シリアのイドリブはまだ武装勢力が立て籠もってるし、北東部とタンフには米軍が居座ってISと仲良くやってる。
そういう状況なので散発的に手ひどいことが起こり、シリア兵はそのたびに死んでいる。
ということからまたぞろイドリブ攻勢の気配があることはある。あってもいいと思うんだな。もうだいぶ武装勢力の力は小さくなってるから、トルコ側はいずれにしても混乱するだろう。いやトルコ国だけでなくて、トルコ系という名でよばれている一体に問題がのしかかるって話になると思う。まぁアルカイダってのの半分ぐらいの実体でしょう。
それはともかく、外交的にはアラブ諸国がシリアに大使館を復活させる動きが見える。
UAEは決定。
Syria welcomes return of Arab embassies in Damascus
http://www.xinhuanet.com/english/2018-11/18/c_137615517.htm
クェートあたりが続くらしい。
まぁ、シリアをないものとして取り扱って来たところがすなわち、シリアを亡くしてみんなで食おうプロジェクトに入っていたところですでの、もう無理と悟ったところから徐々に変化していくんでしょう。
ということは、ホワイトヘルメットを作って宣伝しまくった「リベラル」の人たちの去就はどうなるんですかね。最近おとなしいみたいですが。
■ ブレジンスキーの世界制覇プラン
で、このリベラル原理主義者というかリベラル帝国主義者というかの一群というのは、結局のところどこに繋がるのかというと、直近ではブレジンスキー的な世界制覇プランなんだろうなと思う。
アフガニスタン周辺を不安化させて、ソビエトを引き出して、待ってましたとばかりにムジャヒディーンをしかけてソビエト弱体化を狙い、あわせて、80年代にいろいろ仕込みを入れてソ連解体まで持って行ったと。
ムジャヒディーンあたりだけみると共和党とか米軍が喜んでた印象があるけど、設計自体はむしろデモクラッツ側でしょう。だって、自由の戦士みたいな触れ込みを作るにはメディアとハリウッドがなければできない。
で、この流れのうちに、東ドイツ解体工作をして、ハンガリー・オーストリア国境を開けて人を歩かせて、秩序を解体して、それを「東西ドイツの統合だわ」という印象に持って行くのもメディアが乗らなければできない。ブッシュ父とベイカーあたりが肝のプロジェクトだからといって共和党だと考えるのがまったくの間違い。両方が異なることを言いながら結果的に同じことをしているのが米というもの。
そしてそこでソ連が怒ったり、拒否しなかったのは、もうすでに雰囲気的にできなかったというのもあるが(国境を破る者に腹を立てたら、ソ連の強権が~の大騒ぎになったでしょう)、もう一つ、ゴルバチョフは、このようにして東西ブロックが解体されても、その後大戦争体制が組まれることはない、なぜならNATOを東方へは1インチも拡大しないからだ、などと約束されていたことがとても大きかった。
NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた
このへんは、ジャーナリズムだけでなくアメリカの研究機関がゴルバチョフは約束されていたことを検証してる。
しかし、実際には、ブッシュ父の政権を引き継いだクリントン政権が、NATO拡大プランをぶちあげ、あれよあれよという間にロシア国境までNATOが拡大され、同時並行的にユーゴ戦争でセルビアが痛めつけられ、NATOによるコソボ略奪があり、対ロシアでは、ブッシュ時代に、あの邪悪を絵に描いたようなライスが、東欧域にミサイル防衛施設を立てると言い出す。これはポーランドあたりの反対によってできなかったのだが、オバマ時代になってあっという間に完成する。
ということを並べてみれば、米には民主党だの共和党だのという党にはなんの区別もないということがわかり、そして、これらすべての出来事において西側メディアは巨大な役割を果たしているということがただわかる。
■ 失敗した
で、まぁ現在は、そこからウクライナでのクーデターによってNATOはマジでロシアと戦争する恰好をさらに一歩進めている。
そしてこれと同時並行的だったんだろうというところなのが、南北朝鮮とシリアだったんじゃないのですかね。
