DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

スレイマーニ将軍がアメリカに殺された

2020-01-03 18:15:25 | アジア情勢複雑怪奇

イランのスレイマーニ将軍がアメリカに殺された。

Commander of Iran’s Quds Force, PMU deputy head martyred in US strike 

https://www.presstv.com/Detail/2020/01/03/615224/Hashd-Sha%E2%80%99abi-public-relations-director-killed-in-rocket-attack-on-Baghdad-airport

Pentagon says Trump ‘directed’ assassination of Iran's Quds Force chief Soleimani to ‘deter future Iranian attacks’ 

https://www.rt.com/news/477354-pentagon-confirms-soleimani-killing/

 

オバマだろうがトランプだろうが、やること一緒だな、どこまで行っても卑怯で不潔な奴らというのが私の率直な感想。

スレイマーニ将軍は、シリアをアメリカが主導したテロリストという名の傭兵によって破壊しようという工作から救い出した戦いにおいて第一の勲功をあげた人。

前にこのように書いたけど、今もそう思ってる。

ロシア軍の全体としての断固たる戦いに水をさす気は1ミリもないんだが、やっぱりね、陸の上で戦う人が一番えらいんだよ。で、こういう人たちが出て来たおかげで、イラクがよみがえってるのが素晴らしい。多くの人が異口同音にスターリングラードの攻防を思い出したのにも理由はあった。

アサド大統領2度目のモスクワ訪問

 

イランのハメネイ師が、スレイマーニ将軍などダーイッシュ(IS)打倒のために戦った将軍たちを祝福している写真。真ん中のおじちゃんが伝説のスレイマーニさん。

General Soleimani congratulates Ayatollah Khamenei on victory over Daesh

http://www.presstv.com/Detail/2017/11/21/542924/Iran-General-Solemani-Leader-Da

 

 

ということなので、イランのザリフ外相が、アメリカの行動は「国際テロリズム行為」というのはまったく正しい。

そして、ISやアルカイダと戦って、大いにそれらの危険な傭兵軍団の効力を下げた人々を憎むアメリカとは、要するに自らがテロリスト国家だったというだけのお話ですね。

https://twitter.com/JZarif/status/1212946202280579073

 

この暗殺では、スレイマーニさんだけでなく、イラクのPMUの副リーダーも殺されている。要するに、ISを倒したのが怪しからんのでしょうか。

Commander of Iran’s Quds Force, PMU deputy head martyred in US strike

https://www.presstv.com/Detail/2020/01/03/615224/Hashd-Sha%E2%80%99abi-public-relations-director-killed-in-rocket-attack-on-Baghdad-airport

 

「アルカイダと歩む21世紀」に未来はあるのか、アメリカは、と何度も書いたけど結局その路線を止められない。

 

で、イランの影響力がイラクに及んでることが怪しからんとアメリカは言うけど、だったらなんでサダム・フセインを殺したんだよって話でしょう。

こうなることは目に見えていた。シーア派優位になるということは、イランの影響力が強まると誰が考えてもそうだったことが、そのように推移しているだけ。

で、多分、当時の目論見としては、それならそれでいい、だったんでしょう。大混乱させて、あちこちで殺し合いになれば、その混乱の後に俺らが優位のレジーム作れるだろうってな寸法。これをして、多くの人はカオスをわざとまき散らす米帝国と言ったりするわけだが、ふと思うに、これってユーカリみたいだ。

ユーカリは自分で自然発火するリスクがとても高いことが知られているが、それによって、あたりが丸焼けになるが、自分の種子は火に強いので生き残る。結果、あたりはユーカリ優位の森になる。他の種が共存できない侵略性植物なのだが、生育が早いというので19世紀からオーストラリア原産のものをアメリカ西海岸などなどに移植していった。アメリカ西海岸では、この森によって自然発火リスクが高まったとして(例:90年代にオークランドで例になるような森林火災があった)、別のものを植えようという声がある。

 

で、それにもかかわらず、よーしアメリカ、よーしトランプと沸き立つアメリカ人が一定数いるのもまた事実。

この意味はつまり、アメリカが主導してきたアメリカ型の民主主義なるものの敗北でもあると思う。煽られれば何にでも食らいつく人々を主要な場所には置けないですよ。

そして、ユーラシアの民はこのような人々に振り回されて自らの生き方を捨てないとならない義理はない。

 

