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「パクス・シニカ」 はまだまだ全然テーマになってないと思う

2014-11-01 12:46:46 | アジア情勢複雑怪奇

「パクス・シニカ」 中国による新たな国際秩序の創生は本当か - 岡崎研究所
http://blogos.com/article/97649/forum/

9月20-26日号の英エコノミスト誌(p.32)は、‘Pax Sinica’と題する論説を掲げ、上海協力機構の拡大や中国主導の多国間機関の乱立など、やり方は秩序だっていないが、中国はアジアを基点に新たな国際秩序を築き始めている、と報じています。

しかし、中国が推進する多国間機関が乱立し、相互に抵触する可能性にばかり注目すると、肝心な点を見失ってしまう。(中略) つまり中国は、単に既存の国際秩序に挑戦しているだけでなく、徐々に、乱雑に、そして、自分でも最終着地点がどこかわからないまま、新たな国際秩序を創り始めているのだ、と報じています。

だから結局中国中心の秩序とかないから安心しろ、というのが趣旨の記事だろうとは思う。

しかし、そうはいっても、この岡崎研究所さんが言うほどこの中国、ロシアを中心とした内陸の固めは無意味なものでもないだろう。

というのは、特に、

SCOの推進者たちは、SCOは特定の敵を想定しないパートナーシップだと言うが、実際はその矛先はテロ、分離運動、過激主義に向けられてきた。中国は新彊、ロシアはチェチェン、中央アジア諸国はフェルガナ盆地及びアフガン国境地帯を抱え、加盟国はみなイスラム過激派の脅威に直面している。

この、イスラム過激派を使ったテロというのが、実のところ将来を語る上での争点なんじゃないっすかね。

このイスラム過激派を使って中央アジアを荒らしまわる作戦は、昨日今日のものではない。資金はアメリカ、イギリスあたりを本拠地とする大金持ちの皆様とアラブ産油国という、つまるところアングロ-アメリカ支配の裏側のお金だという意味でアングロ-アメリカ覇権の謀略だよね。

これも含めて。アメリカ製コミンテルンを連れ戻せ

で、上海条約機構(SCO)というのは、一義的には、ロシア、中国、イラン、インドあたりの、この謀略、この「荒らし」に迷惑してる側の対策連絡協議会と考えればいいのではなかろうか?

別の言い方をすれば、反ジャコバン同盟みたいな感じなので、その意味では、200年前プロシア、オーストリア、ロシア帝国が作った神聖同盟の拡大アジア版かもしれない。

1814年と1914年から見る神聖同盟の有用性

だから、アメリカがSCOにオブザーバーとして参加させてくれといって断られたというのは、そりゃ敵の大将を入れるわけないじゃん(笑)という認識ではなかろうか?

問題は、欧州の態度じゃないのかな。アメリカは中央アジアや欧州がぐじゃぐじゃになろうが、どの民族が滅びようがそんなことには何の気遣いもない。文化、文明フリーなのがアメリカのいう自由主義と思ってれば間違いはない。

それに対して欧州勢はさすがにイスラム過激派の伸張は地続きで自分たちに関わって来るのでおおいに警戒している。

あと、トルコの去就だろうね。トルコは、ず~っとこのイスラム過激派を使ったジャコバン流左翼運動の汚れ役をやらされている。80年代のアフガニスタンあたりのムジャヒディーンの訓練を引き受けてたのもトルコだろうし、チェチェン紛争に加担した過激派は、トルコ→グルジア→チェチェン、だったんだろう。さらに、今回のシリアもトルコがいわゆる反政府側、その実態は過激派の通過を制限していたらあんなに拡大してないでしょう。

で、こういう国でいいのかトルコ、というのがトルコ国内から出て来る可能性もなくはないなぁと思ってみてる。だんだん生活が落ち着いてくればそうなる。

しかし一方で、シリアを壊して自分が優位に出る、オスマンの東地中海支配再興を夢見ている人たちもいるんだと思うんだ。(オスマンとトルコは別の概念なわけだけど)

ということで、問題は中央アジアでもあり、しかしまたまたコーカサス&バルカン、つまり問題なのはトルコの取り扱いなんじゃないのかと見えなくもない。1870年代あたりの感じに似てるかも。

そういうわけで「パクス・シニカ」 はまだまだ全然アジェンダになってないと思う。英エコノミストがこんなことを書くのは、目くらましというか、お得意のdisinformation(偽情報)じゃないの? おそらく中国は、アメリカがロシアを敵視する時には自分は両方から求められるベストポジションなので、適当にそれを生かしつつ10年後を考えるってな算段なんじゃないですかね。

日本の保守派がつくづく愚かだと思うのは、アメリカが対露敵視をしている時にはチャイナが優位になるんだから、アメリカの対露姿勢を減じる働きをしないと目の前の大国(チャイナ)がさらに優位になるだけなのに、一緒にアメリカに付いて対露敵視こそ文明人みたいなことを本気で言うあたり。

なぜこうなるのかというと、一つの大きな原因は、日本は歴史の長い国家ですといいながら、実のところ国際関係を知った上での国家の歴史は非常に短いからではなかろうか。ぶっちゃけ19世紀後半以前のことを知らなすぎる。だから、自分が国際デビューを果たした当時からの現状把握を「普遍」とまではいわないにせよ、無意識のうちに永続的なもののように思い込んでいるんじゃないのか? アングロサクソンに付いていけば大丈夫という思いなしはまさにこの構図だし、中国と聞くと崩壊するというのもこの思い込みの延長じゃないのだろうか?

でもこれはなかなか治らないと思う。

西部さんあたりを左派だと思いながら、ジャコバン派に阿るという人たちが日本の「保守派」を名乗ってるという状況じゃなぁ・・・と思う。

■ オマケ

ぽつらぽつら考えるに、イギリスがイギリス流の帝国的だが保守的な世界支配秩序の継続に失敗したきっかけは、1878年ベルリン会議だったんじゃないのか。

それに気づくのは第一世界大戦に至る過程。しかしその時既に時遅しだった、と。ソールスベリーはサンステファノ条約という露土戦争の結果をひっくり返したことを後で間違ってたなぁ~おい、みたいに回顧してる。

ここが、資本の論理(経済の論理ではない)を支配・治世の論理で抑えられなかった分岐点みたいな気がしてる。そのうちまとめたい。


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