DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

ヒトラー、ムッソリーニ、ヒロヒトなわけだが

2019-08-31 22:10:36 | アジア情勢複雑怪奇

最近の日本の言論状況で唖然とさせられるのは、安倍シンパの馬鹿ウヨのせいではない。むしろ、私が「ナチ・リベラル」と呼ぶ、自分は安倍シンパのような酷い人ではないと思っているらしい、いわゆるリベラルと分類される集団の歴史認識の方が問題が深刻だと思う。

それは例えばこんなの。

古賀茂明「過去の戦争責任を忘却しきった日本」〈週刊朝日〉

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190819-00000060-sasahi-pol&p=1

この中にこんな一文がある。

昨年米国のボストン美術館を訪れたときのことだ。戦争をテーマにした展示コーナーに、ヒトラー、ムッソリーニと並んで昭和天皇の戦争責任を問うイラストが当たり前のように展示されていたのを見て驚いた。

また、ニューヨークでタクシーに乗車したとき、アフリカから米国に来たばかりの移民の運転手に、「君たちは日本人だよな」といきなり話しかけられたときも驚いた。今や中国人や韓国人観光客のほうが日本人よりもはるかに多いのに、どうして日本人とわかったのかと聞いたら、「だって、呼び出し人としてスマホに表示された名前(そのタクシーを呼んだ知人の名前)に『HIRO』と入っていたから。HIROHITO(裕仁)と同じ日本人だとすぐにわかるよ」と言うのだ。

 この二つのエピソードは、「日本人=天皇=ファシズム」という連想がいかに浸透しやすいかを物語る。

 

ヒトラー、ムッソリーニ、ヒロヒトって、普通に、ごく普通に、枢軸国のリーダー3人の名前でしょう。もちろん、連合国にとっての敵のリーダー3人として戦時中などは無茶苦茶に戯画化されて使われていた。

こんな絵柄があちこちで描かれてた。

「hitler hirohito」の画像検索結果


これも有名ですね。2人倒れた、残り1人、と右端が昭和天皇。

「hitler hirohito」の画像検索結果

 

でもって、事実、この三国が日独伊三国同盟を組んで、新世界秩序だのへちまだの言ってたんだからそりゃもう同じだと括られるのは理の当然。

「hirohito axis」の画像検索結果

 

大喜びしてたのが当時の日本。ドイツ国歌を小学生に覚えさせたという証言もある(樋口恵子氏が、今でも歌えると歌ってる動画を観た)。

「hirohito war crimes」の画像検索結果

 

さらに、日本とドイツの場合は、東西からソ連/ロシアを挟撃しようとしてた構図もはっきりしてる。

東西挟み撃ち体制が見たくなかったらしい

1941年12月にはソ連に勝ってる算段だった

異論を述べるにしても、せめて、極東軍事裁判の記録ぐらい読めよと言いたい。

 

だから、第二次世界大戦の話をする際に、連合国が枢軸国と戦ってとなったら、ヒトラー、ムッソリーニ、ヒロヒトが並んでで不思議なことは一切ない。

不思議なのは、それが不思議だと思う日本の人の方でしょう。

 

「日本人=天皇=ファシズム」という連想がいかに浸透しやすいかを物語る。

 

というのもへんな話。大日本帝国はファシズムグループで、そのリーダーが天皇ヒロヒトなんだから、他国人がそれを連想しても一向に不思議なことはない。

ちなみに、日本はファシズムよりもっと悪質な、天皇を使って上に向かって抗議させなくするカルト体制ですから、ファシズムと言ってもらうほうがちょっとオマケしてもらってるぐらいだと思う。

 

■ 天皇を媒介として話をそらしてきた日本

また、上の記事を見て、「ヒトラー 天皇」でtwitter検索したら、ヒトラーと天皇を同一視するようなのは間違ってる云々というのが結構な数見られて驚いた。

日本人の中にそう考える人がいることは自由としても、外からみたら、あるいは日本人も含めて客観的に見ようとする人がヒトラーとヒロヒトは両方悪い奴と考えたとしても一向に不思議でない。

ヒトラーはユダヤ人虐殺という罪を云々という言辞も見られたが、ユダヤ人にとってはヒトラーが悪者だろうが、中国人にとってはヒロヒトの方がずっと悪者に決まってるでしょう。誰と戦ったかの問題にすぎない。

 

また、権力機構として考えた時には、ヒトラーより天皇の方が国民にとってはタチが悪いという考えも十二分に成り立つ。

ヒトラーは所詮は庶民だから、事実そうあったようにヒトラー暗殺計画があったりする。こいつについてったら大変なことになると思うドイツ人たちの中で行動を起こした人はいた。