■ 大物と小物、表と裏

さてしかしこれは何なのか。

シリア戦線の英雄を殺すのがドローンだったというところは、要するにオバマが暗殺ばっかりやっていたことと重なるのかも。

つまり、イラン相手に本格的な戦争を仕掛けるほどのリソースはない、その意思はないということではないのか、と一応考えられる。

 

これはまったくの私の感にすぎないんだけど、すぐさまペンタゴンがトランプの命令でやった、という声明を出したのは、この線が主軸だという主張なのかも。

つまり、なんせ、米中央軍、イスラエル、アルカイダ勢、どう考えても表に出てこれないことやってる英仏あたりの諜報機関勢ととっちらかった奴らが大量にいる世界なので、そこがぐじゃぐじゃやると、大国が不用意に引きずられて大戦争に向かうオッズが高まる。

これは1939年への道でしょう。

ポーランド、日本、イギリス、フランスがそれぞれ誰の命令で動いているんだか見えないような、それぞれ無責任極まるかき混ぜ方をして、最終的にどういう戦略を見通せるのか本人たちさえわかってないような恰好でイギリスがドイツに宣戦布告をしたのが後年第二次世界大戦と呼ばれる紛争の始まり。

だから、軍事ものの最終ラインを預かるペンタゴンが出張って、大統領の命令で国軍が動いたという正しいルートを表明して主導権を取ったみたいな感じだったりするのかな、と思ったわけ。

 

By Patrick J. Buchanan - Churchill Hitler and the Unnecessary War: How Britain Lost Its Empire and the West Lost the World (4/13/08)
Patrick J. Buchanan
メーカー情報なし

 

不必要だった二つの大戦―チャーチルとヒトラー
Patrick J. Buchanan,河内 隆弥
国書刊行会

 

■ 不吉な展開を予感してしまう

で、大戦争にしない代わりになる何か強力な行動を米が取るという意味では2018年の春の、シリアでの毒ガス騒ぎからシリア空爆の話を思い出させる。

とはいえ、ミサイルでもプラットフォームでも撃つというゲラシモフ(ロシア軍参謀総長)宣言がもたらしたインパクトほどの鎮静インパクトを出すことはペンタゴンにはできない、っていうのが、侵略軍と防衛軍の違いだなとは思う。

ロシア、用意しとけよ、ミサイルは行くんだ by トランプ

 

中東におけるアメリカの行動はどこまで行っても侵略行動。アメリカ大使館のアメリカ人が危険だから空爆してイラク人をぶっ殺すというのは、法律論が何と言おうと中東域の人間の神経を逆なでする効果しか持たない。

なんかこう、日中戦争時代の日本軍を見ているようだわ。日本の主張はこれこれこうだから正しいといくら言ったって、お前ら出ていけと思ってる中国人には効かないというのと一緒。

 

にもかかわらず、

エスパー米国防長官は2日、イランとの関係を巡って「状況は一変した」と明言した上で、場合によってはイランへの先制攻撃を余儀なくされる恐れもあると警告した。

両国関係を巡っては、イラク北部の米軍基地が昨年末に攻撃され複数の米国人が死傷したことを受け、緊張が高まっている。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/post-92055.php

 

とか言っちゃう。お前そこどこだと思ってるんだよ、ってお話。

あのですね、そこは敵地なわけ。つまり、人数において米兵はまったくの劣勢なわけね。そこで海の向こうから威勢のいいことを言って挑発してたら、現地の米兵、米人は敵地の中の人質になっちゃう。ベンガジがシリーズで来たらどうするの?

この無暗な強気姿勢で一体どこまで行けるというのか。つか、中はどうなってるんだろうか。

 

逆に、米軍に出て行ってほしいイラク人+αにしたら、米人のいるところに集中的にストームをかけるってのが戦略的に優位になる。スターリングラードでソ連兵がドイツ兵に接近しまくっていたことによって、空軍優位に立っていたドイツ空軍は味方を撃つわけにはいかないから、なかなか攻撃できなかった。「故事」みたいに古い話だが、基本的に今でも一緒。

 

威勢のいいことを言うアメさんを前に、何を言っているんだいと言われるかもしれないけど、今すぐにではないにせよ、シリアどころかイラクからの米の撤退さえ考えざるを得ない局面だってまんざらないわけはないという気がしてきた。

 

