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いわゆるひとつの米中共同管理時代

2014-11-13 10:52:37 | アジア情勢複雑怪奇

APECについて国内報道では、なんか安倍さんにやたらに焦点があてられていて(そりゃ自国の首相だから仕方ないけど)、反射的に無礼な行動を働く習さんに対する侮蔑を誘うような仕立てになっていた。

それはそれでこの会議のある種の重要性を象徴した出来事だっただろうと思う。その意味で重要だ。

しかしその重要性はひょっとしたら日本国民にとってはまったく良くない象徴的出来事だったのではなかろうか・・・。少なくともその可能性はあるな、と思えて仕方がないのでちょっと考えながら書いてみる。

アメリカと中国は2日間に渡って長い長い会談をしていて、様々な合意をしたようで、その中には軍事的衝突を避けるための様々な仕組み作りが含まれているっぽい。

U.S., China Reach New Climate, Military Deals
http://online.wsj.com/articles/u-s-china-ready-deals-to-avert-military-confrontations-1415721451



安倍首相が海上ホットラインの設置を呼びかけたというのも、要するにアメリカの方針の一部だろうと思う。

つまり、悪くいえば、今回のAPECとは、日本はアメリカの下部機関かどうかを確かめられた会議だったということじゃないのかなぁと思った。で、現状のアメリカの希望は、中国との間で波風を立てずにコントロールの効いた関係にしましょう、っていうことだと思う。G2プランだね。

安倍ちゃんに注目が集まったとはそういうことなのではないだろうか。米の提案を受け入れるんだろうか日本、みたいな。1922年のワシントン会議あたりのムードを想起してちょっと怖いとも思った。



言い方を変えるなら、それはつまり安倍さん言うところの「戦後レジーム」を了承したということに限りなく近い。

何度も書いている通り、米中共同管理体制になるのが嫌だからこそ、ロシアに手を伸ばして多少なりとも戦略的優位性を持った上で、かつ、自分の立場を主張する(たとえ結論は同じでも押し付けられるのと選ぶのは違う)というのが現状考えられる最善のオプションだったと私は思うし、米リアリスト系が考えていたのもそっちだと思う。

ところが、日本は「G7の一員ですから~」とか「露国撃つべし」とかいう感情の方を選んだ。ロシア当局が何度もウォーニングを出していた。私はそれを、本当にそう来る? 他にやり方ない? 日露両方にとっていい選択じゃないと思うんだけど、どうよ、みたいな感じと思ったが、日本人の多くはそれを、ロシアは日本の金が欲しいのだ、と受け取って笑って流した。

日本は自ら主体的に立ち止まる(米に従う)ことを選択し、その結果として、ロシアと中国の大接近を防止できなかった。

この時点で戦略的思考上日本は詰んでると私は思う。アメリカは米露を共に敵にすることはしたくないんじゃなくて出来ない。

さらに、今回も1970年代と同様に、アメリカの内部には危険な反ロシア派が存在してロシアを潰そうという野望を持っている。するとアメリカはチャイナに接近する。

■ ロシアを見誤っている日本

11月11日に出ていた英フィナンシャルタイムスの記事を日経が翻訳している記事。

[FT]オバマ大統領、中国相手にできることは少ない
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79496410Q4A111C1000000/

この中の1段落に、

オバマ大統領の就任以来、南シナ海で領有権を主張する他国への防衛に対し、中国は、米国の介入を阻止する「接近阻止・領域拒否」の増強に多額の資金を投じている。中国は空や地上からと同様に潜水艦からも核弾頭を発射する能力を備えるなど、米国、ロシアと並んで核兵器の三大保有国の一つになるまであとわずかのところまで来た。超音速弾道ミサイルやその他の最新鋭兵器に何十億ドルも投資している。かつては難攻不落の象徴だった米国の空母の艦隊も、古ぼけてみえてくる。

中国が軍備拡張をしているという話でもあるけど大方の日本人にとって重要なのはこの一文でしょう。
「米国、ロシアと並んで核兵器の三大保有国の一つになるまであとわずかのところまで来た」

