かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

写真入り 馬場あき子の外国詠 140(ネパール)

2021-01-31 18:58:21 | 短歌の鑑賞


馬場あき子の乗った白馬、マスクをしているのは乾燥地帯で埃がすごいから




    ホテル遠景。下の広い道までは断崖絶壁



 下に降りるまでの道幅は、こんな感じ 
 我々が少しでも楽なようにと、この辺りまで馬を連れてきてくれたが、慣れない者には難行苦行 



  下まで降りればこういう隊商の通る広い道もあるが、すぐに石ころごろごろの河原に出る

                  
   ブログ版馬場の外国詠 ⑰(2009年4月)
      【ムスタン】『ゆふがほの家』(2006年刊)86頁~  
      参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、藤本満須子、
      T・H、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:T・H   司会とまとめ:鹿取 未放


──── ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
       近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)


140 わが馬のよごれゐたれば悲しきに馬は隊列を出でんときほふ

      (当日意見)
★現地の人々の生活の苦しさが馬に出ていて、それが悲しい。(N・I)


     (まとめ)
 139番歌(馬なければ歩みきれざりき高地ムスタンゆきゆきて四本(よもと)の柳植ゑきつ)の解説に書いたように、ジョムソンでの移動は主に馬を使った。一泊した翌朝、中腹に建つホテルの途中まで馬たちが迎えに来た。私(たち)は青くなった。馬に乗るのは初めてな上、つづらおりの急坂である。さらに片方は下の街道まで何もない断崖絶壁である。あまつさえ登りならまだしも下りである。馬の背中に乗っただけで前につんのめりそうになる。それだけではない、道幅は狭く馬二頭は並んで歩けないほどなのに、当日寄せ集めの馬十数頭はまったく統制が取れていないため、それぞれの馬が断崖絶壁側をまわって前の馬を追い抜こうとする。「馬は隊列を出でんときほふ」はそういう状況を詠んでいる。馬場はそういう馬たちや仲間の怖がる様子を面白がっていたようなふしもある。歌は馬の汚れの悲しさ、ひいては土地の貧しさのかなしさとしての視点から書き起こしてにいる。馬は農家から借り出されたもので、日頃の手入れが十分ではなかったのだろう。特に馬場の馬は白馬だったので、よけいに汚れが目立ったのだろう。(鹿取)


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写真追加版 馬場あき子の外国詠 139(ネパール)

2021-01-30 19:03:08 | 短歌の鑑賞


  カリガンダキ河を渡る馬たち





  カリガンダキ河に渡された木の橋を渡る、手前の赤いコートは馬場あき子


  植樹をしたのは、こんな荒涼とした風景の河原、ブルーのジャケット姿は鹿取


※ニルギリはとても崇高で美しい山でしたが、フィルムを使うぼろいカメラの映像をデジカメ で撮って載せているため、美しさが伝わらずに残念です。
 ぜひ、ネットで検索して美しい山の姿をご覧ください。
 一例をあげます、中程にニルギリとダウラギリが載っています。 
       https://cannergy.sakura.ne.jp/theme/mt3.html

                    
   ブログ版馬場の外国詠 ⑰(2009年4月)
      【ムスタン】『ゆふがほの家』(2006年刊)86頁~  
      参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、藤本満須子、
      T・H、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:T・H   司会とまとめ:鹿取 未放


──── ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
       近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)


139 馬なければ歩みきれざりき高地ムスタンゆきゆきて四本(よもと)の柳植ゑきつ

         (まとめ)
 飛行場からホテルまで歩いて50分、農場は飛行場と反対方向で、歩いたら30~40分くらいだったろうか。着いた日の午後は徒歩で農場に行って、鶏の放し飼いを見たり、鞴を使って鍛冶をしている場面を見学したりした。その後、林檎をいただき、農場の向かい側にある鱒の養殖場や稲の栽培場所なども見学した。これらもすべて近藤享氏が指導されていた。確か、ホテルの夕食にはここのますの甘露煮が出されたように記憶している。
 馬に乗ったのはその翌日のことである。行動半径を広げようとすれば、この土地では馬に乗るしかないのだ。植林の場所まで行くにはカルガンダキ河を渡らないといけないのだが、その辺りでは馬の腹くらいまで水かさがあった。素人が馬に乗ったまま渡ることはできないので、何人かの馬子さんたちが馬だけを向こう岸へ渡してくれた。われわれは材木を一本渡しただけの橋を幾つか渡り継いで向こう岸にたどり着いた。まさに「ゆきゆきて」という感じで河原を遡行して、広大な河川敷のような所に植樹をした。そのうちの幾本かは背丈ほどに育っていたと10年後にこの地を再訪した友人が教えてくれた。「ゆきゆきて」は「伊勢物語」の東下りを連想するが、旅のあてどないさびしさがにじんでいる。(鹿取)


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写真入り 馬場あき子の外国詠 138(ネパール)

