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無責任な「静観」

2014-11-01 13:32:53 | アジア情勢複雑怪奇

どこの国にもいろんな意見を持った人がいる。ウクライナの問題だって、アメリカ人がみんなオバマ政権の対応に賛成しているわけもなし、ドイツ人も、フランス人もそう。そして日本人だってそうだ。

とはいえ、日本からは実のところウクライナ問題に関わる話ではっきりした話というのは出ていないに等しい。西側と足並みを揃えてロシアに制裁を課すという、はっきりいって、ボスが言うから俺もお前もいじめると言っているに等しい情けないことをいけしゃーしゃーと言っているという状況にある。

前から言ってるけど、本気で制裁すべきと思うんだったらそれならそれでいいし、それならそういえばいいんだよ。でもそうじゃないのが日本なんだよね、と。

と、前置きがだらだらだけど、今日みょーーーな記事を読んで、なにか辛い気持ちになっている。

それは、この間から書いているRI(Russian Insider)という、参加者不特定のメディアに出ていた、Eric Klausという金融関係者というか投資家というか、ロシアものではなかなか有名な人が書いた記事。

The Bear and Dragon Chronicles - Western Myopia
http://russia-insider.com/en/china_politics_business_opinion_media_watch/2014/10/29/12-03-25pm/bear_and_dragon_chronicles_-

ロシアとチャイナが組むったって、そんなの上手くいくわけないとあちこちから聞こえて来る。やれ、ロシアとチャイナは性格的に合わないと来たかと思えば、ロシアはチャイナのお金付けになって、いずれ押しつぶされる、その次は、中国人によってロシア極東部が乗っ取られる云々、と。

しかし、ロシアと欧州との関係では、ロシアに資源を握られるとロシアに従属するというくせに、ロシアとチャイナだと、ロシアはチャイナに従属するって、なんだよ、と。

また、確かに、、ロシアとチャイナはキャラクター的にとても違う。しかしそんなことを言うなら、日本とアメリカの方がもっと違うだろう(笑)。問題はそこじゃない、ってなことでいろいろ反論していくんだけど、その土台に使われているのが、日本人の著作者の論文なのね。

For Russia, Asia Is No Substitute for the West
, by Akio Kawato. (Former Japanese diplomat and blogger)   October 16, 2014

河東哲夫さんという元外交官の方がカーネギー・モスクワ・センターのために書いた論文らしい。カーネギー財団はアメリカの財団だし、そうなればどういうものかまぁわかりそうなものではある。

趣旨は、ロシアにとって、アジアは欧州の代わりにならない、だから、頭を冷やして、アジアに理想郷なんか求めないでアメリカの言うことを聞けと、まぁそういう感じ。

で、それが相応に合理的な筋だったらいいんだけど、私は一読してそうは思わなかった。

Facing Western sanctions, some Russian pundits are rushing to find an easy way out through increased cooperation with Asia. But their expectations are built on an illusion.

西側の制裁に直面する中、ロシアの評論家の中には、アジアとの協力を増大させるという簡単な方法を求めているが、そういう期待は、illusion(幻想)に基づいている、と。

で、なぜそうなのかといえば、ロシアの石油採掘のための技術を欧米は止めてるけど、これはチャイナは供給できない、元もルーブルも国際決済通貨じゃない。

米国ドルが国際準備通貨であり続けているのは、この通貨が最も信頼性が高く、普遍的で、ビジネスにとって便利な通貨だからだ、云々。

それぞれ重要ファクターだけど、決してどうしようようもない、決定打ではないのだが彼にとっては決定打であるらしい(前から欧米の記事で思ってるんだけど、石油採掘のための西側先進技術って、ロシア他の国々では絶対に手に入れられないものなのだろうか? ものすごく不思議だとずっと思ってる。資本もそう。)

さらに、ロシアで長らく信じられているのとは異なり、米国はかならずしもいつも他国に条件を押し付けて来るわけではない。多くの国はワシントンとの関係から、政治的、経済的、軍事的な利益を得ている。

等々あって、さらにこんなのもある。

Some Russian pundits lay vain hope on the “increasingly independent” policies of Germany and Japan in relation to the United States. However, this independence has its own limits. Neither country intends to discard its cozy “dependence” on U.S. military might."

