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宴の始末(10) ISIS・アルカイダのために戦うアメリカ

2016-09-26 13:45:11 | 欧州情勢複雑怪奇

数日前、

宴の始末(9) 何と戦っているんだろう

と書いたけど、率直にいって現状は、米・英・仏・サウジ・トルコ・カタール他のいわゆる有志連合は、ISISとアルカイダを守るために、シリア人を殺害し、ロシアを非難し、核戦争も辞さずという態度をとってるわけです。

率直にいってそうなんです。

米ロ、非難の応酬激化 シリア情勢で安保理会合
2016/9/26 11:40
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM26H0M_W6A920C1EAF000/

と書きますが、ロシア、シリア、イランは、アルカイダやISISと妥協して世の中を作りたいとか思ってませんので(笑)、そりゃ非難の応酬にもなるでしょう。

その前日には、

シリア外相、米と有志連合は「イスラム国と共犯」
国連演説
2016/9/25 1:28

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK24H0R_U6A920C1000000/

またサウジアラビアとカタールがシリアに最新鋭の武器や数千人規模の雇い兵を流入させ、「あらゆる方法でテロを支援している」と非難。トルコも「国境を開いて世界中から数万人のテロリストを送り込んでいる」と訴え、対決姿勢を隠さなかった。

 

でもって、重要なことは、

ロシアのラブロフ外相とアメリカのケリー国務長官が苦心惨憺で作った停戦合意は、正式な実行まであと2日というところで、破綻になりました。

どうしてそうなったかというと、アメリカ軍機がシリアの正規軍を空爆して、60人から80人ぐらい(報道により幅がある)を殺傷、100人程度に怪我を負わせ、その上その直後からISISが行動に移したから。

つまり、アメリカ軍は今やISISの空軍だ、という事態が発生している、と。これは私が言ってるんじゃなくて、アメ人の中の少なくない人々が既にそう反応してる。How The US Became ISIS’s Air Force、みたいな感じ。

 

これを、アメリカ政府は「間違ったんだよ~ん、ごめん」と言って無効化しようとしたわけですが、シリア政府は、米の行動を、naked aggression、まごうかたなき侵略、と述べ、停戦は終わったと判断した。

これがアサドのインタビュー。米の行動はアクシデントではない、と詳細を述べている。

US attack on Syrian troops not an accident, definitely intentional – Assad to AP

 

シリアのアサド政権は選挙やっても勝ってる、ちゃんとしたシリア国の代表者ですから、その正規兵に外国軍が攻撃をしかけたら、外国軍に対して戦争を仕掛けてもまったく無問題というか、普通に予想される事態。が、相手が米+子分なので、米相手に宣戦布告はしてないけど、これ以上奴らに譲るものはね~となってもまったく普通でしょう。

 

だもんで、シリアとロシアは、ISIS、アルヌスラ等のテロリストの伸長を食い止めるために、より一層の攻撃を開始した。停戦破ったのは相手方なんだし。

で、そうすると、ISISのみならず、アルヌスラ(要するにアルカイダ)等の西側支援のテロリストたちは不味くなった、ってんで、英米仏が国連安保理緊急ミーティングを開いて、嘘800を述べたて、各国の主流メディアを総動員して、その嘘を垂れ流し、今では、ロシアとシリアは本当は停戦したくなかったんだ、とか言い出している。

停戦する気がなかったのはアメリカだろう、というところは動かないんだけどね。

ただ問題は、それがオバマ政権の判断なのか、それともケリー(国務省)は停戦させたかったが、軍が承服せず、行動に移したのか、ってところ。後者だと、文民がまったく統制できていない、いわゆる軍の暴走状態が顕在化したということになるので、話は大きい。(まぁ、実際そうなんだと思うけど。)

Did the Pentagon Sabotage Syrian Peace Deal?
https://consortiumnews.com/2016/09/25/did-the-pentagon-sabotage-syrian-peace-deal/

 

で、米+子分たちの行動はもう、事態を観察している人たちからしたらお笑い草なわけで、オバマ政権&メディアの信頼はさらに地に穴を掘るがごとくとなっている、と。

今朝みたイギリスのIndependentでも、イギリスの国連代表がロシアの言い分を聞く気はないとばかりに退席したとかいう話なんだけど、これを「よし!」と言う人たちは多くないなという印象で、むしろ、なに用あってイギリスはシリア攻撃しているんだ、という人が散見できる。Independentはリベラル系なんだけど、メディアに釣られていないんだな、って感じ。

右派は概ね、もうこのシリアものについて米英政府の言い分を信じてない、って人が大多数といっていい状態ではなかろうか?