さてしかし、シリア問題はこの間、もうどう考えてもアサドを倒して、シリアを更地にする計画は無理っぽくなってきた。少なくとも抵抗が大きくなった。
ウクライナ以来、中国とロシアが非常に接近して、大きいのは軍事協力が本格化してること。両国で戦略的に動いているのが様々なところで見える。
イランは、実はいろいろ半腰だったところから、中露団結のユーラシア側に大きく接近してる。トルコも同様。
アフガニスタンがらみで、タリバンを含めた会合をモスクワで開催してる。インドとロシアの関係が旧に復している部分が見え隠れするのは、イランとの関係も含めたアフガニスタンの問題がとても大きいと思う。インドはアフガニスタンにとっても関心がある国。
というわけで、40年ぐらい頑張ってきたブレジンスキー的世界制覇プランが壊れているというのが現状認識すべきことであろうと思うわけですよ。
■ リベラルという名の大西洋主義者(≒NATO主義者)
で、ここまで何度も書いてきたようなことをわざわざ整理したのは、この40年ぐらいの間の出来事で最も巨大な仕事をしたのは主要メディアだな、ということを思い起こすべきだろうと思うから。
ドイツの東西ドイツ統合というのは、結果からみれば、ドイツの再ナチ化みたいなものだったわけですよ。
混乱を無視して進むドイツ流
だからこそ、現在、ロシアという集団の歴史的な中心の一つであるウクライナを西側が分離させて、略奪して、NATOという軍事同盟に入れるという、ヒトラーもできなかったことが達成されている。
これが可能になったのは、「リベラル」を旨としているらしいメディア集団が、一致して、ドイツを含む西側のやることは素晴らしく、ロシアの側の主張は聞くに値しないという、これこそヒトラーもできなかったことを達成したからに他ならない。
これを冷戦のせいと考えることもできるが、冷戦時代には影ではいろいろあるが、ソ連の主権を堂々と脅かすような面倒で恐ろしいことはしていない、冷戦時代に戻れるなら戻りたい、というのはパット・ブキャナンや、ポール・クレーグ・ロバーツなどが叫んできた通り。
で、このことを最も知らん顔しているのは、要するに各国のリベラルという名が付されたグループなわけですね。日本でもそうでしょう。リベラル勢はシリア問題を、BBCやNYTの言うようにしか解釈しない。また、ロシアによる米大統領選挙介入みたいなヨタ話をまだ信じてる人もいる。
シリアにロシアが軍事介入した時、金子勝は軍事では解決できないと言い、宮台はロシアの行動には公共性がないというシンボリックなことを言った。米やNATOの行動には公共性があるとでもいうのだろうか?
そして、米だと共和党との比較で自分たちは平和的であるようなつもりになり、日本でも安倍より自分たちは平和的であるようなつもりでいるわけだが、このリベラル勢は、ロシアと戦争しようとしている恰好になっていることをまったく気にしていないという意味において、実に好戦的だ。
しかし彼らは自分を好戦的だとは考えない。なぜなら、自分たちの言うことをロシアが膝を屈して聞けば問題は解決だと思っているから。そう、これこそ米の人道介入主義者の姿勢そのもの。2014年にNATOがウクライナでクーデター騒ぎを起こした時に、びっくらこいて出て来た米リアリスト派の大物ミアシャイマー教授の言葉が実に適確だった。
一国スーパーパワーになってからのアメリカの政府、政策決定者たち、つまりワシントンにいる人たちは、自分たちはbenign hegemon(善意の、または良性の、覇権国)だと頭っから信じ切っており、自分たちが他国に言うことは、彼らが従うに決まってると思ってる。世界には問題がある、それは彼らが従わないこと、みたいな調子だと。
世界をアメリカが見る通りに見るのが当然だという幻想が本当に広がっているんですよ、とミアシャイマー氏が真顔で語り思わず笑いを誘う。
ミアシャイマー氏、コーエン氏、ロシア・トゥデイに出演
日本のリベラルもそうでしょう。ロシアにはロシアの主張があり、中国には中国の主張があるというのを受け止められない。シリアや北朝鮮を語る際などさらにそう。
世界をリベラル派が見る通りに見るのが当然だ、と思ってる。
アサドが悪い男か否かよりも、外国が金だして傭兵だしてシリア国を襲っていることの方がはるかに重要なのだが、事の軽重を重視できない。