しかし、天皇の場合は、国民は天皇の赤子だとかいう日本人一家論みたいな仕組みでカルト支配していた日本にあっては、天皇に背くということが、単に合理的にリーダーの変更を要求するという意味ではなく、日本人としてとてつもない罪として規定されていた。これの現実化が要するに治安維持法という奴ですね。

そして、日本の敗戦の仕方は非常にコントロールされているのでこの治安維持法を無効化せずに国民に敗戦を納得させた。

したがって、ムッソリーニのような事態はなく、それどころか、日本においては政治犯として刑務所を入れられていた人たちを知識人たちが迎えに行くという光景さえなかった

そこで、戦争が終ろうとも負けようとも政治犯はそのまま収容され、哲学者の三木清9月26日に獄中で死亡した。

これに驚いたのは日本人というよりGHQの方で、ここから1945年10月4日、GHQがいわゆる人権指令「政治的、公民的及び宗教的自由に対する制限の除去に関する司令部覚書」を出して、治安維持法を廃止させた。

しかし、当時の大臣たちは拒否しており、東久邇内閣はこれを巡って内閣総辞職、次の幣原内閣になって廃止となる。

という成り行きを見ても、日本の敗戦って、実になんてか、とっても八百長臭い敗戦の仕方だよなとしか思えない。

要するに、大日本帝国は否定されているようなされていないような恰好で、いろんなところで日本国民のあずかり知らぬ間に、英米(GHQが出先)のエリート層と日本のエリート層との談合で、日本が英米の下に入る代わりに適当な処分をしましたって話だと思う。

 

■ 敗戦の否認は実にリアルだった

と、そういうふうに通して考えてみた場合、日本が敗戦し、大日本帝国は否定されたのだという考えを持たない人たちがず~っと命脈を保っていたのもまったく無理がないんだと思う。

兵の命、国民の生活

最近になってようやく、白井聡さんが、おいおいおいおい、なんだこれは、とひっくり返してきたのが、考えてみれば実に新しい。そしてこうなったのは白井さんが論理的であることだけでなく、若いというのも相当大きいポイントだったんじゃないかと思う。

普通にみたらおかしいでしょ? だって俺たち負けたんだよ!!といえる人がやっと出てきたという感じ。

 

永続敗戦論 戦後日本の核心 (講談社+α文庫)
白井 聡
講談社

 

国体論 菊と星条旗 (集英社新書)
白井 聡
集英社



■ 不思議

で、不思議なのは、冒頭の古賀氏にしても、ヒトラーと昭和天皇が並べられることに驚く人というのは、一体全体、じゃあ昭和天皇をなんだと思ってこれまで歴史を読んで来たわけ?、というところ。

今だって研究しようとしたら、こういう並びになるでしょ? ならない方がおかしい。単なる事実の問題。

「hirohito hitler 」の画像検索結果

 

マジ、マジ、マジで、「ヒトラー、ムッソリーニ、ヒロヒト」は連合各国から見たら3人とも憎き敵だった、という事態に驚いたりする人というのはどういう人なわけ? アメリカにいって「ヒトラー、ムッソリーニ、ヒロヒト」が並んで悪者扱いされているのはむしろ普通の話であって、そうでなかったら驚けという事態ではあるまいか?

 

■ オマケ

古賀さんの次のページも、なんだかなぁと温いものを感じる。

 私が危惧するのは、過去の戦争責任を忘却しきったような今の日本のムードが、世界の人々との間に溝を生むのではないかということだ。韓国に対して「無礼」と日本が反発すればするほど、世界からは「日本は過去に目を閉ざそうとしているのでは?」と見られる。安倍総理の「未来志向」という言葉も、「未来志向なんだから、過去のことはもう蒸し返すな」という意味にしか聞こえなくなるのだ。

 

日本の態度に関しては、中国人という大量の人数を抱える集団と、ロシア人という非常に声のデカい集団がしっかりとガッカリしてしまっている以上、基本的に、日本は過去を糊塗したいどころか、過去を栄光と捉えている集団と考えられ始めていると思う。

そして英米は、支配層はこれをむしろ推進してきた節もある。そうだろ、お前は強いんだ、エライんだ、優れた民族なんだ、アジアで頼りになるのはお前らだ、な、だから、俺と組もうっつー算段。

