モンゴルの話を書こうと思ってるんだけど、その前に昨日のイギリス議会の騒動をメモしたい。
与党保守党のボリス・ジョンソン首相は何がなんでも春先に延期した期限である10月31日にEU離脱を叫んでいる。つまり、合意なき離脱でいいという構え。
それに対して労働党をはじめ離脱に反対の人たちがいて、また、保守党で離脱OKでも、EUとの合意は必要だという人もいる。
そこで、議会が緊急集会を立上げ、10月19日までにEU側と離脱協定をめぐる合意に至れなかった場合、首相がEUに対して3か月の離脱延期をEU側に要請することを強制する、というもの。
この法案自体すごくない、これ?という気もするわけだが、ともあれ提出された。
その審議過程で、ボリスが演説をしている最中に、保守党の議員が1人、少数党の野党リブデモ(自由民主党)のベンチの方に歩み出し、リブデモのベンチに到着。
Tory MP Phillip Lee defects to Lib Dems midway through Johnson speech
この瞬間、保守党はマジョリティを失った!
というなんか面白い瞬間があった。ボリスに対する嫌がらせとしてもなかなかスゴイ。
この法案自体は最終的に、保守党議員が20人ぐらい法案賛成に回り、328対301の賛成多数で可決されたが、そこに至るまでのこのシーンが昨日のハイライトという気もする。
その後このフィリップ・リーさんというベテランの保守党議員が、なぜ自分が保守党を出たのかを自分のサイトとtwitterを通して表明していた。もう自分のいた保守党ではない、と言ってた。
なんか、日本の元自民党のじーちゃん議員たちが共産党の機関紙アカハタに出て、もう今の自民党は私が知ってる自民党ではないと語ってた話の過激版のようだなと思った。
■ 総選挙?
いやしかし、Brexit派の強硬姿勢もすごいわけだけど、反対派の方がマスコミがついて意地悪く、じわじわしめてるなとも思う。
BBCなどのグローバリストのエスタブリッシュメントの集合体は、ボリスも嫌いだけど、労働党のコービン政権なんかまっぴらごめん、というのが第一。このジレンマをなんとかしようと画策してる。
労働党は、ブレア派という「ニューレフト」グループと、コービンなどの「オールドレフト」グループが反目してる。
すぐにわかるように、グローバリストのエスタブリッシュメントは、ブレア派ならOKだが、オールドが来ると歯をむき出しにして攻撃する。
そこで、もしここで総選挙してコービン率いる労働党に負けたらどうするの!! という心配をしている。
しかし、状況的には、労働党が勝つオッズは結構高いのではなかろうか。であれば、そこをエスタブがどう仕掛けてくるか、というのも怖い気がする。
また、Breixtやりたがってる保守派は、本筋は税制などからEUに飲まれたくない、昔保護主義を取った保守党の残党みたいな人たちが主体なんだろうと思うが、ここの料簡がやたらに狭い、無駄に攻撃的というのもここまで混乱した原因のような気もする。やるならやるで、もっと上手に出来なかったわけ?
これも評判悪いよ。
ボリス、議会休会を女王に求め、女王OK
昨日は昨日で、ボリスは上の法案を、この法案はEUに屈しろというものでSurrender bill(降伏法)だとか言い出し、コービンに、そういう語の使い方を撤回していただきたい、なぜなら我々はEUと戦争しているのではない、EUは我々のパートナーだ、とか言われていた。
保守派の一部は金がかかってるから(税法など)、将にEUは敵なんだと思うけど、大多数の国民にとってはちゃんと暮らせればいいわけで、大陸側と戦争してる気なんかないのに、次第に敵対的な言辞に引っ張られるというのは、多分ボリスあたりに対する不愉快の原因となってると思うな。
■ 本質的差異
で、労働党に関していえば、ブレアがそうであったように、「ニューレフト」だと戦争できる、とも言える。犯罪人のブレアはブッシュと共に恥をかかされ続けてるが、まだ表舞台に出てくる厚かましさをキープしてる。
エスタブリッシュメントは、常に、戦争しちゃう系はOKだが、反戦派は絶対阻止したいのだなと眺めることもできる。
私が最近言ってる「ナチ・リベラル」は、ほぼこの「ニューレフト」とのこと。「第三の道」とか言ってた人たち。
■ 昔の話よもやま
で、現在の状況は、この新旧の旧の方に重みが出てきているので、むしろ以前の労働党になってきてるんじゃないかとも思える。
そして、そのままでは当て嵌まらないとはいえ、なにか雰囲気として、第一次世界大戦に至る道筋にいるような気配があるんじゃないかと物騒なことも言ってみたい気もするし、しかし、既に戦争は終わって戦間期になってるようなところもあるような、へんな感じがする。いずれにしても大混乱の時代。
第一次世界大戦の時、労働党(1900年創立)は総じていえば戦争反対の方が勢いがあった。しかし食い止めるられるほど大きくはなく、妥協に反対する人たちが分派していく傾向もあった。
戦後、欧州は勝った方も負けた方もあわせて大混乱となり、そんな中、1923年、保守党は1番多く票を取ったものの、労働党と自由党を合せると過半数となり、ここに労働党のマクドナルド党首を首相とする連立政権ができる。
昨日書いたように、大日本帝国はこの新しい流れにびくびくだったんだろうなと改めて思う。
古いストーリーが今を縛る
ちなみに、ドイツの社会民主党も大戦に至ることとなる戦争に反対だった。しかしここは後に戦時国債OKにしちゃって戦争を可能にしたことから労働者たちが反発し、それが後に共産党へと人が流れる要因になる。
ドイツの現在は、社会民主党は肝心な時に頼りにならないという状況の再現かもしれない。失望した人たちが今度はAfDに流れてる、とみえる。しかし今回はCDU(イギリスでの保守党に相当)からも流れてる。