で、こういう集団はどうしてできたのかというのはまだ完全には理解できないのだが、でも80年代あたりが問題だったんだろうと思う。リベラル派というのは70年代までに存在した反ファシスト要素を多分に持っていた左翼に代置するものとして拵えられた一派なんだろうな、とは思う。
そして、結果において、この人たちは大西洋主義者(≒NATO主義者)になってると思う。
アメのことはアメ人が考えればいいので日本のことを考えると、日本の中でリベラルとか抜かしてる人たちに私が不信感を持ち続けているのは、日本の地位協定や安保の問題点を指摘しつつ、同時に、ドイツは立派にやってるという話をくっつけてくること。
これはNATO歓迎、容認だと思うわけですよ。
ある種の砕氷船理論なのかなとも思うんですよね。安倍周辺はバカだからやたらにとっちらかった議論をして、吹きあがって、みんな困惑してるでしょ? そこに、バカでないNATO主義者が出てきたら、みんな流れちゃうと思うんですわ。これが狙いなんじゃないかと思ってる。
そしてこれって、大敗北の後に、吉田というまぁ金融資本家グループと縁浅からぬ人が首相になった経緯を思い出させるわけです。
どうしたらいいかわからいないけど、最低限、NATOはろくでなしである、という点をはっきりさせることは騙されないための防御陣地となると思う。
もう一つ、自分はリベラルであると言い、プーチンは独裁者だとわざわざ言明する人は、まず間違いなく大西洋主義者グループの中の人だろうな、という考えも役立つと思う。
またロシアと中国が組んで日本に対抗したのもシベリアから。プーチン非難をしてたカショギも立派な大西洋主義者だった。
確かに。あそこからずっと強盗がスタンバイしていると考えることも実際できますね。日本が本格的におかしいのはやっぱりシベリアからだと思うし。
ブレジンスキー、オルブライト、ヌランドとロシア・東欧出身のユダヤ系の人ばかりが目立つけど、このへんが20世紀のイスラム国で、これをハンドルしながら高みで見ている日本を含む西側寡頭勢力が儲ける、みたいな感じですが、なにせ強欲ばっかりなので仲間割れがあるためこれが正常化への突破口となる、と。
なんでこんな人たちに世の中かきまぜられないとなんないんでしょうね。あほらし。
もしかすると、マロン派も立派な太平洋主義者だったりするのかな?
ゴーンがマロン派だというのは、知っていたのだけど、今回の騒ぎでマロン派に関する情報を探してネットを浮遊していたら、なかなか興味深い。我々の世代にとっては、レバノン=内戦なのだけど、この内戦に至る経緯、遡ってフランス植民地化に至る経緯での、マロン派が興味深い。不勉強だった。
又、マロン派が東方典礼カトリックのひとつで、正教会の典礼を使いながら、かつバチカンの管轄下にあることも初めて知った。ウクライナ東方カトリックもそうなんだ。ユニエイトという蔑称が、彼らに対する正教側の視点を示唆しているようだ。ブログ主さんが、以前、バチカンと正教について書かれていたけれど、もう一度読み直したくなった。
それにしても、このマロン派、人数の割に著名人が多い。ブラジルのテメル大統領もそうだし、懐かしいところでは、アメリカ大統領第三の候補、ラルフネーダーもそうだった。驚き。
どうも。ゴーンといえばマロン派、東地中海、東地中海といえばシリア。シリアといえばフランス。そこで最近フランス vs 米(+露)の面白い成り行きもあった。そもそも正教会vsカトリックはずっと下敷き。ゴーンさんってかなり渦中なのかなというところありますね。
マロン派はどっからどう見ても西側コアの中の組織の中の一つって感じですよね。特に中米、南米じゃ政治世界に食い込んでる。
注目したいと思います。
よいお話ありがとうございます。
実際問題、ロシアとウクライナの間の近さ(というよりほぼ同じ人たちなわけですが)をナチ残党で切り裂こうという話がバカすぎてお話にならないと思ってみてます。
モスクワ側のロシアはウクライナを「放蕩息子」と思ってみてるというのは有名な話といっていいかと思いますが、ウクライナは、息子というより、ベルリンやらウィーンやらの口のうまい軽薄男に騙される家付き娘みたいな気もします。
お兄ちゃんのロシアが身請けに奔走するという感じ。あはは。
何十年か先にいけば、ザハルチェンコらのドンバス勢こそ正常だったという話になるでしょう。