず」ってアイドルの歌の歌詞だったんじゃない?
(T・S)
★(ネットを調べて)井森美幸さんの歌かしら?1980年代ですね。群馬県下仁田町出身
だそうですから故郷の人。この歌集を出された頃は歌手として活躍されていたんでしょ
うか。(K・O)
(後日意見)
井森美幸の歌詞には「いまなおだれのものにもあらず」はなかったが、1985年頃の売り出しのキャッチコピーは「井森美幸16歳、まだ誰のものでもありません」だったそうだ。松男さんは高踏的なだけでなく、こんな風に時代の風俗も自然に入り込んでているところが楽しい。
別の話だが、「かりん」(2011年10月号)の松男特集インタビューで、かりんに入会したのは1990年だが、第一歌集の『寒気氾濫』(1997年刊)の頃について、仕事終了は夜の10時頃で帰宅は11時頃だったと答えている。(『泡宇宙の蛙』は1999年刊だが)そういう背景を踏まえてこの一連を読むと、仕事に時間のほとんどを取られているサラリーマンの哀切な思いがよく分かる。『寒気氾濫』の次のような歌より詩的な飛躍を遂げているように思う。(鹿取)
残業を終えるやいなや逃亡の火のごとく去るクルマの尾灯
Ⅱ【膨らみて浮け】『泡宇宙の蛙』(1999年)P85~
参加者:泉真帆、M・I、K・O、岡東和子、A・K、T・S、
曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
133 サラリーマン膨らみて浮け行く雲はいまなおだれのものにもあらず
(当日意見)
★これが表題になっている歌ですね。126番歌(ひんやりとサラリーマンはひとを待つ雲
見ては雲にすこしほほえみ)に続いて雲の歌です。(鹿取)
★「膨らみて浮け」が面白いですね。アドバルーンとか風船とか飛行船とか、そんな感じが
ぱっとしたんですけど。そういうことをサラリーマンへのエールとしていうところが独特
だなと思います。この言葉に渡辺松男という人の価値観とかが全て表れていると思いま
す。それに対して下の句は要るのかなあ、まあ、上の句をここで補強しているのでしょ
うが。(A・K)
★「樹上会議」の発想ですね。膨らみて浮けって、アンパンマンとか想像するけど、ムクム
クと膨らんで軽くなって、空の雲に近づいてゆく、気持ち的には哀切だけど、図柄は漫画
チックで楽しいですね、(鹿取)
★抜群の上の句ですね。下の句は雲の描写だけで成立したかもしれませんね。この下の句は
感慨とか心象かもしれませんね。心をストレートに出しちゃったかなと言う気はします
が。でもこんな風に励まされたら嬉しいですよね。(K・O)
★「だれのものにもあらず」って解釈や説明は要らないから下の句は不要。(A・K)
★「いまなおだれのものにもあらず」ってアイドルの歌の歌詞だったんじゃない?
(T・S)
★(ネットを調べて)井森美幸さんの歌かしら?1980年代ですね。群馬県下仁田町出身
だそうですから故郷の人。この歌集を出された頃は歌手として活躍されていたんでしょ
うか。(K・O)
(後日意見)
井森美幸の歌詞には「いまなおだれのものにもあらず」はなかったが、1985年頃の売り出しのキャッチコピーは「井森美幸16歳、まだ誰のものでもありません」だったそうだ。松男さんは高踏的なだけでなく、こんな風に時代の風俗も自然に入り込んでているところが楽しい。
別の話だが、「かりん」(2011年10月号)の松男特集インタビューで、かりんに入会したのは1990年だが、第一歌集の『寒気氾濫』(1997年刊)の頃について、仕事終了は夜の10時頃で帰宅は11時頃だったと答えている。(『泡宇宙の蛙』は1999年刊だが)そういう背景を踏まえてこの一連を読むと、仕事に時間のほとんどを取られているサラリーマンの哀切な思いがよく分かる。『寒気氾濫』の次のような歌より詩的な飛躍を遂げているように思う。(鹿取)
残業を終えるやいなや逃亡の火のごとく去るクルマの尾灯