シリア問題を巡ってロシアと米国がともあれ話し合おうという気になっている模様。
NYに昨日9月18日付けで載ってた署名記事。
U.S. Begins Military Talks With Russia on Syria
By MICHAEL R. GORDONSEPT. 18, 2015
http://www.nytimes.com/2015/09/19/world/europe/us-to-begin-military-talks-with-russia-on-syria.html?smid=tw-share&_r=0
ロシアの戦闘機が戦闘地域に到着したことを受け、オバマ政権はモスクワに戦争地域での行動を調整しようとモスクワにコンタクトした、というところから始まってるけど、重要なのはここではなかろうか。
“Our focus remains on destroying ISIL and also on a political settlement with respect to Syria, which we believe cannot be achieved with the long-term presence of Assad,” Mr. Kerry
respect to Syria, which we believe cannot be achieved with the long-term presence of Assad,” Mr. Kerry
ケリー国務長官によれば、
アメリカの中心課題はISILを打倒して、シリアをちゃんと政治的に落ち着かせることなんだけど、私たちはこれはアサドが長期にわたって存在していては達成できないと信じている。
これはつまり、アサドがそこにいることは長期的にはダメだけど短期的にはいいわけでしょ?
方針変更ともいえないが、しかし変更しないのでもないという線に来ているような、来ていないような・・・と実のところアメリカの態度は謎だらけ。
このへんで書いた通り。
シリア情勢大詰めみたい(何度目?)
さらに、同じ日にThe American Conservativeに載っていたパットブキャナンの記事はもっととってもあからさまというか正直。
Who Wins If Damascus Falls?
By Patrick J. Buchanan • September 18, 2015, 12:05 AM
http://www.theamericanconservative.com/buchanan/who-wins-if-damascus-falls/
シリアを落としたら誰が勝つんだよ
つまり、俺ら(アメリカ)は、アサドを除けて誰をつけるつもりなんだ、と。
このタイトルから考えてもわかる通り、プーチンの提案をはねつけないで、協力しろというのが趣旨。
プーチンは中東が混乱していくのを防ぎたい。で、俺らは? どうしてアメリカは一緒にやろうというプーチンの提案を蹴ってんの? なにか、キエフの親ロシア政権打倒を支援してたらプーチンが反撃しやがってクリミアをぶんどりやがった、ってことにまだ拘ってるのか? あきらめろよ。
と、かなり身もふたもなくて笑ってしまった。Get over it、あきらめろよ(克服しろよ、立ち直れよ、忘れろよ)、だそうです。まぁそもそも自分でかかって行って負けたのに相手が悪いとか騒いでんじゃねーよ、ってのが実はアメリカ人にあってる気もする。もともとウクライナなんか俺ら関係ねーし、みたいな。
ブキャナンは、ネオコンがしかけてくる情報戦への予防線もはっていた。
アサドを叩いたら、ISが空白地帯に出てくるだろう。いいやそんなことにはならない、アサドを倒したら直ちにシリアに素早く政権を立ててどうしたこうしたとかいう意見も来るだろう。
しかしそれこそ、ネオコンのナンセンス。
思い出せよ。イラクをちょいちょいっと片付けたらそこに民主的な国家ができるとか言い、カーダッフィーを倒す時も同じ。あのひとたちはみんな簡単に片が付くと言って戦争を始めたんだよ。で、どうなった?