■ 情報供給@スプートニク

スプートニクがライブで逐一手短な情報を書いててくれて便利。

Live Updates: Pentagon Confirms Death of Quds Commander Qasem Soleimani in Baghdad Airport Attack

https://sputniknews.com/middleeast/202001031077925104-us-behind-baghdad-airport-attack-that-killed-iranian-quds-commander-pmf-deputy-leader---report/#article_item_1077927019

 


 


コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« バンデラの日、MI6、ポロシェ... | トップ | イラン・イラク危機 (2):PMU... »
最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (名無しの在日)
2020-01-03 21:57:55
>だったらなんでサダム・フセインを殺したんだよ

そうなんですよね。かの国はこの百年というもの「出たとこ勝負」的政略を重ねるだけ重ねて、結果しだいでさらに接ぎ木みたいに出自不明の傭兵だの政治的傀儡だのを投入するわけで。

結果どうなるかというと、当該地域の永い歴史の蓄積で作られた人的・文化的財富をすべてブチ壊した後の廃墟に「平和と自由」のカンバンをぶら下げる、と。
ローマ帝国のタキトゥスが史書に採録した帝国批判の言葉は、2千年後の今もそのままの形で通用しますね。
返信する
Unknown (ローレライ)
2020-01-04 06:14:41
ロシアと馴染み深いスレイマニ将軍暗殺はロシアへの挑戦である!
返信する
ユーカリ戦法 (ブログ主)
2020-01-04 13:41:15
名無しの在日さん、

そうなんです。先住民を絶滅させてから自分の国を作るという発想と一緒でしょう。
共存できない人たち。

今年もどうぞよろしくお願いします!
返信する
英雄が嫌い (ブログ主)
2020-01-04 13:44:21
ローレライさん、

そうなんですよ。スレイマーニさんが戦略家だったわけですからね。

そしてこの人を多数のシーア派が信頼していたことから今般の「虐殺型民主主義」潰しが成功してきた。

西側は人々に慕われ、信頼される大物というのは徹底的に憎いんですよ。傀儡政権以外認められないから。がんばろうユーラシア!!って感じ。
返信する
世界がイランと第三次世界大戦を心配 (宗純)
2020-01-04 15:42:52
我が安倍晋三首相ですが、ゴーンの国外逃亡(亡命)にも、アメリカ軍のイランナンバー2暗殺に対しても未だに何も言わないで、だんまりを決め込んでいる。

イランの大統領は役人のトップではあるが戦略家のスレイマーニさんに比べて明らかに格下。その大統領より偉い人が死んだのですから大騒ぎ
ツイッターで今の1位が
アメリカ Iran
カナダ Iran
イギリス Iran
ドイツ WWⅢ
フランス WWⅢ
ロシア WWⅢ
ちなみに日本だけ例外でタレントの嵐が一位だったとか。

指摘されているように、ペンタゴンの発表が何か変です。責任逃れで「私の責任ではない」と言っているようにも読める。
トランプ大統領は米軍の最高司令官なので最後の認可のハンコを押したのは間違いない事実だろうとは思うが、ツイッターが星条旗のでは積極性とかやる気が感じられない。

最新のトランプのツイッターが、
Iran never won a war, but never lost a negotiation!
4:44 - 2020年1月3日
とやはり腰が引けている。

全てのメディアが大きく報道する場合、世紀の大ニュースの場合もあるが、逆に沢尻エリカ逮捕のようにニュース自体には何の意味も無くて、大騒ぎすること自体が目的の猫だましの場合がある。
返信する
どうあれ大騒ぎ (ブログ主)
2020-01-04 17:57:42
宗純さん、

大騒ぎ目的である可能性はおおいにありますが、スレイマーニを殉教させてしまったというのは、とてつもない事態。

ひっかかったにせよトランプは馬鹿だとしか言えないです。

Iran never won a war, but never lost a negotiation!がまた火に油で、アメリカは1945年の勝利(しかし大半はソ連のそれ)以外に、どこで勝ったことがあるのか言ってみろ、グレナダとかじゃなくてな、みたいな反応を呼んでる。情けないアメリカ。
返信する
ノーモア トランプ (セコイアの娘)
2020-01-07 03:21:05
私は、もうショックで、しばらく何も言う気がしなかった。。。
超えてはいけない一線を越えたアメリカ。
もう、トランプは御免だ。再選絶対阻止。例え、他にまともな候補がいないとしてもだ。
アメリカでも、大規模な反戦デモが各地で起きている。日本でも報道されただろうか。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アジア情勢複雑怪奇」カテゴリの最新記事