かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 286(中国)

2019-06-30 18:33:56 | 短歌の鑑賞
 ブログ版馬場あき子の外国詠38(2011年4月実施)
  【遊光】『飛種』(1996年刊)P125~
   参加者:N・I、曽我亮子、藤本満須子、鹿取未放
   レポーター:N・I 司会と記録:鹿取未放


286 糸杉は太りしばしばも道に立ち人死ねば柩となるをトルコに

        (レポート)
 糸杉は天にも届くほどに伸びる大樹。そんな木が折々の道に立っている。戦さの長かった歴史の国から、この木も棺の材料になったのだろう。(N・I)


     (当日意見)
★杉や檜で日本でも棺を作る。(藤本)
★「柩」は、前年にトルコ旅行の途中亡くなられた義理の妹さんからの連想もあるのかもしれない。
 ゴッホの絵などから糸杉は細いものと思いこんでいたが、ここの糸杉は柩を作れるくらい太って 
 いて、道ばたのそこここに立っている、というのがちょっとした驚きだったのだろう。かなりの 
 字余りだが下の句は気にならない。上の句は「も」をわざと入れている。(鹿取)


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馬場あき子の外国詠 285(トルコ)

2019-06-29 22:16:48 | 短歌の鑑賞
 ブログ版馬場あき子の外国詠38(2011年4月実施)
   【遊光】『飛種』(1996年刊)P125~
   参加者:N・I、曽我亮子、藤本満須子、鹿取未放
   レポーター:N・I 司会と記録:鹿取未放


285 いすたんぶるにこほろぎ啼くをひつそりと聞きて夜半より街にしたしむ

      (当日意見)
★今までトルコに来て何かしっくりいかなかったが、この歌は違うという。当時のトルコはどうい
 う国だったのか?トルコの歴史について何かがある。(藤本)
★何かがある歌は、この後たくさんでてきます。これは確かにほっとさせる歌ですよね。(鹿取)


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馬場あき子の外国詠 284(トルコ)

2019-06-28 18:06:40 | 短歌の鑑賞
 ブログ版馬場あき子の外国詠38(2011年4月実施)
  【遊光】『飛種』(1996年刊)P125~
   参加者:N・I、曽我亮子、藤本満須子、鹿取未放
   レポーター:N・I 司会と記録:鹿取未放

284 黒海をみにゆきしことクルーズの予定になしひみつのごときよろこび

          (当日意見)
★黒海はロシアの影響下にあるので、なかなか見られないのだが。(曽我)


            (まとめ)
 トルコ晴れの日にボスポラス海峡クルーズをしたのであろう。「クルーズの予定になし」とあるのはクルーズで黒海まで見にゆけるとは思わなかったということだろう。思いがけず黒海まで見られたので感激しているのだ。「ひみつのごときよろこび」には現状の政治的なもろもろの思惑があることを暗に受け止めている。ネットの旅行案内や旅行記を見ると、往復3時間程度の当日申し込みのクルーズもたくさんあるらしい。フェリーの到着地点から歩いた丘の上から黒海を見渡せるポイントもあるようだ。(鹿取)

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馬場あき子の外国詠 283(トルコ)

2019-06-27 20:13:09 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
  【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   

283 忘れてしまつた歴史は思ひ出さずともぼすぽらす海峡ゆくトルコ晴れ

     (当日意見)
★「思ひ出さずとも」と言っているが、むしろ思いながらみている。(崎尾)
★高尾太夫の「忘れずこそ思ひ出さず候」も思い合わされる。(藤本)
★まあ、高尾太夫ほど切実に思い詰めている訳ではないから……通過するだけの旅行者だから、自
 分はよそ者であるという自覚も働いていると思います。(鹿取) 


      (まとめ)
 アジアとヨーロッパの接点にあるトルコの地は、両大陸の権力者が覇を競った舞台であった。まず紀元前1700年ころ、ヒッタイト人が帝国を築いた。しかし紀元前1200年頃にはトロイ戦争に破れ、この帝国は滅びた。その後は、フリギア王国、リディア王国、ヘレニズム、ローマ帝国、ビザンツ帝国、セルジューク朝、オスマン帝国と変転して1923年現在のトルコ共和国が誕生した。
 それら気の遠くなるような歴史の時間の一端が思いをかすめているのだろう。「思ひ出さずとも」の後に「よし」が省略されている形。こう言ってしまったからには当然トルコの歴史の様々を思い出しているのだが、興亡の哀しい歴史はしばし忘れてトルコ晴れの海峡クルーズに身をゆだねていようというのだろう。既に鑑賞した「歴史の時間忘れたやうな顔をしてモスクワ空港にロシアみてゐる」(スペイン旅行途上の歌)も同じような作りになっている。ただ、ロシアの場合は(トランジットなのでほんの短い滞在だが)古い歴史と共に目の前のロシアを興味津々の眼で見ていた。このトルコの歌ではもっとゆったりと風景に身をゆだねている感じだ。「ばすぽらす」のひらがな表記も281番歌(うすきゆだるに焼き鯖買ひて頬ばるをたれもとがめず柳が散つて)の「柳が散つて」と同じような放埒さを許す開放的な気分を出している。(鹿取)

 

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馬場あき子の外国詠 282(トルコ)

2019-06-26 20:58:27 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
  【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   

282 沈黙せよ旅のかがやく船着場トルコのかもめ啼きかはすまで

     (当日意見)
★「沈黙せよ」は自分時自身に言っているのでしょう。心をすませよう、というくらいの意味では
 ないですか。旅の心弾む船着き場の風景の中にいて、カモメが啼きかわす声を聞こうと思ってい
 る。ほんとうはカモメの奥にもっと深いその国独自の何かを感じ取ろうとしているのでしょうね。
  (鹿取)



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