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アメリカのロシア破壊願望に勝算はあるのか?

2014-07-20 05:24:23 | 欧州情勢複雑怪奇

今日はテレビを見ていないので世間様がどんな感じになっているのかわからなかったのだけど、マレーシア航空機撃墜事件ではロシアが悪い、ロシアに決まってるという主張がなされ続けているんだろうと想像する。だって日本は The Westだし。

gooブログの中の『世相を斬る あいば達也』さんの、
●“見込み捜査”情報合戦 西側はロシア主犯説垂れ流し
http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/5c9c85f1a92111433b6d98ed8750e4ce

というエントリーを面白く読ませていただいた。

日本に住んでいて、ロシアのプーチン大統領やウクライナ親ロ派の強面な人々を擁護することは、中々大変だ。世界中が、911同時多発テロ事件以来の仰々しさで、実行犯人、教唆犯人探しに奔走している。西側世界のマスメディア全体で見れば、7:3くらいの按配でアメリカ発の情報が正しい前提でメディアが動いている。中東やアジア、アフリカ、南米では、ほぼ五分五分の情報が流れているようだ。英国を除く、EU諸国の報道はまちまちで、65:35でアメリカ情報に偏るが、西側全体の潮流よりは抑制が効いている。

私もそんな感じかなぁと思ってみている。西側世界でも、英グループ(カナダ、オーストラリア)が過剰にというか、イギリスなんかはタブロイドを使ってあいかわらず狂った報道をしている部分もあるんだけど、そこを除くと、確かに抑制が効いていると思う。

■ アメリカの外交方針:なんでもいいからロシアを潰せ!

しかし、それだからこそアメリカはそれが許せない! マレーシア航空機で欧州諸国に犠牲者がいる今こそ欧州をアメリカ並の対ロシア制裁に参加させるチャンスだ! というわけです。

もうね、この人たち、特にアメリカの議会にいる人たち、人でなしなんてもんじゃない。

ロイターにあった記事がそれを物語っていた。よくこんな記事書けるなとも思った。犠牲者の人々のことを思いやるなんて気持ちはさらっさらない。

Tougher Russia sanctions would mean tough choices for Obama
By Warren Strobel, Matt Spetalnick and Patricia Zengerle
WASHINGTON Fri Jul 18, 2014 8:55pm EDT

http://www.reuters.com/article/2014/07/19/us-ukraine-crisis-sanctions-idUSKBN0FO01P20140719

  • 米国当局者は、マレーシア航空機の悲劇はロシアが支援する反乱者がやったんだとの疑いを示し、また、ロシアに対する制裁でアメリカに遅れを取っている28か国から成るEUが結束してくることを望んでいる
  • ある政府関係者は、匿名を条件に、ワシントンはEUがロシア向け制裁の新しいリストの作成スケジュールのスピードを上げてくれるのを望んでいる。制裁リストは現在のところ月末までとなっている。
  • オバマが欧州の同盟国にどのぐらいまでプレッシャーをかけるのかは不明だし、欧州側がどう対応してくるのかも不明だ。しかし現職、元職の政府関係者は、木曜日の悲劇に対する欧州側の怒りが28か国の結束の助けとなることを望んでいる
  • 「遊び場にいじめっ子がいたら、立ち向かうしかないだろ。のんびり潜在的な経済リスクなんて計算してる場合じゃない」 インディアナ州選出上院議員Dan Coats

等々。この記事は多分正直なよく取材された記事なんだと思う。しかしだからこそ恐ろしい。

結局、アメリカはこの悲劇をネタに欧州が反ロシアになってくれることを心待ちにしているわけです。

これを、アメリカが悲劇をうまく使っていると読むべきか、それとも、それが目的で仕掛けたなと読むべきか、もう後者に思いっきり重心がかかっている私。だってマレーシアの事故を悔やんでる人が見当たらないんだもの(口ではいうよ)。

しかも、アメリカが望んでいるレベルの制裁って、要するに欧州がロシアから天然ガスを買わない、油を買わない、ロシアは売り先を無くして経済が破綻する ってなレベルなんだと思われるわけです。制裁じゃなくて、戦争をしかけてる。

だけどそれをやったら欧州だって大変なことになる。でもそんなことはどうでもいい。中東の天然ガスや石油を売りつければいいぐらいに思ってる。

結局理由なんてどうでもいいし、ウクライナというウクライナ系とロシア系のかなり複雑な民族模様になっている国をどうやったら安定に導くかなんてこれっぽっちも考えてない。

これは状況証拠が物語っている。プーチンとメルケルは何回会談したか、何度ロシア、フランス、ドイツ、稀にオーストリア、イタリアあたりがなんとかしてウクライナの傀儡政権に東部住民に「最後通牒」を突きつけるんじゃなくて対話するよう求めたか。そのたびに、できなかった。それはつまり、上のようなアメリカ議会の議員さんたち(およびその本当の主?)の後押しがあるからでしょう。多分、オバマはそれに比べればその調整に結構苦慮している側ではないかと私は見てる。

■ NATOを締めると何かいいことがあるのか?

