宝満山研究会(山岳宗教遺跡の保全と研究)

大宰府の北東に聳える宝満山の歴史的価値を掘り起こし、山の保全を考える会です。

白山登拝記録11

2007-08-20 | Weblog
白山登拝記録11
(白山室堂センター)

7月30日(月)
14:30 
夕食チケットの買出しに室堂センターへ出かける。
受付は登山を終えた人々が押し寄せていてた。
チケットを受け取るのに一苦労する。
出かけたついでに、暖かいコーヒーを一杯。
ゴミ削減のため、マイカップ持参はお約束。



室堂センターでは毎日700名を超える登山者に見事に管理されたトイレ
や柔らかい毛布と暖かいご飯を提供してくれる。
食堂に売店、郵便局、診療所と設備は充実している。
現在の室堂センターは平成14年にリニューアルオープンされ、
運営管理は白山比神社内にある財団法人白山観光協会が行っている。
(参照 http://www.kagahakusan.jp/)
法人化される以前は白山比神社の神官、舞女さま達が、ご奉仕という形
で室堂の管理運営を行っていた。
現在の室堂は開山神事から始まり、毎朝の日供祭と神域として護られてきた
白山奥宮の歴史とその存在なしにはありえない。



(白山診療班)
16:00
外は相変わらず、ガスっていて寒さが増してきた。
白山は夜になると5度くらいまで気温が下がる。
奥宮に戻ると、みんなは体を休めながら談笑をしていた。
さっきまで指先だけに感じていた寒気が両腕全体に広がっている。
再びストーブの前で温めてみたが、治まらず、背中に鈍痛が走る。
「これはちょっとまずいなぁ。貧血かな。」
携帯用カイロを使い、さらに体を温める。

17:00
冷え切った体に待望の夕食。


寒さのせいで、少し気分が悪かったが、無理やりでも食べきった。
「これを食べとかないと、きっと明日下山できない。」

18:00
別山に行っていたメンバー2名が無事帰還。
夕食チケットを手渡したが、顔面蒼白の様子に、疲れ切っている2名から心配される。
一人早めに床についたが、寒気は取れずどんどん気分が悪くなる。

18:30


ガスが晴れ、雲海に写る美しい夕日が白山の麓に広がる。


一方、悪寒で起き上がれなくなってきた。
様子を見かねたメンバー達によって、ついに室堂センターの診療所
に連れ出されることになってしまった。
白山奥宮から急患が診察に行くという連絡が室堂センターに入る。
室堂センターの方に診療所へ案内される。
診療所では金沢大学医学部学生の羽場さん(6年生)と藤田さん(3年生)
の診察を受ける。
問診の後、脈拍と酸素飽和度を測られ、高山病でないことが判明。
熱を測ると37.5度。
山に来てからの睡眠不足と体が冷えたことによる
風邪の引き始めだろうとのことだった。
今晩は大事を取って、診療所に泊まることになった。
ストーブが焚かれた暖かい部屋で、清涼飲料水と薬を手渡された。
診療所にいる安心感とシングルベットの厚い布団のおかげで、
ぐっすり眠ることができた。

7月31日(火)
3:40 
奥宮の方向から「ドンドンドンドーン、ドンドンドンドーン」
と太鼓を叩く音がした。

「あっ!今日はお日の出が拝めるんだ」

寒気はちっとも感じず、お腹が空いてきた。
熱はすっかり下がっていた。

「これで皆と無事に下山できる!」

診療所を後にする時、下山後の様子を知らせて欲しいと追跡調査の紙を頂いた。



診療班のお二方、白山奥宮さま、室堂センターの方々、
心配をおかけしたメンバーの皆様に支えられて、
私は無事下山することができました。ありがとうございました。

(今回、お世話になった白山診療所について)
白山診療所は石川県の要請で金沢大学医学部白山診療班という組織で開設されている。
白山国立公園内で夏山登山者や従業員の緊急疾病治療が目的である。
開山中は毎日診療が行えるようにと2~3日交代で、医師や学生が登山して来られる。
土日は医師が居ることが多いのだが、平日は医学部学生さん達が診療所で活動されている。
この診療所では年間400名以上の患者の診察が行われている。
http://www.geocities.jp/hakusan_shinryouhan/index.html


第11回例会報告2

2007-08-20 | Weblog
第11回例会報告2
2007年8月18日

伊藤博紀様ご発表「宝満山護持と登山形態の変遷」
の質疑応答

Q;九重の小屋の管理を10年したことあるが
 やはりトイレの管理が大変だった。
 トイレを有料化してはどうか?