アメリカ人のマスメディアへの信頼度、さらに下がる

どうしてそうなるのかというと、右派にはもともと軍事に強い人とか、軍歴ある人がいるので、その人たちがもう米英軍の行動を庇えなくなって、リアルな分析をしているというのが結構大きいんじゃないかな。

まぁねぇ、過激派をトレーニングしてシリアの一般人を不幸のどん底に陥れることが名誉ある役目と思う兵隊もいないでしょう。金と立場がかかってるからやってるだけで。

■ ロシアの対応

国連安保理の緊急ミーティングでは米ロが非難の応酬をした、とざっくり書く向きが多いが、ロシアの国連大使は、

Westはシリアのアルヌスラに引き続き武装支援をしている、だからシリア国との和解はほとんど不可能

Westは、ISISのみならず、アルヌスラ(つまりアルカイダ)他のテロリストグループと普通のシリアの反政府グループを区別しようとしない、というのをでかい声で言ってる。

West still arming Al-Nusra in Syria, peace almost impossible – Russia’s UN envoy
https://www.rt.com/news/360571-unsc-syria-meeting-russia/

 

実際、これこそが、西側が隠したがっている or 無視したがっている事の本質だよね。

日本のメディアを含む西側メディアでは、西側が「反体制派 rebels」を支援しているが、ロシアはシリア政府を支援している、と書くが、その「反体制派」にはテロリストも含まれているので、まずそれを分離してテロリストを排除して、ホントのシリア人の反体制派だけをシリアの政府の野党として残す、というのがロシアの主張であり、ロシア外務省が実行してきたこと。普通にリーズナブルでしょ(笑)。

ところが、英米仏はテロリストを排除したら混乱作戦を決行してアサドを倒せない。だから分離しようとしない、何カ月も何カ月も、やります、もっともです、はいはい、と言いながら実は分離せず、妨害して、むしろテロリストを支援している始末なわけね。

(だから、ロシアは騙されてる~という声がアメリカからもロシアからも上がっていて、プーチン政権は結構しんどかったりもする)

要するに過激派を支援して、敵にして、敵と味方の両方をコントロールしながら全面的に混乱させて、自分が利益を得るってなスタイルだすね。これを過去15年やってきたわけだし、そのきっかけはどこかといえば言うまでもなく9/11。

そう、西側はアルヌスラを支援している、というステートメントの射程は結構長い。


■ 西側は耐えられるのか

思うに、ラブロフとケリーが長い時間をかけてともあれ停戦をという形を求めていたのは、根本原因まで掘らないでなんとか場を収めよう、終わりにしようという意味だったのではあるまいか。

つまり、もしこうやって停戦して、アメリカがさすがにアルヌスラ他のサウジ、カタールが主に資金を出しているテロリストグループ(国連で認定されてる)は切る、という判断して実行に移すことがあれば、シリアの平面、ひいては中東北部は安定化に向かうわけだから、シリアもロシアもそれでOKとなる。アメリカも糞な枠組みを暴露されなくて済む、ってことでは?

今年の1月だったか2月に、キッシンジャーがプーチンに会いにいったのは、そういう枠組みを求めたのではなかろうか、など思ってみる。全体の安定のために協力してくださいよ、プーチン、と言いに行った、と。

しかし、どうしてもそうはできないと言い張るグループが米の中にいる、と。

ということは今後どうなるのか。

軍事的には、戦術的な勝ち負けの連続から、シリアの安定化を目指す、って感じか。

戦略的な失敗をしないための支援体制は、シリア西部、すなわち地中海、黒海はロシアがぎちぎちに防衛(アドミラル・クズネツォフという重航空巡洋艦≒空母をシリア西部に入れるらしい)。

ペルシャ湾側からの攻撃に対しては、イランの存在が牽制になる。S-300装備できてよかったね、ほんと。

 

これに対して、米+NATO+湾岸諸国が軍事的にシリアを崩すとなると、何ができるんだろうね。

つか、何をするにしても、それらはすべてまごうかたなき侵略行為、しかも再三にわたってシリア国が止めてくれと言っているにも関わらず聞き届けられない状況で行われる侵略行為になるので、湾岸諸国やイスラエルはそれでも一向に構わないとしても、欧米各国は耐えられるの?

そして、その途中に、あらゆる戦術的攻防のたびに、テロリストグループを支援する西側という話がついてまわる。

これが今後の問題となるんじゃないっすかね。
 


 

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2 コメント

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『独立できないイギリス』 (ローレライ)
2016-09-26 18:49:13
『難民とテロリストの洪水を切る』ための『EUからのイギリス独立』と煽ったボリスジョンソン外相の『テロリスト寄り』の態度は『独立できないイギリス』の印象をアピールしました。
返信する
イギリスは揺れてますね (ブログ主)
2016-09-26 20:48:06
ボリスは、まぁなんてかUKIPにリードを取らせないために保守党が仕込んだんだろうな、と思ってみているので所詮はその程度ってところでしょうね。

この人は人気はあるけど信用されていない人。
返信する

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