これはつまり、現状でも中国より強力なのは米国とロシアだ、という意味であり、その本質は核戦略において同格なのは依然として米露だという示唆なわけ。

しかしフィナンシャルタイムスもアメリカ系メディアも、そして第一にオバマも、ロシアは大したことない、なんでもない国だ、Russia is a declining power(落ち目の国だ)と言って来た。特にこの半年が凄かった。嘘までついてロシアを過小評価してた。

これは一体何のためなのか。これはひょっとしたらまず第一には日本向けだったりするのかなと思ってみたりもする。そもそもこの話がおかしいのはそんなに弱いならNATOがあんなに気張らなくてもいいわけで、ということはこの話のターゲットは欧州ではない。

日本人は、もともとロシアをなじることに喜びを感じるところがあるから、「そうだ、ロシアなんか大したことはない」、落ち目なんだからな、と取って、→ アメリカにしか頼れない、と誘導される。または、問題はもう米中であって、ロシアなんか関係ない、と。この方向はつまり米中共同管理にとって望ましい。

こういう議論を日本人が呑み込みやすい根本の理由は経済規模に対するある種の万能感ではないかと私は思う。これってつまりGDPとか株価。しかし、国家意志のないところにいくらお金があったって国民国家のために使われることはないでしょう(この代表例がアメリカになりつつある)。また、経済統計上のお金の多寡が国力のすべてではない。戦略的位置、思考方法、経験値のある軍事力、外交力、政治力という金額換算ができないアセットはGDPの比べっこには出てこない。また、土地の広さ、水、食料等を含む資源というストックも株価とかGDPの話には出てこない。

■ とはいえ日露間はサイドラインに置かれたままになるだろう

考えてみるに、まぁもう遅いけど、100年スケールでみれば日露というのは最もポテンシャリティの高い組み合わせだったんでしょう。多分ドイツ・ロシアよりも遥かに大きく。

その意味は何かといえば、両国とも、イギリス&ユダヤ系が作ったいわゆる the West なる珍妙な概念を今もって完全には受け入れていないどころか、無自覚に別の社会・道徳・経済モデルで生きてるってところ。しかも両方とも、money on moneyっぽいお金でお金を生むスキームを受け入れられる層と、交易とは物と物の交換だという人間としてみれば古い様式に親和性のある層が器用に共存している。

「俺はこの地で死んでいく」みたいな超定住的な考えが精神レベルというより感情レベルで根を下ろしている人が本当に存在するという点も共通していると思う。

芸術、文化レベルの交流がずっと途切れないのは何もソ連政府の政策というだけの話ではないでしょう。何かとても深いところで理解しあえているという感触がずっとあるんだと思う。(ただし、私はいわゆる左翼っぽい人たちのロシア理解にはあんまり感心してない。私は黒海ファンなので、交易民であるプラクティカルで戦略思考優位なロシアという側面に面白味を感じてる。)

これらすべては、the Westから見ると征伐対象、撲滅すべき道徳・生活・経済習慣ですね(笑)。

とはいえ、まぁそれは理想型としてそうなだけで、現実には両国には150年間の衝突やら誤解の連続があり続け、今も来るべき将来もあり続けることでしょう。そうしてこういう認識という上部構造が物事を決するので、結局のところ、付かず離れず以上にはならないだろうと私は思っている。で、いつまでも、第三者から見るとなんかあの人たち似てるのに仲悪いよね、みたいなことを言われる、と。

だからこれは時々見え隠れするサイドラインの議論止まりだと思う。

ということは、日本の中心課題は、チャイナ&アメリカの狭間で生きていくにはどうしたらいいかを考える、ってことになるんでしょう。これって「日米安保条約がありますから~」とかいって昼寝してられない状況と私は認識しているんだけど、きっとまた、中国はそのうち滅ぶ論が隆盛してそっちで議論が埋め尽くされるような気がする。

 


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