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ユーラシア vs 西側:マッキンダー理論とSCO

2019-03-03 16:48:53 | アジア情勢複雑怪奇

櫻井ジャーナルさんが今回の米朝会談決裂に関するまとめを書いてらした。

 米朝首脳会談で合意に至らなかったのは米支配層の戦略から考えると必然的な結果

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201903010001/

 

で、今回のトランプの成り行きは、トランプが絵図を書いたか否かなんかどうでもよくて、結果的には、

かつてアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権はリビアと似たような交渉をしたことがある。その結果、リビアのムアンマル・アル・カダフィ政権は2003年に核兵器や化学兵器の廃棄を決定したが、アメリカは約束を守らずに「制裁」を続けた。そして2010年、バラク・オバマ大統領がムスリム同胞団を使った侵略計画のPSD-11を承認、カダフィ体制が倒されただけでなく、破壊と殺戮が今でも続いている。ヨーロッパより国民が豊かな生活を送っていたと言われるリビアの面影はない。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201903010001/

 

そう。ブッシュとリビアの成り行きのような感じになってると私も思う。カーダフィーはアメリカを信じたんですよ。だから大量破壊破壊兵器を廃棄して、付き合っていこうとした。ライス国務長官がカーダフィーと会談したあたりを私も覚えてる。新しい時代が来るかのような感じにさせて、そこを終わらせる。

が、次の政権になるとああなる。

ゴルバチョフも、レーガン、ブッシュ政権ではNATOを一インチも東に動かさないという合意で、ワルシャワ条約機構は解体されるが、次にクリントンになったらNATOは東方に拡大し、あれよあれよというまに、みんなしてソ連どころか、ロシアを憎む体制を作られて今に至る。

こうした成り行きを見て、北朝鮮が、あるいはシリアが、アフガニスタンが、イランがアメリカを信用するのか?でしょう。

いずれの場合でも、せめて、温和に、妥当にさりげなく体制を崩して、結果的にみんなが暮らせるようになるというのなら騙されてやっても悪くはないわけだが、事実起こったことをみれば、狙われたら最後、メディアを総動員した悪魔化と軍事侵攻、そして略奪、社会崩壊となる確率は高い。

こうしたアメリカ支配層の行動は20世紀初頭にハルフォード・マッキンダーがまとめたハートランド理論に基づいているように見える。ユーラシア大陸を囲むように西ヨーロッパ、パレスチナ(1948年にイスラエル建国を宣言)、サウジアラビア(サウード家のアラビアを意味するサウジアラビアが登場するのは1932年)、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ内部三日月帯を、またその外側に外部三日月帯を想定、内陸部、つまり中国やロシアを締め上げようというわけだ。そうした三日月帯の西の果てがイギリス、東の果てが日本である。日本はイギリスやアメリカにとって侵略の拠点であり、日本人は彼らの傭兵だと言えるだろう。

 この戦略を放棄しない限り中東や東アジアからアメリカ軍が撤退することは考えられない。この戦略に執着しているアメリカ支配層は朝鮮半島の平和も望んでいないだろう。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201903010001/

 

これがマッキンダーのハートランド理論。1904年にRoyal Geographical Society(王立地理学会)にあてた論文でマッキンダーが書いた理論。イギリス人の世界制覇構想みたいなもの。

 
で、現在、米軍というよりそれと一体化した西側がどう配置しているかというと概ねこんな感じ。これは米軍の基地のマップ。全世界に基地だけで800カ所、関連する小施設を含むと4000カ所ぐらいあると考えられている(調査している人たちもはっきりしたことがわからない)。
 
 
 
マッキンダーとの齟齬は、中国が取れてないことですね。マッキンダー理論は1904年、つまり日露戦争の前年に発表されたものだからその当時の知見を基にしている。中国は既に崩壊過程にあった。冷戦期の後半は、中国をソ連から離して日米と仲良しにしているので、マッキンダー理論的には大変結構な成り行きだっただろうな、などとも思う。そこから、冷戦終結という偽の手打ちをして、東欧を外して、見事ソ連を解体させた。1990年代というのは、西側にとってのピークだったといえるんでしょう。
 

ところがロシアも中国のへこたれなかった。そこで、こんな感じで現在も内陸部に向かって頑張って圧力をかけている、と。(ちょっと古い概念図)

 

 

で、こうやって考えると、ともあれ世界制覇を狙う人たちがいるとしか思えない100年間なわけですが、問題は、では諸国民にとってそれはメリットがあるのか、になるんじゃないでしょうか。

諸国民に力などない、と言い切りたい気分はわかりますが、しかし、ロシアやイラン、中国がなんのかんのと持ちこたえているのは、支配者層が利口だということでもあるけど、長期的に考えれば一般民衆が持ちこたえているからでもあるでしょう。度重なるカラー革命的誘惑にも、ロシアは一回屈したけど(ソ連崩壊)、おおむね抵抗してる。

あと、マッキンダー理論からでは見えないのは、アメリカという最大の暴力組織がユーラシアにはないというのも世界制覇構想にとっては結構なネック。

そこから、日本のアメリカ化というのが、この世界支配構想にとっての重要課題になったのではなかろうか。つまり、日本をアメリカにしてしまえば、アメリカはユーラシアのプレーヤーになるんですよ。あははは。

 

冗談のように聞こえるだろうけど、小泉から安倍が達成したことというのは、日本のアメリカ化ではなかろうかと思って振り返ってみれば、そんなに外れてないでしょ? もう有無を言わせないって感じになっちゃってるし。

