20130924 グローバル資本主義を読む マルクスから半沢直樹まで 池田信夫×石井孝明
2013年秋のもの。非常に面白い。話しているのは元NHKプロデューサー池田信夫さん。
前半は、バブル期の不良債権処理の有名事件を取材したお話で、池田さん的には日本の銀行(またはある種の、もしくは多数の会社)は、グローバルでも資本主義でもない、と判断せざるを得ない。
後半は、資本主義が発展して西欧社会が世界の覇者になったという定番のストーリーには実は裏の部分があるという話。マルクスを読むと資本主義と戦争が密接なものとして描かれているし、どこだった(私が記憶してない)には、資本は血と油によって得られたものだとかなんとかある。多分このへんは正しいのだろうという話。なぜなら、実際問題地道な商業活動で300年間にあれだけの富が得られるわけもないんだ、と。
資本主義は資本が大きくなればだいたい勝つ仕組みだけど、問題はその資本をどこで得るか。それは結局収奪、泥棒して資本を蓄積していたのだ、と。
こういう話は従来左翼がそのへんを言い募って、結果としてそれは左翼の定番の話みたいに扱われているけど、そういうことじゃないようだ。今は、そういうことを、ケネス=ポメランツにしても、ニーアル・ファーガソンにしても、いわゆる主流のポジションにいる歴史・経済の専門家が言ってる。
というお話。
私が面白く、しかし不気味に思うのは、こういう話が世界的に定番化していくことの意味は何かということ。
つまり西欧文明というのはその勃興期に少なからぬ略奪を招来し、また債権の仕組みの開発によって他から借金をする、等々の細工をして大きくなっていった、という話は2008年のリーマンショック後に英米ではかなり大きく話された。
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マネーの進化史 |
Niall Ferguson,仙名 紀 | |
早川書房 |
ここ2、3年そういえば沙汰やみになっていたようにも思うが決して消えてないし、むしろ地歩を確立していっている。歴史的に間違っていないのだからそれでいいんだけど。
で、この流れと表裏に何が動くかといえば、それはこんなことじゃないのか。
西欧的(the West)価値観を持つということの意味は、密接に近代資本社会主義社会での成功と結びついて来た。しかし、もしthe Westが過去150年ぐらい宣伝してきたことは実は話の半分だったとしたら、つまり、実際には有無をいわさず戦争を仕掛けて略奪したり殺したり奴隷を使ったりをすることによって爆発的な富の蓄積が達成されたその後のその上澄みの話だけをもって、近代資本主義と普遍性の話をしているのだとしたら、現在の主流な考え方を普遍的価値のあるものとして、地球上のすべての人間に布教することはもう無理だ、という話になるんだろう。
西欧の勃興期の収奪対象だったインドやチャイナ、南アメリカが勃興していく以上、西欧人の主流narrative(物語設定)はますます苦境に陥るんだろう。そして、だからこそ、ファーガソンなんかはもう少し普遍性を持った(しかしやっぱり西欧人にとって有利な)物語設定をして着地させようとしているのだろう、など思う。
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文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因 |
仙名紀 | |
勁草書房 |
で、日本はこのトレンド変換とどう折り合いをつけるのだろう・・・と思うんだけど、もともと「グローバリズムでも資本主義でもない」ので、あんまり深刻な決着はいらないのかもしれない・・・。多分。
ケネス・ポランツ
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グローバル経済の誕生: 貿易が作り変えたこの世界 (単行本) |
福田 邦夫,吉田 敦 | |
筑摩書房 |
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劣化国家 |
Niall Ferguson,櫻井 祐子 | |
東洋経済新報社 |