かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

写真入り 馬場あき子の外国詠 151(ネパール)

2021-02-28 16:29:36 | 短歌の鑑賞

 ジョムソン飛行場に着いた時の馬場あき子と近藤亨、首に歓迎の印のカダという白い絹を巻いてもらっている
(角度が悪くて変に『写ってしまいました、すみません)

  ブログ版馬場の外国詠 18  
    09年5月)【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)89頁~ 
    参加者:K・I、N・I、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


151 ムスタンに生きてぶ厚き肉身を開き抱擁せり命残さん

      (レポート)
 ムスタンに生きて労働している氏の体は年齢の割にしっかりしている。と、挨拶を交わした時に感じられたのではないでしょうか。永遠に氏の思いがムスタンに生き継がれて欲しいと思われたのだと思います。(N・I)


     (まとめ)
 これは近藤氏とお別れする場面だろうか。長年、ムスタンで農業指導をして来られた氏は、精神も肉体も頑丈であった。その分厚い体で抱擁をされた作者。結句の「命残さん」は二人ともに掛かっているのだろうか。近藤氏に今後も元気でこの地で頑張って欲しいという思いと、自分も長生きして近藤氏の業績を語り継ごう、そして自分は自分の出来る文学で生を全うしよう、という熱い思いなのだろう。(鹿取) 
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写真入り 馬場あき子の外国詠 149(ネパール)

2021-02-27 17:52:01 | 短歌の鑑賞

  杏の木で縁取られたシャン農場研修センター、手前はカルガンダキ河を渡る馬たち


         シャン農場研修センターの建物の一部

  ブログ版馬場の外国詠 18  
    09年5月)【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)89頁~ 
    参加者:K・I、N・I、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放

149 開拓はなほ哲学とほほゑみぬ標高三千六百のガミ農場に

      (レポート)
 現状に飽きたらずになお高地を目指す、戦争体験者(たぶん)の開拓魂は氏の生きる証なのだと思います。(N・I)


     (当日意見)
★この歌と戦争体験と何か関係がある?歌の言葉にそって解釈しないとダメじゃない。
   (佐々木実之)
   

     (まとめ)
 ほほえむ主語は近藤亨氏である。70歳を超えて私財をなげうちネパール、ムスタン地方の農業発展に尽くされ、学校や病院も多く建てられた。そして3600メートルのガミ農場に稲を稔らせることに成功された。そんな近藤氏に、なぜ不可能と言われた高地に稲を栽培しようなどと考えられたのか、作者が尋ねたのだろうか。すると「やっぱり哲学ですなあ」と言って氏はほほえまれた。この歌の背後にはその情熱に感服している作者の顔が見える。ちなみに、馬場一行は標高2700のシャン農場を見学したが、ガミ農場まで訪ねることはできなかった。(鹿取)


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写真入り 馬場あき子の外国詠 148(ネパール)

2021-02-26 20:03:34 | 短歌の鑑賞

シャン農場のりんご園、11月なので葉が紅葉していた。ここでは写っていないが背景には白いニルギリが聳えていた

  ブログ版馬場の外国詠 18  
    09年5月)【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)89頁~ 
    参加者:K・I、N・I、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


148 ムスタンの林檎を食めばしぶきしてさびしきヒマラヤの水匂ふなり

      (レポート)
 日本のように水が豊富ではない土地で作られた林檎を一口かぶり、その思いの他のみずみずしさに作者独特の感性の表れがさびしきヒマラヤの水匂うと表現されて素晴らしいと思いました。(N・I)

     (まとめ)
 ムスタンのシャン農場でもぎたての林檎をいただいたが、ほんとうに水分たっぷりのほどよい酸味と甘みがあって美味しかった。「しぶきして」というところに、いかにもみずみずしい感じが出ている。リンゴが含むヒマラヤの水を「さびしき」と形容しているが、荒涼とした砂礫ばかりの風景の中にあって、言われてみればで「さびしき」としかいいようのない水なのであった。(鹿取) 

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写真入り 馬場あき子の外国詠 147(ネパール)

2021-02-25 19:38:32 | 短歌の鑑賞

 シャンン農場の鶏小屋、放し飼いで林檎の木の根元を駆け回っていた

  ブログ版馬場の外国詠 18  
    09年5月)【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)89頁~ 
    参加者:K・I、N・I、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


147 ムスタンのシャン農場にかけろゐて貴種のごと生む卵のひかり

         (レポート)
 古語であるかけろと書くことによって、その地にとっての鶏の貴重さが表されている。たぶん放し飼いなのでは。村人達にとっても栄養源の光そのものです、卵は。(N・I)



         (まとめ)
 前作(ムスタンのシャン農場の鍛冶男まづ火を生めり鞴を引きて)に続くシャン農場での属目。鶏が放し飼いになっていて、広い林檎園などを駆け回っていた。溝や畝などをひょいと跳び越える姿を目にしたが、なるほど女王のような風格があった。卵を生む場所は決まっていたのだろうか。しかし、その輝かしい卵が住民の口に入るかどうかは聞きそびれたが危ういのではないだろうか。公的な農場のものだし、農場の貴重な現金収入源でもあるだろう。(鹿取)  
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写真入り 馬場あき子の外国詠 146(ネパール)

2021-02-24 17:36:40 | 短歌の鑑賞
 
       シャンン農場、鞴で火をおこす   


  ブログ版馬場の外国詠 18  
    09年5月)【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)89頁~ 
    参加者:K・I、N・I、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


146 ムスタンのシャン農場の鍛冶男まづ火を生めり鞴を引きて

        (レポート)
 現代においても火を起こすことは神聖な事、その地にあってはなお鞴を使う火の色にも懐かしく思われたのではと思います。(N・I)


      (まとめ)
 ムスタンとはジョムソンを含む広域の名称。標高2700メートルのジョムソンに近藤亨氏が代表するNPO法人が運営しているシャン農場がある。全て自給自足で、農場で使う様々なものを手作りしていたのだろう。農場の一画にある鍛冶の現場も見学させてもらったが、鞴で火をおこしているところだった。戦後の田舎育ちの私は鞴というものをここで初めて見たが、馬場には懐かしい風景だったのだろう。「火を生めり」というのが、いかにも厳かで力強い描写だ。感嘆の声を上げながら見ている作者が見えるようだ。アフリカで馬場が詠んだ次の歌が参考になる。(鹿取)
 われ昔鍛冶屋の友ありその祖父の打つ鎌の火を見てうやまひき『青い夜のことば』
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