上海協力機構の総会が山東省青島で行われる話はこの間書いたけど、それに関してさっきふとtwitterを眺めていていたら、
上海協力機構でインドは一帯一路に反対していますし、中露、印パは決して仲良くないし、敵対国同士の集まりです。SCOは何の力もないのが実態。逆に日米印豪の対中包囲網は進行中。
と書いている人がいた。
インドが一帯一路に反対した、賛成しなかったというのが日本の一部の人にとっては元気の素らしくはある。
しかし、このブログを見てくれている人にはすでに耳タコ、またかよその話となるかもしれないけど、インドはイラン、アゼルバイジャン、ロシアの南北回廊の全面稼働を楽しみにしている。そしてイランとの関係が深く、ロシアとの関係も深い。この赤いの。
そういうわけなので、中国と反目することがあってもロシアが間に入ると、完全反目とはならなくなる。インドとパキスタンも、ロシアが間に入る恰好で話し合うようになっていくんだろうとインド人が書いているのを見たこともある。そうだと思う。
ということなので、SCOに何の力もないなんて、大間違いすぎてお話にならない。ここは馬鹿野郎アングロ・シオニスト・アメリカの200年が分断して喧嘩させてきたユーラシアを結合させる機能を備えているというべき組織でしょう。
というかですね、その前に、中国とロシアがひっついただけで the West としてはやりにくくて仕方がないと思ってるよ。そこに来てロシアによる強制MAD宣言があったわけだから、猶更、ネオコンだの介入主義者は仕事がしづらくて仕方がない。
という状況なのに、対中包囲網は進行中とかいう人たちがまだ本当にいるというのが、なんともかんとも、どうしたものでしょう。
というか、こういう人たちを騙している人たちがいるわけですよね。
■ シャングリラ会議
6月2日にシンガポールで開かれたシャングリラ会議では、インドのモディ首相が、ロイターの報道によれば、
焦点:東南アジアで地歩固めるインド、中国をけん制
https://jp.reuters.com/article/asia-security-modi-idJPKCN1J108E
で、いろいろとインドが中国と対決姿勢を取っているような感じのことが書いてある。
が、とても不思議なのは、この会議でモディはキーノートスピーチをしている。それは記事にもある。しかし中身をちゃんと引用していない。
他方、中国の環球時報は、インドの態度にむしろ好意的な記事を載せている。
India-China cooperation to benefit Asia, world: Modi
http://www.globaltimes.cn/content/1105209.shtml
私はチャイナの方を適切だと考える。なぜならモディのスピーチは、対立をあおるのではなくて、歴史を踏まえたインドと海洋、あるいは人類と海洋に対するなかなか希望にあふれたスピーチだったから。
インド外務省のスクリプト
Prime Minister’s Keynote Address at Shangri La Dialogue (June 01, 2018)
June 01, 2018
こんな文言が挟まれていたりもする。
インドは、インド・太平洋地域を戦略とか、クラブメンバー限定のものとは見ない。
India does not see the Indo-Pacific Region as a strategy or as a club of limited members.
さらに、こんな下りがある。
2日前ソチでプーチン大統領と会って、現代の困難に対処するための強い多極型世界の必要性について意見を交わした。
米国とのグローバル戦略パートナーシップによって歴史的な躊躇を克服し、私たちの関係を驚異的に進化させている。このパートナーシップの重要な柱は、オープンで安定、安全、繁栄したインド・太平洋地域というビジョンを共有していること。
そして、チャイナとの関係ほど多層なものはない。私たちは世界で最も人口の多い二つの国であり、かつ、最速の経済発展を遂げている主要国でもある。私たちの協力は広がっており、交易も増えている。そして私たちは問題を管理し、平和的な国境を確保するというで成熟さと知恵を見せている。
ざっと読んだけど、対立しようとか、意地くそ悪くあてこすったりするところのない、良い文章だと思う。
私はこれを、インドのある種の大国宣言でもあるなと思った。つまり、ロシア、米国、中国と共にあるインドは、この大きな海(アフリカからアメリカまでの海がインド・太平洋)を含む世界に対して責任を持つ成熟したプレーヤーであると言っているような感じ。
小さな紛争に血道をあげて、封じ込めの片棒担いで世界戦争に突っ込むようなメンタリティーはまったく見て取れない。まったく。
モディさんは4月に習さんと会い、5月にはソチでプーチンと会っていたわけで、その間にいろんな話し合いをしたんでしょう。ネオコン的でもない、オバマ的な当てこすり文章でもないスピーチからは、様々に異なる人たちのいる世界、すなわち、そりゃ自然は多極ですがなといった感じが垣間見えて好感が持てる。
恫喝するアメリカ、対話する中露
だからまぁ、インドは、ブッシュ・オバマ・ヒラリー時代からの変化をいち早く示したことになったかもしれないですね。
というわけなので、もうね、その「封じ込め」とかいう単なるいじめの言い変えをいいかげん忘れましょう、ネトウヨのみなさんとここで呼びかけても無意味だろうが、いやマジでそうなのよ。
■ MAD効用
プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD
自説として強制MAD、すなわち
相互確証破壊(MAD)をアメリカが壊したが、プーチンとロシアのエンジニアたちが奮闘して強制MAD状態を作った
と言い出したからこだわっているわけではないのだが、しかし、やっぱりこの宣言は、全体としてもはや大戦争はできない多極安定スキームのための要石なのではないだろうか。
というのは、ロシアを核兵器で脅せるという発想こそがネオコンを活気づけていたものだったと考えられるから。脅せば出てこないと思ってたんだと思う。ところがシリアで登板しちゃった。
だから、もはやそれは本当にできないとすることで、ネオコンの無効化に成功しつつある、といったところ。
■ まったく有害だったネオコン妄想
今後の展開として、アメリカも新型を開発して軍拡になるのかといえば、まぁなることはなるんだろうけど、根本的に、相手(ロシア)のミサイルのラインナップを見れば、完全に相手の報復能力を無化することは不可能なんだから、行き着くところバランスさせる以外にありえない。つまり、核戦争を勝てると想定したネオコンの妄想は最初から無理でしたが、もっと無理になりましたという話。
プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD
(前も書いたけど、安倍、小野寺ら、あるいはほとんど全員か?はこのネオコンの教義を擦り込まれている)
おそらくペンタゴンにもこの、ロシアを核兵器で脅せるという説に乗ってた人たちが多数いたんでしょう。しかし、最近の動きを見るに、だんだんと冷静派(または現状追認派)がハンドルを握りはじめたように見える。