フランスの大統領だったジャック・シラク氏が亡くなったそうだ。
ジャック・シラクは最後のフランスの大統領だったな、などとも言いたいし、考えてみれば the West最後の大統領だったとも言えそうな気がする。彼以降のthe Westの各国のリーダーは、みんなステルス支配層の小姓みたいなものだから。
でまぁ、ジャック・シラクといえば、今日誰もが思い出すのは、イラク戦争に猛然と反対したフランスを率いた大統領であったこと。
それからあらぬか、アメリカの記事の見出しでは、
米国に反抗したフランスの大統領ジャック・シラク死去
Jacques Chirac, French President Who Defied US, Has Died
Bloomberg
Jacques Chirac, former French president who challenged US ...
CBS News
Ex-French President Jacques Chirac, Who Opposed the U.S. on Iraq Invasion, Dies at 86
TIME
みたいな書き方が見える。defy、challenge、opposeって他社と重ならないように見出しを調整したんだろうかと思えてここはちょっと面白い。
で、これは、言うまでもなくフランスとフランス国民にとって名誉なこと。当時、フランス国民からのこの件でのシラクの支持率は9割ぐらいあったと記憶する。
2003年のイラクへの侵略戦争が語られるたびに、それに抗した人の名としてシラクの名は記憶されるでしょう。
これですよ、これ。この嘘つき三昧の基地外グループを、マジで支援していた国と人々がいた。その時、反対だと声をあげて立ち上がった人たちは、他のすべての問題を脇においても、そこは素晴らしいと言われるべき。私はそう言います。
RTにも出てたけど、シラクはイラク戦争を巡ってアメリカの政策に盲従する東ヨーロッパ諸国を激烈に非難したことも有名。ここから、独仏を「古いヨーロッパ」、東欧あたりを「新しいヨーロッパ」とか言う話になっていった。ラムズフェルドが焚き付けたんだっけか?
いやほんと、実に酷い時代だった。あんなネオコン野郎たちに世界をひっかきまされて、なんの罪もないイラク人をぶち殺して、なんのことはない、要するにそこにアメリカの巨大な基地がそこに出来て、中東支配の拠点を作っただけ。他には何の意味もない。
世界支配以外のなんの意味もないのに、信じられないことに、ポーランド、ハンガリー、チェコあたりが乗って、独仏を非難しまくっていたのだった。
今頃どう考えてるわけ?
でもって、この構図はNATOの東方拡大問題とももちろん密接で、独仏あたりの主に外交官がじわりじわりとなんとかして拡大に反対していたのが過去30年の真相でしょう。そして、いつもいつも、笛吹いて騒いでいるのがいわゆる東欧諸国。
ここらへんの国々はアングロの世界制覇体制において周辺諸国に多大な損害を与えるために存在しているようなものなので、今後アメリカの影響力の低下と共に自らの不名誉な歴史と向き合うことになるでしょう。
もちろん日本もまったく同じ。アメリカが強いことをいいことに、そっちにくっついて中露を貶める係りを長いことやっているわけだから、アメリカの影響力が減退したら、周辺諸国との間の不義理に向き合う必要に迫られる。
■ 日本のシラク評
で、その日本のシラク評。
まず第一に親日家だそうだ。まぁそうなんだろうけど、この人を語る上でそれってどれぐらい重要なのだろうか? わかりません。
シラク元フランス大統領が死去 86歳 親日家(産経)
シラク元仏大統領死去=イラク戦反対、親日家-架空雇用で有罪判決も(時事)
今も語り継がれるイラク戦争開戦反対 シラク元フランス大統領死去(毎日)
3つのパターンがそれぞれの立場を表しているようにも思う。産経はそこしか見たくない、時事は万遍なく、毎日はやっぱりそこでしょう、みたいな。
その中で、私としては、朝日のこれが気になる。
群を抜いた日本好き 時代読み切れず、停滞招いた側面も
https://www.asahi.com/articles/ASM9V6GZKM9VUHBI02Z.html?iref=pc_extlink
有料の壁に阻まれて最後まで読めてないですが、「時代読み切れず、停滞招いた側面も」というのは、何を表しているのか気になる。
まさか、イラク戦争に反対してアメリカの怒りを買ったのが「時代を読み切れず」なんでしょうか? ドゴール主義など捨てて、アメリカ様の一極支配システムこそすべてだ、みたいな?
朝日は、基本的にブレア主義みたいな人たち、すなわち第三の道みたいなものを煽ってこの30年を停滞に招いた人たちだと私は思っていたりするので、「時代読み切れず」の意味がそこだとしても驚かない。ここが「ナチ・リベラル」の総元締めのようなものだと私は思ってる。
そして、そもそも、日本国首相は2015年においても、サダム・フセインが大量破壊兵器を持っていることを証明できないからイラク攻撃は正当だ、という意見を持ってるわけですから、日本の主要メディアがその線にのってたとしても不思議はない。
見たことない人は見たらいいですよ。17分あたり。
山本太郎vs安倍晋三 イラク戦争の検証【全19分】 7/30
これ多分、本国アメリカでさえも、現在こうも正々堂々とあれは正しかったと言える政治家は数少ないのではなかろうかと思われる。そこを考慮するとなおさら相当にスゴイ人。
まぁ大日本帝国は侵略戦争を行ってないとかいうエグイ見解を持ち続けている一族の人なので、こういうのも不思議ではないんだろうが、彼は、シラクとは真逆の意味で歴史に残るかもしれない。