ということですよねぇ、そりゃ。
さらに、予言、として、
もしアサドが倒れてシリアでISが勃興したら、リンゼー・グラハムやジョン・マケインをはじめとするところから、米軍を出してISを駆逐せよという大騒ぎが来るだろう。その一方で、ネオコンはシリアのチャラビみたいなやつを探し出してくる。そこで、米国はシリアに派兵してISを破壊すべきか否かで戦争を巡る大論争で大混乱になるだろう。
と書いている。
あからさまには書いていないものの、十分にそのISだのISILだのってやつらは額面通りのグループではないという、今日少なからぬアメリカ人が既に知っていることを前提にしているところが上手い。
というわけで、ISをパブリック・エナミーNo.1にした点において、プーチンは正しく理解してる。不可解な中にも不可解なのは俺たちアメリカの方だ。
でしめている。
一方、欧州勢も、最初はイタリアあたりだった気がするるけど、ドイツもシリア問題解決にあたってロシアは大きい、一緒にやっていきたい、とメルケルが語っていたというのを昨日あたり見たと思うんだけど、今日になったら今度は、
ドイツ紙ビルト日曜版は、米情報機関関係筋の話として、米中央情報局(CIA)の代表団がモスクワを極秘訪問し、ロシア対外情報庁(SVR)の代表者たちと会談、シリアにおける共同行動の調整について協議したと伝えた。
http://jp.sputniknews.com/russia/20150920/924741.html#ixzz3mHbftzZZ
ドイツ紙によれば、CIAがモスクワに行って対外情報庁の代表者と会談してシリア問題の共同行動について協議した、とロシアのスプートニク紙が書いている。この手のことにロシアまたは米国から発表があるとも思えないので、これはドイツによるこの動きについての一種の支援なのか? わからないけど。
さらにさらに、イスラエルのネタニヤフ首相がシリア状況を話し合うために、来週モスクワに行くとイスラエル側が発表したとタス通信。
Putin, Netanyahu to discuss Middle East situation — Kremlin
http://tass.ru/en/politics/822155
ということは、ここにアメリカさんの誰かもいて、関係者で話し合うということになるのかな、多分。でも、そう決定していたのではなくて、ロシア&アメリカ(国務省)が協議して事態をマネージしようとしているのを、ちょと待てとネタニヤフ、って展開かもしれない。どっちでしょう。
■ 不可解といえば・・・
日本の記事は、上のように考えてきた時、妙だ。
米国防長官:露国防相と電話協議 シリアでの衝突回避
毎日新聞 2015年09月19日 11時05分(最終更新 09月19日 12時33分)
http://mainichi.jp/select/news/20150919k0000e030205000c.html
【ワシントン西田進一郎】カーター米国防長官は18日、シリア情勢についてロシアのショイグ国防相と電話で協議した。アサド政権の退陣を求める米国に対し、ロシアは政権支援の立場で軍事的関与を強め、対立している。両氏は偶発的な衝突を避けるため対話を続けることで一致した。
ロシア、シリアに戦闘機配備…米紙報道
http://www.yomiuri.co.jp/world/20150919-OYT1T50054.html
という感じで、戦闘機が出て来たから軍事衝突を回避するためにあわててアメリカがロシアにコンタクトした、みたいな感じに見えるような見えないような仕立てになってる。
そうじゃなくて、戦闘機はまぁむしろきっかけじゃなかろうか。
もともとシリア危機はプーチン&ラブロフの外交によって、あるいはオバマとの協力?なのか妥協によって、どうにかこうにか大戦争にせずに終わっていたところだった。だからそこで政治的に話あう必要があったのに、それができずに逆恨みしたグループがウクライナ問題なんていうデカいサイドショーを始めたわけだから、アメリカ&一部欧州は中東をどうするつもりなんだ、まさか全部カオスにしようってんじゃねーだろうな、に対する答えをアメリカ&その仲間がどう提示するか、という正念場なんだと思うよ。
ネオコンの正念場なんじゃないですかね。
限りなくネオコンめいている現在の安倍政権の岸田外相のロシア訪問はどういう意味なんでしょうね。日程は微妙に来週にかかってる。
http://jp.sputniknews.com/opinion/20150919/923135.html#ixzz3mHoVXoli
岸田文雄外相が今月20-22日の日程でロシアを訪問し、ラヴロフ外相との会談が予定される。
アサド側の視点を大事にして書かれているという点で結構ありそうでない国枝元大使のご本。
シリア アサド政権の40年史 (平凡社新書) | |
国枝 昌樹 | |
平凡社 |
まだ遅くない。読んでいていて損はない一冊。ジョン・J・ミアシャイマー &スティーヴン・M・ウォルト (著)
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1 | |
講談社 |
でもって、日本が番犬を止めるための第一歩はこの認識からなんでしょう。チャイナはそれがわかるから逆に日本人に自発的に悟ってもらうよりは、むしろ煽ってネタに使ってるんだろうな、とかも思ってます。