パレスチナの人たちがGreat March Returnという運動を6週間やると始めたのが3月30日。あと2週間ちょっと続くんだろうと思われる。
Great March Returnを日本のパレスチナ支援の人たちは「帰還大行進」と呼んでいるようなので、私もこれを借りることにする。行進・・・ってどうなのと思うし、行進というほど呑気なものでは明らかになく、テント村がイスラエル国境に近接してきたのでここ数日は結構目が離せない事態となってる。
その間、米ロ関係は冷戦時代より酷いといわれる関係になっており、最近の動きとしては、アメリカ、ロシアの直行便はなくなる可能性もあるところまで来た。アメリカ側がアエロフロートの乗務員の滞在許可証手続きを異常に延長するなどして妨害しているため。
Russia and US may be left without direct flights due to Aeroflot’s visa difficulties
http://tass.com/economy/1000816
まぁあれだ、そのうち英米+αの便はロシア上空を通過させないとかいう話にまで行くかもね。そんなに冷戦がしたいのなら、そういうことになるでしょう。
極東方面では、しかしながら、この冷戦風味が状況の改善に役立つ可能性がある。
北朝鮮が非核化の条件として米軍の韓国駐留軍の撤退を求めないと思われると韓国が言ったというので、アメリカ(の報道)では何か喜びが走ってる。
北朝鮮、非核化の条件として在韓米軍撤退求めず 文大統領
https://www.cnn.co.jp/world/35118073.html
米国は現在、2万8000人規模の軍要員を韓国に駐留させている。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長はかねて、こうした在韓米軍の存在にいら立ちを示してきた。
だが、文大統領は記者団に対し、朝鮮半島非核化をめぐる協議の前提条件として在韓米軍撤退を求めない考えを金委員長が示していると指摘。そのうえで、撤退の要求があれば「米国にとって受け入れられない条件」になるだろうと付け加えた。
「米国にとって受け入れられない条件」になるだろうから、米軍にはいてもらってもいいです、と北朝鮮が言うというのは、それって交渉の上手取ってるのは北朝鮮+アメリカ(CIA+)だと思うんですがアメリカ(報道)的にはよいらしい。
数カ月前まで、敵だ、敵だ、戦争だ、戦争だとか真剣に言っていた人たちとはとうてい思えない。私たちいていいってよ! みたいなこの感じが大笑い。
多分、中国の習さんに歓迎され、トランプが並んで大国が話をまとめましたという絵にできるなら、このまま行こうみたいな感じがアメリカ(報道)には芽生えているのではあるまいか。
その意味は何かというと、ロシアを孤立化させられたわ! というオマケが見えるから。
そして、その他地域で無茶苦茶になってる米の評判が、東アジアの一角では非常に良いものとして残る(気がする)。よかった、私たちってやっぱり偉大なのよ、みたいな?
北朝鮮(および南朝鮮、そして中国、ロシア)にとっては、海側の勢力が朝鮮半島を土台にして大陸侵攻するみたいなプランさえなければ、国が荒れることはないんだから、南北の和解というのはそこさえクリアできれば実はそんなにハードルは高くなかったとも言える。
朝鮮の問題は、表層では米中問題、深層ではthe West vs ロシア問題。
なぜ米中が表層でしかないかというと、深層問題が存在する限り、the Westは中国を味方にする以外ないから。
したがって、ホントはこういう人たちの同意もしっかり取り付けて事は進んでいるのだが、
それはパスして、いやぁアメリカのトランプって大したものだという流れで押し切れるのではあるまいか。
■ 68年目
で、この考えは1年前にほぼ同じことを書いていたこれの現実化と言えるのではないのか。
1年前、習近平さんがプーチンに特使を送ってものすごく丁寧に親密さをアピールした。これを私は朝鮮半島で起こることへの布石ではないのか、と思ったわけ。