それに対して個々のアメリカ人、イギリス人+属国の方は、そんな風に考えてない人の方が今でも多数だと思うが、年々再々アメリカの味方がいなくなるので、対中国で日本を取り込んだ方がいいと考え、日本に味方しようという考えを持つ人も多少は増えたと思う。しかし、これって、誠実なものではないですからね、互いにどこかで切れ目は当然入るでしょう。


 

コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 9月1日にナチ後継組織が結集... | トップ | シリア:イドリブ奪還が見え... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ヒトラーユーゲント (ローシャン)
2019-09-01 16:59:41
昭和ヒトケタ生まれの知人が子供のころ、神戸に来たヒトラーユーゲントを見に行きそのスタイル、挙動がキビキビしていてかっこよかったと、聞いたことがあります。

三国同盟を結んだころの雑誌を見ますとハーケンクロイツの写真がいっぱい載っている。ところが昭和18年以降、敗色が濃くなるとソ連のスターリングラードの攻防戦を称賛する記事が多くなる。「ソ連の女兵士が多数参加しており、非常に勇敢でありました。彼女らは、捕虜になっても、絶対に白状しない殺されても軍の機密は言わぬ」ー主婦の友昭和18年10月号より

彼らに学べと、心理的にはナチスを見限っているのです。

その時代の人も鬼籍に入り、三国同盟さえ忘れてしまった。

戦後は鬼畜米英さえ忘れて「従米民主主義」一筋。

ナチ・リベってリアルに歴史を見れないひと。戦後の米国の戦争に、日本ほど協力した国はないでしょう。

「勝ち組」になるため歴史を否定しても信用がなくなるだけ、負け惜しみはやめよう。
返信する
忘れたいんでしょうか三国同盟 (ブログ主)
2019-09-01 21:09:54
ローシャンさん、

スターリングラードに言及したその記事、面白いですね! 婦人の態度として当時として望ましいから取ったんでしょうが、何がなんでもドイツでもないというのが面白いです。

そう、信じられないことに三国同盟を結んで盛り上がってた(多数の国民が支持したか否かは別として)ことが次第次第に忘れられている感じがします。忘れたいんでしょうか?
返信する
Unknown (織田家のQ太郎)
2019-09-01 23:25:39
共和国である米国人には、「君主は滅ぼすべき」という固定観念が心の底にあるんでしょう。あるいは、立憲君主国の君主の無答責を知らない、単なる無知かもしれません。
返信する
ウチの中でしか通用しません (ブログ主)
2019-09-02 15:32:46
国家無答責、君主無答責の話は、王と臣民の関係における話ですので、他国人にはなんら影響を及ぼしません。
返信する
戦時中の東部戦線情報 (И.Симомура)
2019-09-03 00:55:47
ローシャン様の記事興味深く読みました。岩波かなにかの新書版に、陸軍の観戦武官に同行し東部戦線のハンガリア軍受け持ち地区に入ったNHKあるいは朝日の欧州特派員の思い出の書かれたものがありました。頑として口を割らない、十四五歳のロシア少女を処刑しようとしたが、ハンガリア下士官が引き取ったそうだ。銃殺の替わりに、顔を傷つけ放免したのだと。記者が女子供が兵士として戦っていることについて質問をすると、下士官はロシア兵を猛烈に賞賛したそうだ。このような少女でさえ、口を割るよりは死をすすんで選ぶのだと。ただ私は、この話しが帰国後日本国内で記事になったかどうかは知らないのです。多分あったと思います。また、スターリングラード戦ですが、母はドイツ兵が革バンドや軍靴を煮てスープを作った話しを、よくしてくれました。そのとき決まって私はミガギニシをおやつ代わりにしゃぶっていました。”磨き鯡”を生産者はそう呼んでいたものです。”身欠鯡”は大いなる誤りですね。ハラスの先を削ぎ落としたことを言うのであるならば、国語の習慣として”ミッカギニシ”となるはずです。またハラスを削ぐのは、鯡を燻製にするときにつきものの行為でもありません。腐りやすい部分だから削ぎ落とすのです。燻製用の鯡は魚体の大きい脂ののったものが選ばれます。洞爺丸台風の前年に大漁があり、燻製加工場は忙しかった。選ばれた鯡は一晩浜風に曝し、翌日から燻製場に入ります。燻煙が浸み込むと、身肉から脂肪が体表に滲み出てきて、グアニンという色素をもつ鱗がピカピカの光沢を帯びます。”磨きがかかった”のです。身肉の方は、紅色に変わります。食後小便からは強烈な臭いが漂います。スターリングラード戦にかずけて、つまらぬこと書いてしまいました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アジア情勢複雑怪奇」カテゴリの最新記事