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中立国オーストリア

2018-06-06 23:23:43 | アジア情勢複雑怪奇

プーチンは月曜日、オーストリアを訪問していた。

多くの場合そうであるように、地元のテレビ局の長いインタビューに応じてそこでの発言が話題になっていた。そこだけ見ていると、いわゆる西側諸国がプーチンの説明を納得せず、突っ込んでる、みたいにも見えるのだが、そんなことはさておいて、政府はロシアとの間で双方がかけあった制裁の問題と、折からのノルドストリーム2問題を含めたロシアとのエネルギー供給問題の方にずっと関心があった。

ラブロフのみならずノバックもいる。エネルギー相。

 

オーストリアの対ロシア感情は一般的に悪くない。

少なくとも、荒れ狂う反ロシアキャンペーンが欧州で展開される中でも、我々は西と東をつなぐブリッジであるという態度を崩さず、今年春に、イギリスが仕掛けた訳のわからないスクリパル親子事件の余波でかなりの数の外交官を各国から引き揚げさせるという異常事態があった時にも、オーストリアは参加しなかった。

そもそもクリミアが住民投票で圧倒的多数がロシア復帰を望んで、事実そうなっちゃったことで欧州側が狂ったようにロシア批判をする中で、プーチンはオーストリアを訪問して議会の人たちとさわやかに笑いながら話してる動画が出てた。それができちゃうのがオーストリアとも言う。

 

どうしてこんなことができるのか。それはやっぱりオーストリアが中立国として戦後を出発したからでしょう。NATOに参加してない

オーストリアはドイツに併合されて、一緒になってソ連を攻めた側なので、戦後は敗戦国となったが、ドイツと異なり、中立の道を歩んだ。

1955年にオーストリア国家条約というのを連合国と結び、その中に直接の文言があるわけではないらしいんだが、直後に議会が中立を宣言し、NATOにも加盟しなかった。

ソビエトも米英もオーストリアから軍を引き上げた

という成り行きだったため、冷戦中はここが東西スパイが入り乱れる地域となり、今もそうだと考えられている。西側の国であると自己規定しつつ、両方との懸け橋になるという選択をしたわけですね。

 

で、これって、前に書いたドイツの経緯と鮮やかな対比が見られると言っていいと思う。

ドイツは、スターリンがオーストリアに対するのと同じく中立を望んだんだが、ヤダと言ってアデナウアーがNATO入りを選択し、今もってNATO軍の大きな基地を置かれ続けている。ソ連はもうなくなったのに。

「ソフト占領」:米の占領下にあり続けるドイツ

混乱を無視して進むドイツ流

 

オーストリアは、その後、1968年にソビエトとの間で天然ガスのパイプラインを設置。これがソビエトの天然ガスが西欧州(東欧はソ連圏)に行った初めての出来事だったんだそうだ。

これは現在のOMVというオースリアの天然ガス屋さんが出してる動画。1968年6月1日が開通だったそうなので50年を記念して安定的なガス供給の恵みについてアピールしているようだ。

Time Travel: 50 years of Russian gas supplies to Austria

Time Travel: 50 years of Russian gas supplies to Austria

https://www.youtube.com/watch?v=mZ22Lx33MHw

 

西ドイツで東方に対する外交政策を考え直していったと考えられているウィリー・ブラントが首相になるのが1969年。

ソ連との間でパイプラインを敷いて関係を改善していくのはもっと後だが、最も騒ぎになったのはレーガン時代のもの(これ)。アメリカはロシアとドイツの関係が改善されるようなことがあるとなんとしても潰しに来ると、現在かなり多くの人、特にドイツ人がそう信じているのも無理はない。なぜなら今回が初めてではないから。

 

今回のロシア大統領のオーストリア訪問では、ロシア・オーストリア間の天然ガス供給契約を2028年までだったものを2040年まで延長したそうだ。ずっとやります、という意思表明でしょうね。

http://www.globaltimes.cn/content/1105779.shtml

 

ということで、このへんでも書いたけど、オーストリアとロシアの関係は長い。いつも良好とは言えなかったが、オーストリアは自国の安定にとってロシアが安定して、かつ、親オーストリアになってくれることが重要だというのは歴史の中から出て来る結論でもあるでしょう。それができなくて帝国を失ったという見方だってできると思うし。

1814年と1914年から見る神聖同盟の有用性

 

そして、それは実のところ近代ドイツも同じ。ビスマルクは親ロシア的だと言われたりするが、そういうことではなくて単に冷静だっただけ。プロイセンの王族というよく考えれば相当田舎者の王族が主体になって統一するというのも不思議な話だ。近代ドイツとは何者なんだろうという疑問に突き当たらざるを得ない。これが1812年のヨーロッパ。ここから今までの200年の変化は本当に大きい。

 

■ オマケ

誰かが仲良くしていると言っては仲を裂こうとするのは西側の常套手段。そうはさせじと思う人々がいたとして、それのどこが悪いのだろう? 

プーチン氏、オーストリア訪問 米欧の結束弱める狙いか

https://www.asahi.com/articles/ASL662DBCL66UHBI00D.html

欧州連合(EU)加盟国との友好をアピールし、ロシアに厳しい米欧の結束を弱めたいプーチン氏と、「橋渡し外交」で存在感を増したいオーストリアの思惑が一致した形だ。

またでました、存在感を増したい、強めたい。どんな理由なのそれって感じ。ナンセンスでしょう、そんな理由。売れない芸人じゃないんだから(笑)。

で、この地平ではドイツ勢(オーストリア+ドイツ)とロシアの結束は相当固い部分があるんですよ、文化背景込で。だからこそ、アングロチームが200年ごしで分断してるというのが大きな流れ。ロシアがthe Westを、じゃない。わかれよ、ノータリン、とも言いたい。

 


 


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