外交方針の中で「北方四島」に関する記載が変わるという話は数日前書いたが、閣議に登場し、要するに正式なものになっていく模様。
「北方四島は日本に帰属」記載を削除 外務省が配慮か
https://www.asahi.com/articles/ASM4R33MFM4RUTFK007.html
これは朝日の見出しなのだが、外務省が配慮か、というか、外務省が今までとまったく異なる方針を取ろうとしているんだったら、まず「なぜ」を問うのがジャーナリストの務めじゃなかろうか。
しかしもう、日本の主要紙は、官報と同等といった感じなので求めても無駄かもしれない。
で、この問題は何度も書いている通り、日本は、1941年に至るまでの主題であった大陸の諸国との講和を求めず、米の子分になる選択をして(片面講和)、冷戦構造の中に潜り込み、日本国内でしか通用しない諸々の言辞を編み出して行った、という話のツケなので、今更何をしているんだろうと私などは思う。
根本的に、ソ連/ロシアの言っていることは一貫性があり、かつ、外交的にも筋が通る。日本が言っているのは、日本国内以外で本当に議論したことがあるんだろうか???という代物。
今年の初めにこの話題が出てきた時にも、日本のジャーナリズムも一般人も「なぜ」を問うてはいなかった。ロシアが悪い! もっと強気に! 安倍は弱腰だ~というのでお終い。
第2次大戦の結果を認められない唯一の国
もう何回も書いたから書きたくないので止めるけど、今日この対ロシアが問題なのは、朝鮮半島に変化があるからであり、そして、国連機構改革をするにあたって、国連加盟時の約束すら守ってない日本の立ち位置があまりにも弱いというよりインチキすぎる、というあたりでしょう。
外務省は、これまでの来歴を説明する責任がある。
ここが勝手な話を作っては広めた張本人でしょう。しかも、ヤのつく人たちと思しき人たちを使って「返せ北方領土」の大キャンペーンンを50年ぐらいやってきた。これじゃ一般人は、この問題は見ない方がいいだろうとなるのも無理はない。
しかし多分、日本国民に説明しようなどという態度を日本の支配層(上級国民とでもいうべきか)が持つというのも現状考えにくいので、このへんはいいかげんに、安倍がプーチンに屈した~とかいうどうでもいいガス抜きで押し切るんですかね。
あと、外交青書で多少折れてみせてるのは、G20にプーチン、場合によってプーチン&習が来てくれないようなことになったらどうしよう、とか思っているのかもしれない。
■ 中国、韓国
で、ロシアをうっちゃった恰好で、中国とは去年安倍ちゃんがパートナーです、パートナーと言った線を踏襲。「隣国である中国との関係は、日本にとって最も重要な二国間関係の一つ」
そして、日韓の「未来志向」削除
まぁ、財界は中国との関係なくして生きられないと考えてるでしょう。だから他のこまけーことはどうでもいい、中国だ中国という路線を進むことになると思う。
しかし、かといってアメ様が第七艦隊をお捨てになることはないので、要するに日本に対する米中共同管理体制が続行するといった感じになるのかしら?
■ 条件付けてる北朝鮮
そんな中、今週は北朝鮮の金委員長がロシアでプーチンに会うことになっている。
北朝鮮は、アメリカに対してはポンペオとボルトンをバカ扱いして、担当変えろ、お前らと言っているというのがニュースになっている。
なっているが、面白く思うのは、普通北朝鮮という比較相対的に小さい国からそんなことを言われたら、わーわー言いそうなものだが、アメリカのニュースの扱いは微妙。
しかも、金ちゃんは、アメリカはその「態度」を2019年末までに変えろという条件まで付けてる。
Kim Jong-un gives US until end of 2019 to change ‘posture,’ promises to boost defense
https://www.rt.com/news/456420-north-korea-negotiations-remarks/
これが15日ぐらいで、その後、ハノイのサミットのあたりであって、在スペインの北朝鮮大使館襲撃の犯人と思しき人をアメリカ国内で逮捕していた。
これって、アメリカが折れてるってことじゃなかろうか。アメリカ国内で泳がせてたものを逮捕したんだろうと思うから。
少なくとも、話を繋ぐ気でいるぜというシグナルみたいな感じ?
なんだかわかりませんが、いずれにしても気になるのは、2019年末までにアメリカが態度を変えなかったらどうなるのか、ですよね。何をしよーってんでしょうか。
北朝鮮が上海協力機構に入るとか?
インドとパキスタンを同時加盟させたことがあったが、今度はイランと北朝鮮を共に加盟させるという線があっても不思議ではない。
あるいは、ロシアとその周辺のCSTOへの線だってまんざら無いとも言えないかも?
これだと核問題も解決する。北朝鮮は2年前、「核を持つ必要がなくなった」と言ったことを思い出す。
CSTOというのはロシアとその周辺5か国による集団安全保障条約体制のこと。ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの全部で6カ国がその対象だが、アゼルバイジャンとセルビアがオブザーバーのステータスになってる。
ロシアの核戦略の中で、ロシアとその同盟者alliesが、という時のalliesは必ずしも限定的ではないのだが、一般にこの仲間のことだろうと考えられている。
手を出したら俺が相手だとロシアが言っている機構って感じですね。
CSTOが1994年に成立したから、世界中に800カ所も基地を持つ基地マニアのアメさんは中央アジアに基地の展開ができなかったということでしょう。加盟国にはロシア軍が駐留するわけではないし、ソ連みたいに面倒を見ている(または支配している)という関係ではないので、常に不安定なところもある。米の隠れた駐在みたいな場所は今もちょっとある。かつてはもっと大っぴらにあったがカラー革命に懲りたキルギスタンから追い出されたりしたこともある。
考えてみれば、日本がそれ自体でかい国(少なくとも金持ちで軍備も充実している)なのに、そことアメリカを繋げて巨大な軍事マシーンになっている現状において、それ自体小さい北朝鮮を一人ボッチにして虐めるという構造そのものが不安定だという解釈も成り立つわけで、北朝鮮にも何かカバーをという考えも当然に成り立つ。
それがイヤなら韓国を前線にして、日本を後方基地にした朝鮮への飛び出し機構みたいな軍事態勢を止めろ、という解釈もあるでしょう。
あるいは、南北朝鮮の間に戦争はないと言ってんだから、せめて在韓米軍撤退しろ、という押しも今日説得力はあるんですよ、実際。
わかりませんが、北朝鮮が条件を付けてるという事態に、アメリカメディアがこぞって反対する、みたいな展開も見えず、奇妙なことになってる。
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