 

■ SCO

で、この世界制覇構想はそれでなくても不自然なところがいっぱいある無理筋の構想なわけだけど、現代世界では、SCO(上海条約機構)が、この構想に対するアンチとして存在している、と考えられると思う。SCOは軍事同盟ではない。

深緑が加盟国、青がオブザーバー、紫がパートナー。水色がオブザーバー申請中。

 

SCOは、別にマッキンダー理論に応答するために作られたんじゃなくて、最初はソ連崩壊後の中央アジアの不安定化が未知数で困って、2001年に、中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国で始めたものだが、その後の展開でロシアと中国の関係が強化されるにつれ、SCO空間はマッキンダー派は容易に入り込めない空間のようになってる。制空権がない、または失いつつある空間みたいな感じか。

さらに、インド、パキスタンが2017年に同時加盟。

SCOとは直接は関係ないけど、ロシアがASEANと戦略的パートナー関係を結んだことの示唆も加えておきたい。

 

■ 今後

ということなので、櫻井さんがおっしゃる通り、

 この戦略を放棄しない限り中東や東アジアからアメリカ軍が撤退することは考えられない。この戦略に執着しているアメリカ支配層は朝鮮半島の平和も望んでいないだろう。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201903010001/

が基本であるとしても、戦略に執着していても相応の意味がない、という事態に陥ることもあると私は思うな。

というか、既にそうなってる局面は見えるのではなかろうか。例えば、カスピ海をロシアとイランががっちり抱きかかえ、マッキンダー世界制覇軍の侵入を防いだり、トルコが自己の利害を考えれば、マッキンダー世界制覇軍の先兵となってロシアと戦うって、割に合わなすぎだろう、となったり、名義は貸すけど、商売は商売と割り切るドイツがロシアとのパイプラインに頑強にこだわってみたりといったところで、マッキンダー世界制覇軍の足並みは揃ってない。

ベネズエラやイランから原油を買い続けるインドという存在も、何も騒いではいないが、世界制覇軍の足並みを乱している。

朝鮮が南北あわせてそうならないと誰が言えるだろう?と私は思う。だって、ユーラシア側と付き合うのがお得で安全な位置で、そうやって何百年もやってきた人々なんだもの。

 

■ プランBもなぁ

そこで、マッキンダー世界制覇軍としては、今はダメでも、捲土重来を期すために政治機構としては、西側フレンドリーにしたいと考え、だからこそ、金正恩というポップな存在を演出したのかな、など思ってみたりもする。インド人にやたらにビザを配りまくって、インドの若者をアメリカにくっつけみたりしてきたのも、いずれは、という考えでしょう。

このへんで書いた通り。

ユーラシア vs 西側:仲間を固めてる米

せめて政治的に西側にひっぱっておく、という発想ね。そうすると国連で無理なく英米支持をしてもらえるから。

(北朝鮮の場合は、クリミア問題でロシアを支持した通り、実は政治的に英米路線でないという点で、中国よりも強硬な、相当に根性の入ったところだというのがアメや日本にとって問題といえば問題)

が、しかし、それもダメで、最近は身もふたもない略奪に走って、ゴールド泥棒までやる始末なので、マッキンダー世界制覇軍上層部におかれましては何かとっても焦りがあるんだろうなとも思う。

歴史的に嘘ばっかり言って来たことがバレて来ていることも、長期的には大問題だと思う。

と、考えれば、やっぱり各民族(国家)の個々の人々の気づきはバカにはできないもの、と私は思う。

 

■ 日本

で、日本はどうなのよ!って話なわけですよ。いやぁもう、だってすっかり嵌められちゃって、どこから開けていいのかわからない感じになってると私は思う。

一晩で何かが変わることはないし、誰かが変えてくれることもないんだから、自分たちで地道に歴史(履歴)を探りつつ、周りの人たちとの付き合いを考えていくしか身の立つ方法ってないんだが、最近はすっかり、なにかこうクリスチャン・シオニズムの極東版みたいな人たちが跋扈している気配が強い。これはモノの考え方を妄想的かつ他力的にするから毒なんだと私は思ってる。ここらへんはまた別途。

 


 


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2 コメント

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Unknown (海坊主)
2019-03-03 18:42:12
TAKUMI様の記事はいつも縦横無尽でいくつかの切り口があって色々と考えさせられます。

マッキンダー理論は沖合諸島のブリテンの視点によるものですが、自らがユーラシアにいない立場の視点で紡がれた理論だからこそアメリカの世界戦略の指針になったと私は受け止めています。

中央アジア諸国は良い選択をしたと思いました。彼らは自分達の置かれている状況と近未来を正確に描いていたと思います。

良い指導者が居ても足元を掬われて未来が捻じ曲げられてしまうのは、実は世の常。

シュワルナゼのグルジアがあんなことになって、ウクライナまで巻き込まれるとは。

ウクライナは本当に悲しい地です。輝かしい歴史を持ちながら、ソ連時代は大変に苦しみました。チェルノブイリがあり、マイダンがあり…

日本の福島を見ているかのようです。
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Unknown (ブログ主)
2019-03-03 21:13:30
海坊主さん、

ウクライナは気の毒だと真面目に思ってますが、でもカトリック勢の東進ターゲットとして500年、ドイツ勢の東進のターゲットとして150年かかってもまだこれなんだな、という気もします。気が長すぎですが。おほほ。
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