ロシアの評論家の中には、米国との関係においてドイツや日本がますます独立的な姿勢を取ることに空しい期待をしている。しかし、この独立性には自ずと限界がある。どちらの国も米国の軍事力に対する居心地の良い(cozy)依存を捨てる意図などない。

まぁ日本はそうだし、ドイツも直接的に捨てようとは思ってないでしょう。

しかし、ちょっと考えればわかるけど、日本が米国の保護国の道を選んだからといって、ロシアにとってもそれが良いわけではない。

そこを何の考慮もなしに、自分たちにとって良いことは他人にも良いことだと思えるその態度がまず傲岸不遜だし、なんなのそのポチ根性と誰しも思うだろう。

私は、ロシア、チャイナに期待をする人たちが結局のところアメリカにもドイツにも、そして日本にもいる現状というのは要するにこの傲慢さに対する批判、または「あきれました」状態のことでもあると思うのよ。自分たちは嘘だらけ、不道徳の限りを尽くしているのにそれでも自分たちは「善良な覇者」だと認識しているアメリカへの批判はアメリカ人であるミアシャイマー氏などからも出ているぐらいだ。つまり、できれば現状を変えたいと思ってる世界が潜在的に存在している。

それが理解できずに、世界は30年前も30年後も変わらずに、アメリカ一極主義のまま行くのだから、ロシアよ、お前はアジアを理想郷にするなどという愚かなことを言うなという日本人がいて、しかも、それをわざわざ英語で書いてみんなに見られているっていうのがなぁ、なんというか、嫌だ。

この方はどんなものを書く人なのかと思ってgoogleしたら、こんな記事が出て来た。

日本は静観を——「意地」と「欲」で迷走するウクライナ情勢
http://www.nippon.com/ja/column/g00206/

東ウクライナでは遂に民間機の撃墜まで起き、298名もの人々が命を失った。そして東ウクライナの住民も、よそ者同士の争いに巻き込まれるのを嫌って、50万人以上がロシア領に避難した。しかしウクライナをめぐる東西対立の一方にいる米国オバマ政権は、この紛争で何を求めているのか、どこまで行くつもりなのか、明確な方針を欠いている。ロシアの方も、好戦派と妥協派がクレムリンで争っていると伝えられる。あえて野球試合に例えると、投手はノーコン、打者はファンが勝手に登場、観客ゼロ、といった乱戦に相当するだろう。

ということらしいです。

で、いつまで「静観」するんですか?

この危機を巡って、地殻変動的にものごとが動く可能性を7月段階でさえお考えにはなっていないらしいので、やっぱり確信的な「アメリカ一極主義者」の方なんでしょうね。

しかし、この「静観」というのは、「2、3年は戦ってみせる」といって戦争を始めた人たちに通じるものがあると思う。

どちらも、この事件によって何がどうなるのかのシミュレーションをまったく示さないまま、その中に日本を置こうとする。その意味で究極の無責任だと私は思う。

こういうのを自主独立に拘り続けて英米欧の資本家との200年戦争をやっているロシア人に読まれるというのは、私としては実に嫌悪すべき事態だと思うわけですよ。大日本帝国は内側から失われたのだな、みたいな。


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2 コメント

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遅くなりました、またまた (Takumi)
2014-11-11 19:51:11
ロシア情勢は難しいですよね、ほんと。
思いつきでいろいろ書いているだけですのでお楽しみいただけたら大変うれしいです。

安倍さんがプーチンとの信頼関係がどうしたこうしたという言い訳をつけるのはなぜなのかというのも疑問だなぁと観察しています。
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Unknown (山路 敬介)
2014-11-02 13:36:17
ロシア情勢についての分析は非常にむずかしいですね。
馬渕ウクライナ元大使の本など読むと、対ロ関係にかなり前のめりですが、どうなんでしょうかね。

貴ブログにおいては、詳しく様々な方向から検討されてて読み応えがありますね。
ロシアは中共とそりが合う合わないは別にして、欲しいのはハードカレンシーである円であって、元による投資は望んでいませんでしょう?

もし安倍さんが外務省的、あるいは戦後の憲法観的平和主義からでなく、かつプーチンと信頼関係が出来ているのだ、という自信があるなら、もう一歩踏み込んでもいい時期に来ているんじゃないでしょうか。

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