2021-01-29 17:07:43 | 短歌の鑑賞


カリガンダキ河を渡って、農場の研修センターに向かう



  研修センター、ここの一室で林檎をいただいた。手前の石は、研修センターの塀の石組み




    石塀の前を馬に乗って通り過ぎる人、塀に沿って色づいているのは杏の木   



   研修センターの中の林檎の木   



   研修センターの門の前を通り過ぎる女性達

※ニルギリはとても崇高で美しい山でしたが、フィルムを使うぼろいカメラの映像をデジカメ で撮って載せているため、美しさが伝わらずに残念です。
 ぜひ、ネットで検索して美しい山の姿をご覧ください。
 一例をあげます、中程にニルギリとダウラギリが載っています。 
       https://cannergy.sakura.ne.jp/theme/mt3.html

                    
   ブログ版馬場の外国詠 ⑰(2009年4月)
      【ムスタン】『ゆふがほの家』(2006年刊)86頁~  
      参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、藤本満須子、
      T・H、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:T・H   司会とまとめ:鹿取 未放


──── ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
       近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)


138 ヒマールと呼べば何だか土地びとのやうなりムスタンの林檎はうまし

       (レポート)
 近藤亨氏が苦労して実らせた林檎を召し上がった。美味しかった。「ヒマール」と口に出して発音してみると、何か土地の人になったような親しみが湧き、また林檎のおいしさは近藤氏のご苦労を思ってのおいしさであろう。(T・H) 


       (当日意見)
★「ヒマール」は、ヒマラヤを呼ぶ土地の人のことばです。ヒマラヤの山々が恒美見えている場所
でした。林檎を食べた農場はジョムソンにありました。飛行場からホテルまで歩いて50分、農
場は飛行場と反対方向で、歩いたら30~40分くらいでしょうか、整備されていない道な の
で石ころごろごろですし、橋のないカリガンダキ川の浅瀬をそうっと渡りました。農場には林檎
のほか鍛冶屋のような設備があったり、鶏が放し 飼いになったりしていました。その対岸には
鯉の養殖場が設けられ、田んぼもありました。研修に来る人たちの為の平屋建ての宿泊施設もあり
 ました。リンゴは紅玉より少し小さめで、とても芳香があり、むちっと果肉が締まっていて果汁た
 っぷり、リンゴ本来の甘酸っぱい味で、ほんとうに美味しかったです。(鹿取)
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写真入り 馬場あき子の外国詠 137(ネパール)

2021-01-28 17:04:09 | 短歌の鑑賞

 白馬に跨がってカリガンダキの河原を行く馬場あき子
     (ブログ掲載の許可をいただいています) 

  
  ブログ版馬場の外国詠 ⑰(2009年4月)
      【ムスタン】『ゆふがほの家』(2006年刊)86頁~  
      参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、藤本満須子、
      T・H、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:T・H   司会とまとめ:鹿取 未放


ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
       近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)


137 乾燥のはなはだしければ馬糞さへ臭はず馬上快晴の青

        (レポート)
 馬場先生は、馬の背に揺られて山道を辿っておられる。そこには馬糞が転々と転がっている。しかし、その馬糞も、その地域の乾燥した地面では、臭いもたたない。抜けるような青空の下だ。
    (T・H) 


        (当日意見)
★ジョムソンは年間雨量200ミリという乾燥地帯ですから、馬の糞もすぐ干涸らびて臭わない。
 雲一つ無い青空の下を馬で移動する爽快さを詠んでいる。(鹿取)
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写真入り 馬場あき子の外国詠 136(ネパール)

2021-01-27 15:11:56 | 短歌の鑑賞


   ジョムソン街道を行く隊商、ホテルマウンテンリゾートを降りたところで出会った
   周囲にいるリュック姿はわれわれの同行者



 ホテルでニルギリの上に昇る満月を待っているところ、背景に見えているのがジョムソンの街
 同行者によると夜中に狼の声が聞こえたそうだ



          ジョムソン街道から撮ったジョムソン飛行場

※wikipediaで「ジョムソン飛行場」を見ると、素晴らしい飛行場の写真が見られます。
 下のURLは旅行記ですが、周辺の景色や山の写真が美しいです。
         https://4travel.jp/travelogue/11592578


   ブログ版馬場の外国詠 ⑰(2009年4月)
      【ムスタン】『ゆふがほの家』(2006年刊)86頁~  
      参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、藤本満須子、
      T・H、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:T・H   司会とまとめ:鹿取 未放


ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
       近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)

136 ムスタンをいづこといはん未踏峰ニルギリを仰ぐ灯のとぼしけれ

        (まとめ)
 ムスタンという土地を人に説明するにはどこにあると言えばよいのだろうか。7061メートルの未踏峰ニルギリを仰ぐ貧しく小さな村で、見える灯も乏しいものだよ、とでも言おうか。
 ムスタンはかつてムスタン王国があった地方で、今はダウラギリ県ムスタン郡といい、王国の跡が残る北側をアッパームスタン、南をアンダームスタンと呼ぶ。馬場一行が訪ねたジョムソンはアンダームスタンに属し、ムスタン郡の郡都である。ジョムソンの人口を調べたら見つけられなかった。100年ほど前、川口慧海が3ヶ月ほど滞在したマルファ村はジョムソンの隣村である。(鹿取)

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