トランプさんが外交方針についてのスピーチをしていたので見た。
Full Event: Donald Trump Speaks on Foreign Policy in Washington, DC
日本の報道の第一報はこんな感じ。
トランプ氏 日本に負担増求め中ロ関係立て直しを
4月28日 7時37分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160428/k10010501471000.html
アメリカ大統領選挙に向けた共和党の候補者選びでトップを走るトランプ氏が外交政策について演説し、アメリカ軍が駐留する日本などの同盟国には経費の負担の増額を求めていく考えを改めて強調する一方で、ロシアと中国に対しては関係の立て直しが重要だと主張しました。
NHKが言うように確かに日本をはじめとした同盟国との関係は不公平な関係になってるとトランプ氏は文句を言っていたが、それは具体的にいえば、の部分で、このスピーチはもっと戦略的なものが見えた。
全体に通底している主張は、一極支配なんて妄想は止めだ! じゃないかろうかと思いましたね、私は。
なんでそこが重要かというと、
アメリカはアメリカ第一で行く、というのは、トランプ氏が示すこのプラットフォームで読めば、他国は他国であるなわけですね。
同じ「アメリカ第一」をクリントンとかオバマが言うと、アメリカ以外みんな奴隷とでもいうべきアメリカ例外主義になっちゃう。
だから、トランプが採用しているプラットフォームは一極支配型ではないと気付くことがまず重要でしょう。
その表現として、
We’re getting out of the nation-building business
俺らは、国家建設という仕事から手を引く
→レジームチェンジとかやんない、
The nation-state remains the true foundation for happiness and harmony.
民族国家は今後も幸福と調和のための本当の基盤として残る
→主権国家が基本だ
というのが重要。
で、現在の対立はこの隠されたプラットフォームの対立でもあるでしょう。EUというカバーをかけて民族の塊から主権を取り上げ、その上でTTP、TTIPというカバーをかけて対象域を全部グローバルな支配者がコントロールしちゃう、とかいう体制が作られつつあるが、トランプはそれに反対してる、と。
こういう言葉の遣い方などがわかりやすい例かも。
オバマグループは、アメリカをExceptional、例外的な存在であると自己認定してる。掛け替えのない特別な存在だと思ってるわけ。
それに対してトランプは、make America great AGAIN (もう一度アメリカを偉大な国家にする)なのね。Againということは、現状greatじゃないわけです。これは exceptional な存在にはあり得ませんね。その意味でも、トランプはアメリカ例外主義者の系譜じゃない。
ただ、アメリカは強いアメリカ、世界一のアメリカ、何がなんでもアメリカと言わねばならない強迫観念と共に存在しているので、アメリカが他よりもちょっとでも結果的に抜きんでている存在になりたい、勝ちたいという強い願望がある。だから、何よりアメリカを強く、偉大にというアクセントが大きくなる、と。それはまぁいいでしょう、裏から操って俺以外全部奴隷式よりは。
そこから、具体的な項目として、
クリントン、オバマ路線がやったことは、大惨事、大失敗だった
ロシア、中国と上手くやっていくことを考えよう
NATOは時代遅れのミッションをやってる
NAFTAは大失敗
みたいな話がくる。
■ Aチーム、Bチーム
もう一つ、これも重要かなと思ったのは、スピーチの冒頭の現状認識。
アメリカを第一に考えるというのが私の方針の第一になるが、そのアウトラインを示す前に寄って来たったところを振り返ってみよう。
アメリカは1940年代、ドイツのナチと日本のimperialistから世界を救った。これは大きな誇りだ。さらにもう一回アメリカは世界を救った。それは冷戦の終結。「Tear down this wall(この壁を壊せ)」と言ったレーガンは歴史が記憶する大統領だ。アメリカは勝った。しかし、その後アメリカは明確なビジョンを持てなかった。そして次から次から大失敗を繰り返して今がある。
といったことを語って、ここから、だからもう一度アメリカをグレートにするために原則を作る必要があるんだ、と続く。
レーガンは冷戦構造をぶち壊したことによって、実際にはそれがウォルフォウィッツ式の世界一極構造、全部アメリカが支配するというモデルへの道を開いたわけだけど、レーガンはそんなことをしたかったのじゃない、ってのが共和党保守派の年来の主張なので、このへんはアメリカでは一定以上の支持がある。
そしてこれが直ちに意味するところは、他人の努力をかっさらった「ネオコン勢」への痛烈な批判であり、同時に、あの時世界中の多くの一般人が淡いとはいえ持った平和への希望が粉砕されたことへの苦情であり悔恨じゃないっすかね。
というわけで、トランプはナチ由来チーム(私の分類ではBチーム)ではない、という宣言をしたと考えることもできる。まぁ再々そう言っていたわけだけど。
■ それ以外に何かあるのか?
この演説を聞きながら私が考えていたのは、で、もしヒラリーが当選した場合何をしていく気なんだろう、というか、何ができるんだろうということ。
オバマ政権と同様の、ネオコン+介入主義者による世界各国への醜い介入主義をどこまで継続できるものなの? 第三次世界大戦だ~とか言ったってやれることには限界がある(気が違っていない限り、というところが恐ろしいが)。
一極支配は実のところ恐怖支配、言論封殺を通してしか成り立たない。一般大衆にはエンターテイメントにうつつを抜かしてもらって、その陰で報道しないか嘘報道をすることで、現実には小汚い人殺し、恫喝を続けて来たのが実は過去のアメリカ支配の主要なトリックだった。一極支配とはひっきょうメディア一極支配とほぼ同義だったんだよね。前にも書いたけど。
どうやって継続できるんでしょうね。オバマはプロの嘘つきだけど、ヒラリーは動揺するからなぁ。
■ オマケ
前から思ってたことなんだけど、トランプ氏は普通の人間だなってな思いを再度持った。どこがそうなのかというと、アメリカが、イラク、リビア、シリア、イエメン等々で無謀でバカなことをした結果、何百万人という人が苦しんだといったことをトランプ氏は再々語るんだけど、その語り口を見ていると氏はこれが心底嫌なんだなとよくわかる。
でね。この、文字通りの無辜の市民を殺傷したり難民化してあっち行け、こっち行けして彼らの生活基盤を失わせ、伝統を破壊させることを自らの苦悩とは思えない人って何モノなの?と私は思うわけです。
リベラル系のヒューマニズムが完膚なきまでに偽物だったなと私が思うのはこのへん。この恐ろしい構図を作ってる狂った奴らと、ものの言い方が政治的是正表現を踏み破ってるトランプを比べて、トランプを悪者だと考えるられるあんたらって何?とか思うわけ。
または、キレイなカバーをかけて実は恐ろしい構図を支持する奴らと、アメリカ人の99%のためには社会主義的政策の方向を取るべきだと主張する74歳のじいさんとを比較して、後者を悪い者のように考えるられるあんたらって何?でも同じ。
この2人がアメリカのマスメディアという巨大な重石をはねのけてここまで残ったことは、ある意味で人類の希望だなとさえ思う。アメリカの一般人はオバマやヒラリー、そして世界中の主要メディアで職を得ている人たちほどにイカレてはいないという意味だから。
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