いやしかし、イタリア惨いっすね、としか言いようがないが、まぁもうユーロ&EUを守るためなら住民は敵なんだなというのはギリシャでよーくわかったので今回のは特別驚く話でもないといえばそうなんだが、しかしイタリア人が諦める理由もないだろう。
成り行きとしてはこんな感じか。イタリアの総選挙で一党で過半数を制したものはおらず、2つが連立して内閣を作ろうということになった。この二つがリーガと5つ星。両方とも反ユーロ or EUなのだがそれを抑え気味にしつつ勝った。しかし両方は左右両極みたいなところもあるわけでそれが故に組閣に2カ月ぐらいかかった。
そこで内閣ができたので終わりとはならず、大統領に承認してもらわないとならない。すると大統領が、経済担当大臣が不穏当だからダメとか言い出し、連立内閣は組閣を断念し、続いて大統領が元IMFの人を指名して臨時の内閣を作って、とか言う。
しかしこれができたところで、議会はついこの間勝ったばかりの2つの党が過半数を制しているので、この臨時内閣が議会で承認される見込みは限りなく低い。したがって、また選挙か、ということになってる。
で、それを日経が見出しにするとこうなるんだなぁと感慨深い。これじゃ首相候補が自ら組閣を断念したみたいじゃないの。実際には、目玉だった経済担当大臣をブロックされて困ってこうなってるだけ。
イタリア首相候補が組閣断念 再選挙求める声も
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3103371028052018EAF000/?n_cid=SNSTW001
【ジュネーブ=細川倫太郎】イタリアの次期首相候補に指名されていた法学者のジュセッペ・コンテ氏は27日夜(日本時間28日未明)、マッタレッラ大統領と会談し、組閣を断念すると伝えた。経済相候補としていた欧州連合(EU)懐疑派のサボナ元産業相の入閣に大統領が反対し、折り合わなかった。3カ月近くの政治空白に陥っている伊政局が再び混沌としてきた。
ブルームバーグなんかもっときっちりわかりやすい見出しを付けてますがな。
イタリアのエスタブリッシュメント、ポピュリストに拒否権発動
Italy's Establishment Vetoes the Populists
Bloomberg-18 時間前
Italy's two populist leaders forged a coalition from very different policy platforms. They found a prime minister that both could accept. Then President Sergio Mattarella vetoed their finance minister and their bid for power ...
でも、日経も大事なことは書いている。
経済相候補としていた欧州連合(EU)懐疑派のサボナ元産業相の入閣に大統領が反対し、
ってのが重要。
でも、こんなの民主主主義的にあり得るのかとイタリア人は怒ってるってのも重要なポイント。
つまり、欧州各国で議院内閣制の上に乗ってる大統領(例えばドイツとか、イタリアとか)は、日本の天皇と同じで、通常、中身には口出ししないことがコンセンサスになってる。憲法の手続きにのっとっているかを確認することを主に期待されていて、非常におかしなことがあった場合にそれってどうなのと一拍おけることが機能といえば機能。
だから普通に考えて、いきなりその経済担当大臣は気にいらないからダメだとかいう個別イッシューに意思を表明しない、というポジションだったのだが、表明しちゃう。
多分、2党で組閣しているそのものが気に入らないんだろうが、首相そのものを否定すると民主主義そのものを否定することになっちゃうから、こんな手の込んだことをしたんではないだろうかと噂されている。
ではなぜその経済担当大臣が気にいらないかというと、この人とか北部同盟は単にぐじゃぐじゃ反対してるだけじゃなくて、mini-BOTというミニ国債みたいなのを発行してローカルで通用させようという案を持っていたり、つまりユーロ体制から来る痛みで苦しむイタリアを復活させるための具体案を構成できる人たちだからでしょう。
馬鹿じゃないから否定しないとならない、実効性がある可能性があるから否定しなければならない、といったところ。
しかし、こんなことをやってこれで話が終わるとは到底思えないわけで、これは一体どうするつもりなんだろうかと誰もが不安に思っている。
一方、ひょっとしたらこれは対ロ制裁の延長を狙ったものじゃないかという説を唱える人もいる。たしか6月の終わりにまた制裁を延長するかどうかが決まる。EUの場合全員一致でやってるので、イタリアが反対すればできなくなる。これもまたどこまで引っ張れるのかわからない制裁なわけだけど、場当たりでも続けられれば、ロシアと欧州の協調にくさびを打ったままにできる、と、これはワシントンの差し金ではないのかとアメリカ人ブロガーが書いてた(笑)。
どうなるのか全然わかりませんが、わかるのは、欧州といい日本といいファシストレジームは気持ちが悪いものだということぐらい。
ファシストレジームというとこれを思い出さずにはいられない。
Sex Pistols - God Save The Queen
曲としてはこっちが好き。
Sex Pistols - Anarchy In The UK
シドビシャスといえば、マイワイで、通常「わが道」と訳すところピストルズの場合は邦訳についても背景を汲み取って「俺のやり方」と訳すのが暗黙のルールとなってますが、
大まかに見れば同じことなのに言葉の与える印象はひどく違うなと衝撃を受けたのを覚えています。
案外、世界平和の鍵は通訳に握られているのかもしれません。