A;お金がかかっているのは確か。
 バイオになればさらにいくら経費がかかるが
 わからないところはある。
 有料化するか否かは迷っている。


Q;有料化するとトイレ以外の場所が
 汚れるのではないかという懸念が出る。
 登山口の一の鳥居あたりにちゃんとした
 トイレを整備してはどうか。

A;それが理想と考えるが
 市などの助成がないとできない。

Q;登山者の推移はどうか?

A;昭和40年代は大学のワンゲルブームで
 大学生が頻繁にテントを張って入山していた。
 60年代以降はそのブームが去り
 小屋の宿泊自体も少なくなった。
 平成10年代になってテントを持ち込む
 親子連れが見られるようになった。
 売られている装備が軽くなったからでないか?
 現在では元気な若い女性が増えている。

Q;トイレの浄化された水は最終的には
 自然流下していると聞いたが
 山内の聖水の水源をおかしている状況は無いか?

A;地理的にそれはないと考える。
 近世(江戸時代)に山伏の25坊が山中にあった時より
 現在のほうがし尿という点ではよほど清潔な状態と思う。
 水場に関しては「閼伽の井」の水は飲まないようにすすめている。
 登山者が犬を連れてきて飲ませたり
 入ったりしているため飲まないほうが良い。
 沢の水も大腸菌ゼロとはいいきれない。
 環境の変化でイノシシが増えており
 沢近くで泥浴びをしている。

Q;登山者のマナーの変化はどうか?

A;登山者の数が増え基本的な山のマナーがぶれている。
 近道を勝手に伐り開く話はしたが
 登拝道の石段脇の雑木を伐り払う人がいる。
 本人は親切心でしているとおもうが
 その雑木で石段が保たれている側面がある。
 伐り払った後に水みちが出来て
 石段が危うくなっている。


Q;吉田屋敷近くに見晴らしの良い箇所ができたが
 あえて伐り開いたのか?

A1;それもやった主はわからない。
 基本的には樹木など自然のものは
 手をつけないほうが良いと考えている。
 反対に石段などの人工物は手を入れなければならない。
 四六時中山内での人の活動を見張っているわけではないので
 皆で啓発し続けてなんとかする他は無い。

A2;休堂から上は基本的に竈門神社の境内地であり
 保全の対象になって木も伐ってはいけないところ。
 伐っている人に出くわして注意すると
 逆に怒る人がいる。理屈を理解しようとしない。
 啓発を続けるしかないと思う。


Q;山内の土地の名称について
 仏頂山の所の道を「うさぎ道」と発言したら
 本来はなかった名称とご指摘をうけた。
 竈門神社でいいからしかるべきところが
 看板でも建てて正式な名称を浸透させてはどうか?

A2;一個人がつけた名称が通称とはいえ
 使い続けられるのはどうかと思う。
 近世以来使われてきた名称が大事だと思う。
 看板は金銭面での問題もある。(だれが置くのかも)
 この会で地図の作成をして配るようにしている。
 また、確定できないものもあり
 文献などをよく検討しなおす必要もある。
 今後の取り組みとしたい。

(記録;山村)

※ A2は事務局の応答



後半は7月末に研究会でおこなった加賀白山の
スライドを交えた登拝報告会をおこないました(事務局小西、山村)。

登拝にご参加いただきました皆様。
お疲れ様でした。
また、道中での貴重な写真を整理し
例会に間に合うようお届けいただき
感謝しております。ありがとうございました。
(本ブログでも活用させていただいております)

次回例会は10月20日の第三土曜日を予定いたしております。
フィールド・ワークの企画もあり
詳細が決まり次第ご連絡いたしますので
お楽しみに!