アメリカ政府の外交方針がつくづくわからないのは、そこまで悪意をむき出しにして、それで結局何が得られる見込みなんだろうかということ。

例えば、ロシア経済がアメリカ政府関係者というか1%というかの人々が望む通りに破綻したとして、それで一体何が嬉しいの? まず、またぞろユダヤ系のオリガルヒを登場させる、と。でもそれって国策なの?

いえいえ国策ですよ、だってロシアの軍事的脅威が減りますから、とか言うかもしれない。確かに、お金がなくなることでロシア軍の軍事力にかけられる資金が減り、相対的にNATO軍の力は向上する、といいたいところだけど、実際にはこれはおかしくて、通常戦力レベルでは合算すればNATOは昔からずっとロシアの上を行っている。欧州には英仏という核保有国もあるので、バランス的にはロシアは実はずっと追い込まれているとも言える。

これ以上追い込むとどうなるのか。それは、ロシアが核戦略上の優位性を保とうと必死になるし、ロシアの核ドクトリンは昔から、通常兵器レベルの劣勢があれば躊躇なく核攻撃に訴えるというものでしょ? 

だから、追い込めば追い込むだけ、NATO諸国、とりわけロシアに近い国々は安全保障上のリスクをわざわざ抱えようとしているわけですね。ポーランドなんかイスカンデルの標的にしてやると言われたのを忘れたのか。

しかし、これは逆に考えれば、実は本当にロシアを潰したいという欲望が見え隠れするともいえるでしょう。すなわち、核戦略上も封じてしまえばいいだろう、ということ。そこからミサイル防衛施設をあたり中に作ればロシアの核戦略は機能しない、がはは、となる。

ウクライナもまさにそれだと言われている。距離的に非常に近くまでNATOが寄っていく(つまり、アメリカは現在ロシアを侵略中なんです、シンプルにいって)。

で、万が一これに成功したとしましょう。よ~し核戦略上も俺らが上だ、となったアメリカ軍は次に何をするのか? 

まぁまず第一目標は黒海の制覇でしょう。このために既にルーマニアをアメリカのコロニーみたいにしちゃってるし。そしてこの効果として中東にロシアが出てこなくなる、しめしめ、と。

で、次は、モスクワ攻略、サンクトペテルブルグの包囲戦、スターリングラードを今度こそ占領、とかするんでしょうか?

で、結局ロシアをアメリカ人が統治するんでしょうか? 昔ヒットラーという人がいてですね、2年ぐらいは占領してたんだけど、最終的にスターリンおじさん率いるソ連軍に頑張られてしまいました。現在のロシアはソ連ほど頑張りは効かないだろうから、よしここがチャンスだ!・・・とアメリカ人は考えるんだろうか?

軍事力で人の心は変えられないという諦めが必要なのじゃないのか、アメリカ人(というか、一般人じゃなくて政府回りで利益をむさぼるまぁ特殊アメリカ人だけど)。

■ ロシアに拘りすぎて自滅する目さえ出てきてると思う

わりと真面目に思うんだけど、アメリカってロシアに拘りすぎて自分の価値を毀損して、仮にロシアを潰すことに成功することがあったとしても、その目が出て来るまでに、まわり中が面従腹背に面従腹背を重ねて、目立つと怖いからみんなして協力しあいながら雌伏に雌伏を重ねて、もう一歩だと思った時には、みんなしてアメリカを裏切ってたというシナリオさえありそうな気がしてきた。

なぜか? 一つは、拘りの過程で明らかに反経済的になっていること。もう一つは、拘りの過程で、反道徳、反民主的になっていること。しかも、暴力を影で奨励していて、それをメディアを使って別のストーリーに仕上げるという筋がみえみえになってるが反論すると立場を失うのでみんなして追従してる。これを抑圧的と言わずして何という(笑)。

反経済的で反道徳的で反民主的で、影の暴力団みたいな集団に誰が魅力を感じろというのよ、という話。危険すぎて近寄れない。

2003年のイラクがらみでみんなして大興奮した後、2006年にミアシャイマー、ウォルトといった立派な教授たちが、「イスラエルロビー」という語を多用してアメリカ政府がおかしくなっていることを訴えたあたりが思えば最後だったのかもしれない。まだ、自分たちでなんとかしなければと思う人が目のつくところにいた。今はもう知的な人は嘆く以外にはできないのがアメリカ。

ロシアを潰すより、ロシアなんか目にも入らないぐらいに良い国、優れた国、誰もが羨む国にしてやるとなぜ思わない、アメリカ! (これが冷戦時代だったわけですね、一応スローガン的には)

米国民の議会に対する信頼感はわずか7%


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