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ロシア中銀緊急利上げするもルーブル安止まらず

2014-12-16 23:15:59 | 欧州情勢複雑怪奇

2か月ほど前、原油安、ルーブル安でロシア経済は大変だという騒ぎの中、財政としては原油安でもルーブルが連れ安していれば別にいいのでは?と書いた。

ロシア、通貨防衛して金を貯め込む

予想通り11月末の集計でロシア財政は230億ドルの黒字、この金額は昨年、一昨年より大きかった。2.5兆円ぐらいですかね。(http://www.bloomberg.com/news/2014-12-11/ruble-consolation-gets-putin-record-oil-income-chart-of-the-day.html

その上で、その黒字部分をインフレでお困りの一般人、わけても年金増額にあてようかな、とかいう話があったり、欧州との制裁のかけあいで輸入品が止まっているものについて、メドヴィ―ジェフ首相が、代替できないものは何もないよ、とか、物価上昇や為替変動でも落ち着くようにみたいなことを国民向けに語っていた

と、今日ロシア中央銀行が政策金利をいきなり6.5%も引き上げて17%にするという、殆ど異次元の決断を真夜中に行い、そこからガガッとルーブルは2時間ぐらいで10%、数時間で12%程度あげたが、それもつかの間、また大幅な売りあびせがはじまて最安値を更新し続けた(多少止まってきたけど)。

10%以上動いたので上でも下でもレバレッジで死んだ人も多いんだろうとは思うけど、最終的にどこまで行くのかは目下不明。

まぁその、原油価格が下げたことからルーブルが売られてます、ってのは報道向けの理由の一つにすぎませんね、というのが文字通り見えて大笑い。これだけ金利が上がれば多少ルーブル売りが収まるのが経済原則にかなった行動なわけだけど、これを機にさらに売り浴びせ、なんとBBCなどは30分も立たないうちに、ロシア中銀の試みは失敗、と大騒ぎ、英テレグラフ紙は、ロシア経済の崩壊をみようと「ライブ」のページまで出来ていた。なんかマレーシア航空機事件の際の段取りを思い出した。あの時も内容が知られる前から報道を走らせたのはBBC。

ドル/ルーブルの30分足のチャート。赤いのがルーブル買い、数時間で最初以上にルーブルが売られている。

 

■ 何をするつもりなのか

おそらくルーブルは売らせ続けるんだろうという観測が結構前からあって、私もそうなのかなと思ってたので、なんでここで金利を上げたんだろうというのが今日の謎といえば謎。

ロシアの場合、中央銀行改革が一つの関門になるだろうことから、この動きによってルーブル安が収まらないことを根拠に中央銀行に改革を求めるのかしら、と思ってみたりもする。

ルーブル急落止まらず、1ドル=80ルーブル台-資本統制の観測
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NGNZU46K50YU01.html

 

そこで思い出すのは、1週間ぐらい前ロシアの政府に近い著名エコノミストのおじさんが、中央銀行を痛烈に批判していて、わけても金利を10.5%に引き上げたことを批判していた。バカは泥棒より悪い、とか言って凄い批判の仕方だった。

その論文の中には90年代からの国内の動きの中で反ロシア的行動をしていたやつら、つまり儲けをみんな外に持って出てしまうやつらがいたし、今もいる、問題はその筋道というかルートを塞ぐことだとして各種の処方箋も提示されていた。資本規制方向を目指している一団がいるということなんだと私は理解している。で、そのための重要なステップとして現在の中央銀行に集うエコノミストらをどうやって放逐するか、という試みがあったりするんでしょう、多分。しかし、それすらも煙幕だったりするのか? など実のところこのへんは興味しんしん。

単なるルーブル安じゃないっすね。

 

■ 欧州との戦い?

それはそれとして、これでロシア経済が崩壊する~とか言って回ってる人が世界中にいっぱいいるけど、でも、資源持ちで、適度な額の外貨は原油、天然ガス売買から途切れなく入って来る、国家財政に余裕のある国を崩壊させるって大変だと思う。国民は耐久力のあることにかけては世界有数だし。

で、ルーブル安で困るのは、インフレとドル・ユーロ建て債務を持っている企業、ルーブルで稼いで本国に利益を持ち帰る企業ということになるんだろうけど、消費者向けのインフレの話は現政権の高支持率を背景にちょっと待て、で待たせられるでしょう。
※ とりあえずのインフレ対策としてロシアの人々は高価な商品は今のうちにと買い物に大急ぎらしいけど(日本でこそ欲しいこのインフレ期待^^;)、過去20年間の最初のようなパニックにはなってないらしい。制裁がらみで供給が足りてない状態でもあるから、製品によっては品物持ってけば必ず売れるような状態かも。大型投資の不要な、物があまってる企業の人、これってチャンスっちゅーんじゃないですかね?

外貨建て債務の方は、政府が選択的に救済するところと救済しないところを決めて、あとは各企業の好きに経済行為してください、となったら払えない企業も出て来るだろう。すると困るのは債権者たる欧米の銀行。救済に際しては、お前の手持ち外貨はルーブルに替えろ、とかいうのを条件にするとか、ドル資金とお前の株を交感しよっか、とかとか。

ルーブルで稼いでいる外資企業の方は、もうロシア市場ではあかんのと違いまっか、という感じではなかろうか。

ロシアルーブル安、西側企業の業績に打撃
http://jp.wsj.com/articles/SB11133530172994754599304580339730444980308?mod=_newsreel_3

利益見通しを下方修正してもしてもルーブル安が止まらない状況ですので。

特に打撃が大きいのは、米国企業以上にロシアへの依存度が高い欧州の企業だ。デンマークのビール大手カールスバーグは今年、これまでに利益見通しを2度引き下げた。株価は18%超下落している。アナリストの多くは同社のロシア事業について、来年の成長がルーブル安のため打ち消されるとみている。

こんな感じで、外資企業はどれだけ値上できるか、どれだけロシア庶民がついてこれるかにかかってるけどそれ以上にルーブルが安くなったら撤退していくことも視野に入るでしょう。で、外資とはこれまでのところでいえば欧州企業が圧倒的に多いと思うので、これは欧州経済へのじんわりとした打撃になるのではなかろうか?

その間、ロシアはトルコだのインドネシアだのインドだの中国だのというところから食料を輸入して(このへんの通貨との間ではドルとの間のような急落はないからインフレ率の緩和に役立つ)、それ以外の物資はなんでもいいからとにかく国産化推進、という感じか。いやだから、これって周辺国無茶苦茶チャンスでしょう。

そういうわけで、ルーブルの売り浴びせって、なんか欧州企業が一番損をしそうな気がするんですけど、なんでイギリスのメディアが喜んでいるのか謎だ。

ルーブル売り浴びは、ヘッジファンドが新興国を狙う際にやるように売り浴びせて外貨準備高を取り崩させて、金の持ち高を増やす試みも挫折させ、みたいな感じに見えたことは見えたんだけど、でもロシアとヘッジファンドというかユダ金さんというのか、この組み合わせってそんなウブな話じゃないでしょ? で、とりあえず、ロシア中銀は変動相場制に移行したのでそこからはフリーフォール状態で現在に至っている。

ここからはどちらが先に降りるかのチキンゲーム。

ロシアは本当に狙われているのか、それはロシアの焦土作戦じゃないのか、など考えてしまうものがある。


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