■ 朝鮮半島で起こることへの布石
と、上の言葉は、しかしながら、私はもう一つの含みがあるんじゃないかと一読した時から思って、ここ数日ひっかかっているので、とりあえず書いてしまおう。
それは、米・中間で、朝鮮半島を巡って近くポジティブなことがある、ってことじゃないんですかね。で、そうすると、米は折からのバカさ加減から、や~い、中国はやはり米中の大国としての道を取ったのだ、露助シネ、みたなことをやりだすでしょう。
やったところで、既に中露間の交流は、上海条約機構を発展させていることを見ても、鉄道網の整備を見ても、長期的なパースペクティブでいってるからそう簡単に終わったりするもんじゃないでしょう。
しかし、現在のアメリカが欲しいのは、とにかくイメージと宣伝材料になる利益であり、そして、ロシアを孤立化させるというテーマの追及でしょう。後者を追及することで、ネオコングループが支援してくれる、と。イスラエル、サウジ、一部米は、シリアを崩してイランを崩すとかいう戯けたテーマを今も追ってますから。(アメリカ国民が納得するテーマではないのね)
ということで、それを勘案して、くだらないところで足元を救われないよう、十二分にメディアの乗り切り方を考えてる、と。そういうことじゃないのかな。それはそれ、これはこれで、私たちのユーラシア側へのコミットに変更なんかありませんよ、と習さんはあえて表明して、ロシア当局者じゃなくて、むしろパブリックに安心を与えた、みたいな感じではなかろうか。
南北朝鮮問題:68年目
つまり、ニクソン訪中から米中が準同盟化したことからソ連弱体化を米が本格化させたという流れに持っていく気は一切ないからね、と習さんが言ったということ。
■ 69年目
で、なんでこれが68年とか69年目かというと、どうして朝鮮戦争が起こり、どうして朝鮮戦争後あの分断が長期化したかを考えるとわかる。1949年がかなりのウェイトを持った年。この年中華人民共和国が成立した。その北側には強大な陸軍を持ったソ連が控えていた。そもそも北朝鮮が(というより朝鮮全体が)日本の支配から脱したのは、ソ連がそこを蹴散らしたから。同時に、1945年にソ連が満洲を「解放」してそこを中国共産党に渡して自分はさっさと引き上げたところから、中国共産党の勝利の可能性は絶大に大きくなったわけだから、ソ連ファクターはここでも非常に大きい。
1949年にはもう一つ大きな出来事があった。それはソ連が原爆を持ったこと。これによって米の核の独占は4年で終了した。
ということで1949年というのは米にとってはかなりキツイ年だった。だからそこに至るまでの中共軍がどうも強く蒋介石はもうダメポになった(米があきらめた)時から対日政策は大きく変わって、こりゃもう日本を占領したまま戦争状態にすべしになっていく。
これを一般に「冷戦の激化と共に」とかいう非常に抽象的な語で語るのが日本の過去70年間の「通説」なわけだけど、もっと具体的に見ればアメ(もしくはthe West全体)の意図は、朝鮮がどうしたではなくて、中国をもう一回崩すことにあったというべきでしょう。南北朝鮮に外側からの足場がなくなることはなんとしても避けたかった by the West。
台湾周辺、チベットでの乱闘、そしてベトナム戦争も同じ趣旨。
だからニクソンが訪中して中国共産党と和解した時点で、よく考えれば別に朝鮮戦争も終われる可能性はあったと言えるんだろうが、当時ソ連はまだ全然強い国だし、北朝鮮も初代が意気軒高な頃だから、できる気配はまるでなかったと思う。
■ オマケ
こうやって考えてくると、米中って実はほんとに仲がいい。
どうしてこうなるのか。これは別に中国人とアメリカ人が似てるとかなんとかいう話じゃなくて、アングロシオニストの世界制覇において
中東とロシアは盗みがいがあるが、中国は盗みがない
これではなかろうか。
つまり、前者には有り余るほどの資源があるのでどうしても泥棒したくなる、欲望に火がつけられて仕方がなくなるが(治療しろ)、後者は、決して資源小国ではないんだが、なにせ人が多すぎるので泥棒するより市場にした方がいい、結果仲良くなるしか方法がない、ということではなかろうか。