英テレグラフ紙の人気コラムニスト、アンブローズ・エバンズ=プリチャード(Anbrose Evans-Pritchard)が、テレグラフらしいっちゃらしいんだけど、ドイツはビスマルクになろうなんていう色気を出してロシアと秘密協定状態だな、という記事を書いていた。ドイツの反ユーロで知られる党AfDの党首Dr Gaulandが語るロシア政策はまさしくビスマルクじゃないか、と。
趣旨としてはそれだけじゃなくて結局EU批判ではあるんだけど、やっぱりロシアびいきになってるドイツをおちょくろうと思ったと思う。ところが案に相違して、下にだらーっとつけられたコメント欄で、ドイツ系、イギリス系の人たち(だと思う)から多数賛成の声が寄せられる展開になっている。
Ambrose Evans-Pritchard
Germany's Bismarck temptation and secret pacts with Russia
http://blogs.telegraph.co.uk/finance/ambroseevans-pritchard/100025549/germanys-bismarck-temptation-and-secret-pacts-with-russia/
"Germany and Europe have no interest in a further weakening of Russia," said Alexander Gauland, AfD's foreign affairs chief. "Germany's relations with Russia should be managed with meticulous care."
「ドイツと欧州には、ロシアのこれ以上の弱体化はドイツにとっても欧州にとっても利益になりません。ドイツのロシアとの関係は慎重に進められるべきです」と語るこの党首が示す考えは、まさしく1887年の独露再保障条約だろう、と。Dr Gaulandは、実際、ドイツはロシアと再保障条約の原理を保持しているべきだと明言しているらしい。
この条約は、ドイツ帝国とロシア帝国間で結ばれたもので、自動参戦式の同盟というより、
「締約国の一方が第三国と戦争する場合、他方が好意的中立を守る」ってこと。二正面を抱えなくてすむので基本的にこれでまず十分。
で、それにより、
ドイツは、フランスが攻めてきてもロシア側は安心、
ロシアは、バルカンを巡ってオーストリア・ハンガリー帝国と戦争になっても北の方のプロイセン領方面から攻められることはない、と。
知られているように、この状態をウィルヘルム二世が更新しなかったために、1894年露仏同盟が締結されて、ドイツが普仏戦争以来孤立してたフランスに逆包囲されたみたいな恰好になっていく、と。
Dr Gaulandはその上でこんなことも言っちゃう。
"The Germans sometimes forget that Russia played a positive role at key moments of German history, saving Prussia from destruction. It happened in 1763, 1806/1807, 1813, in Bismarck's unification of the Reich in 1866/1870, and in German reunification in 1990/1991."
「ドイツ人は、ドイツ史の重要な局面でロシアが果たした積極的な役割を時々忘れています。プロシアを破壊から救ったわけです。1763年、1806/1807年、1813年、1866/1870年のビスマルクのドイツ統一時、そして、1990/1991のドイツ再統一です。」
これに対して、アンブローズは、1991年のドイツ再統一を入れたことに対して、おかしなことを書くよ、みたいなことを書くわけだけど、おかしくないでしょ、とコメントされてる。
1991年のドイツ再統一の話は、知られているようにフランス、イギリスはドイツ再統一に大反対だった。
で、その際の行動もしくは発言として、どこまで証拠があるのか私はよくわからないんだけど、巷間伝えられているところでは、イギリスのサッチャーはゴルバチェフに戦車を出して東ドイツの動きを止めろと言ったとか言わなかったとからしい。
フランスのミッテランの方は、フランスは露仏同盟を結ぶしかないと言ったとか言わなかったとか。
そういえば、この間何回か、まぁフランス人なんだろうけど、いつの日かまたロシアと同盟できるといいのに、みたいなコメントを読んだ。戦争するんかい(笑)と思った。でも、このへんの国は秘密協定で名高いので、参戦しないとか、武器を送らないという中立状態を保持するという内容ならできなくないし、アンブローズはだからこそドイツとロシアの関係をどういう具合に疑ってる(昔はイラク戦争、リビアもシリアも反対、あれっと気がつくとロシアに対して中立してないか、と)。
しかしやっぱり露仏同盟はケガの元でしょう。ウィルヘルム二世は露仏同盟を組まれている状態の危険性に気づいていて、ロシアの皇帝ニコライ二世に、それ解除して、ね、ね、と言うんだけどロシアの閣僚がダメという。結果的にみれば、ウィルヘルムとニコライという従兄同士の感は正しかった。二人とも第一次世界大戦を契機として皇帝の座を失ったんだから。
神聖同盟に勤しむべし。
神聖同盟は死なず?:オーストリアとロシアの会合
なんでかっていうと、バルカンが落ち着くにはこれしかないし、バルカンからロシア欧州部を過激にしないで、中東から切ることこそ結局欧州文化の保全なんだと思う。その意味で、本来スラブ繋がりでロシアに深いところを対露同盟たるNATOに入れて、しかもトルコという欧州要素が殆どないところを同盟にしてロシアを撃とうというアイデアは、欧州にとってバカとしかいいようがないと私はずっと思ってる。
そう考えると、アメリカというよりアメリカの後ろにいる支配層の人たちって文化・文明の破壊者なんだよね。そんなものを取っ払うことこそ素晴らしい、と。抵抗するなら原爆でも空爆でもやっちまえ、みたいな。